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禁書庫司書の受難  作者: 睡魔ASMRer
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ヘルエスにとっての幸せ

 数日後、ブラウン家からガブン家経由でヘルエスはグロリアに呼び出されていた。


 ヘルエスを待ち構えていたのは影の王国(シャドウキングダム)の住人であり所狭しと立っていた。


 中にはガイアもおりヘルエスは何事かと思案する。



 「お久しぶりです。グロリア。この度はご愁傷様でした。ドーン氏のご冥福をお祈りします。」


 ヘルエスは一礼した。


 「ヘルエスも葬儀、お疲れ様です。

 断食追悼まで行ったそうですね。根気ありますね。」


 軽い挨拶を交わし本題に入った。


 「ヘルエスにこちらを差し上げようと思いまして……。」


 手には紫色の魔石が怪しく光っていた。


 そうして差し出された手に手を伸ばすと影でがっちり掴まれ逃げれなくなった。


 「あのこちらドーン氏の魔力光では?というかこれは一体……。」


 敵意がないためヘルエスは攻撃もせずに話を伺う。


 「ヘルエスにとって幸せとはなんでしょうか。それを彼の前でお答え下さい。」


 示されたガイアの影からジークが現れた。


 「やはりジークの差金ですか。」


 ヘルエスはわざわざ素早く伝達できるヴァンパイア本人達ではなく貴族間の連絡でヘルエスを呼び出していたことで察していた。


 「貴様はこうでもしないとはぐらかしかねんからな。

 俺とガイアの前で取り繕いは意味をなさんぞ。

 お前の答えを聞かせてくれ。お前にとって幸せとはなんだ。今は幸せか。」


 ジークはこの答えを聞くために影の王国(シャドウキングダム)に対して多額を支払い交渉したのだ。


 これも全ては拾った側としての最後の責務と感じたからである。


 ブラウン家は軍閥のトップを張り続けたこともあり何より責任感が強かった。


 その本気はヘルエスにも伝わりヘルエスは思考を巡らせた。


 幸せとはなんなのか、今の自身は充足しているのか、何を望むのかヘルエスは答えを探した。


 ヘルエスにとって考えたことすら無かった。


 生きるために獲物を狩り時には盗んだ日々は拾われたことによって終わりを迎えた。


 今度は生き残るために勉強に鍛錬させられ仕事として司書が与えられた。


 自身に関する全てを解決するために奔走した。


 その人生においての幸せの答えを出すのは至難であった。


 3分かかってようやく言葉を発した。


 「そうですね。少なくとも戦争中は幸せに感じたことは一度もなかったです。

 葬儀も達成感こそありましたが幸せとは何か違う気がします。

 ……そうですね、幸せに感じたのはカレンの遺体を取り返して葬儀のために帰宅し食卓を囲んだ時、アスティと買い物した時、ガイアとタッグを組んで禁書を処分して回った時、後は買った本を読む時、くらいでしょうか。

 平穏な日々が欲しいです。自身の力を振るい平穏を維持したいです。その日々を謳歌したい。それが私の幸せです。」


 ヘルエスが捻り出した答えがこれだった。


 「これでいいですか?ジークフリート卿。」


 グロリアが尋ねる。


 ジークフリートはすぐには答えない。


 何か思案した後尋ねてきた。


 「ヘルエスは司書でいたいか?」


 司書はあくまでブラウン家が主導してアガスティア家に喧伝し任命させた。


 それは貴族間の政治的な思惑がありそこに本人の意思がないからこその質問である。


 「それはまぁ他の仕事知りませんし別に不自由しないなら司書が良いですね。せっかく加減の仕方も覚えましたし今なら誰がどれだけ来ようとも殺さずに守り切れる自信あります。」


 ヘルエスが即答したのを聞くとジークは更に思案した。


 たった数秒、だけどそれは彼にとってかなりの熟考であった。


 熟考の後、彼が行き着いた答えはヘルエスへの理解であった。


 「分かったお前が望むならアガスティアや国王にも働きかけよう。

 だが半年待て。外交上の問題解決の時間が欲しい。

 進捗があればガブン家を通して連絡しよう。」


 ヘルエスは一礼する。


 ジークが認めたことによりヘルエスを繋ぎ止めていた影は消え去った。


 「あのドーン氏のこれ形見じゃないんですか?本当に頂いてよろしいものなのでしょうか。」


 拘束を解かれたヘルエスが真っ先に発した言葉は魔石の件である。

 

 紫色に光を発する魔石は目の前で何度も使われたドーンのと同じ光り方をしている、つまりこの魔石はドーンの遺体から取り出した物ということなのだ。


 「えぇ影の王国(シャドウキングダム)の総意です。是非受け取って下さい。」


 周りが一斉に頷いたのを見るとヘルエスはもう受け取らないという選択肢が潰されていた。


 「ではありがたくいただきます。」


 受け取り試しに魔力を流してみる。


 魔力を込める際、少し引っかかる感触があったものの魔石から込めた魔力を戻すのは比較的スムーズであった。


 やがて取り出した魔力を眺める。


 ヘルエスはその魔力で足元を覆い身体を沈めた。


 何度か体験した影を操れる魔力の海、自身の魔力で覆われたそれをヘルエスは感じていた。


 しばらくして魔力操作を用いて外にでる。


 「気がお早いですね。それでいてまるで初めてとは思えません。」


 ヘルエスは疑問を浮かべて尋ねた。


 「失敗したらどうなりますか?」


 グロリアは満面の笑みで答える。


 「地面に埋まり最悪窒息死です。」


 場の空気が一瞬にして冷えた。


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