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禁書庫司書の受難  作者: 睡魔ASMRer
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葬式準備

 約1週間ぶりの家族団欒は殺伐としたヘルエスの心境を溶かすには十分であった。


 ここにグロリアとアルバがいるのも大きいだろう。


 彼女らはヘルエスと1週間もの間、野宿を共にし同じご飯を食べた仲間でもあり、その仲間と家族を交えての食事にはそれだけの意味があった。


 「ヘルエス、これからどうするんだ。」


 領主よりヘルエスの今後について訊かれるとヘルエスは食べる手を止め少し考えた。


 すぐに手が動き出すと同時に答えを出す。


 「ひとまずはジークからの報告待ちですね。司書に戻れるようになったら戻ります。」


 ケットラーズの身柄確保=即司書復帰と言うわけにはいかない。


 故に待ちである。


 「司書……か……お前にとって司書とはなんだ。仕事なんていくらでもあるだろ。

 ましてやお前はとても良く出来た子だ。流石ブラウン家の英才教育を受けただけはある。

 それでいてなぜ司書なのか俺にはわからないんだ。」


 「父上!」


 レオが異議を唱えるもヘルエスはそれを制止して答えた。


 「適正……それ以外ですと……居場所……でしょうか。」


 「居場所?」


 領主が首を傾げるがレオも何言ってんだと訴えるような眼差しをヘルエスに向けるがヘルエスは意に介さずに続けた。


 「ここも私の居場所ではあるのですが常日頃何かと疎外感を感じておりまして……。

 あの狭く暗い空間は疎外感を和らげてくれます。」


 ヘルエスは嘘偽りなく語った。


 領主は黙り込む。ヘルエスの孤独さを感じ取ったからだ。


 それは例え変えるべき場所があるかどうかは関係なかった。


 ヘルエスの心はどこか凍りついていたのだ。


 死生観の欠落と言い換えても間違いではなかった。


 「ヘルエスにはひょっとして生きる目的というものがないのですか?」


 グロリアがヘルエスに尋ねた。


 ヘルエスは少し考えて口を開くも言葉がでてこなかった。


 「図星ですか。なんとなく察しておりました。」


 「少なくとも自分の生まれとの決別は生きる目的だったのかも知れません。


 でも成し遂げた時、カレンが自害した時私の命は私にしかなくて彼女の命も彼女にしかなくて救えなくてそれでふと考えたんです。


 私は何と戦っていたのか……と。

 生きるって何ですか?」


 誰も答えられず空気が冷え出した。


 沈黙を破ったのはアルバだった。


 「美味しい物食べる。ぐっすり寝る。平穏な日々を目指すのは生きること。」


 半分アルバの自論ではあったがヘルエスには想像していたより単純な答えでありどこか固まっていた心が少し解れた。


 アルバによって空気が少し暖まった食事はその後何もなく終わった。


 ヘルエスは夜風にあたりに庭へ足を運んだ。


 手入れされた芝の上を裸足で歩きちくちく感を感じながら空を見上げた。


 ヘルエスはヘルミウスが自身を戦いの駒として育てたことを打ち明けたことを思い出していた。


 ノアの情報、ヘルミウスのこの言い方、1つの推測に行き着くには充分の情報であった。


 それと同時に遺体を抱えた状態で聞いた言葉が頭から離れずにいた。


 ‘’ 好きにしろ。 ,,







 翌日ヘルエスは化粧を施した上で遺体と向き合っていた。


 手にしたナイフで骨と皮だけ残された痩せ細った腹を開くと手慣れた手つきで魔石だけ抜き取った。


 内臓は既に抜き取られており心臓の代わりに魔力導体物質で作られた魔力補給機構と思わしき物に巻きつけられていたので凄く簡単に摘出できたのだ。


 何もないお腹の空間を満たすように綿を詰めていく。


 そして庭の端に生える雑草の中にあった花、アジュガをそっと添えて腹を縫い合わせ閉じた。


 口に鼻に綿を細かく敷いて身体に膨らみが出来たのを確認してから化粧を開始した。


 ヘルエスとお揃いの化粧である。


 似合う似合わないがあるのは理解していても同じ装いで見送りたいとヘルエスは考えていた。


 服もヘルエスのおさがりを着せて準備完了である。


 上級魔法・エアムーブ


 遺体に向けて飛行魔法を発動させて棺桶の中にそっと寝かせた。


 髪は頭部の穴という穴を塞ぐ目的か硬化する魔力導体樹脂が塗られてあり抜け落ちずに残っていた。


 無論飛行魔法の風で束ね綺麗に納棺させた。


 最後に敷き詰めるように花を添えて火葬の準備完了である。

 

 次に火葬後、土葬するための場所へ移動した。


 ガブン近辺の森の中に共同墓地がある。


 その一角を拡張し新たな墓が既に用意されていた。


 石碑には今まさに職人が刻んでいる最中である。


 「ご苦労様です。」


 「あぁヘルエス様、まだ穴も掘れておりません。夕刻までお待ち下さい。」


 ヘルエスがここに来たのは下見的な意味合いもあったが魔法で手伝うためであった。


 最上級魔法・ブレードオブテンペスト


 上級魔法・エアムーブ


 2種の魔法を発動させた。


 風の刃を備えた竜巻が土を抉り、舞う土を一つの身体と見立てた飛行魔法で速やかに運ぶ。


 ものの数秒で遺骨を埋めるには充分な穴が空いた。


 「お手を煩わせて申し訳ございません。穴掘りはとても体力を使うので助かりました。」


 お礼に対して一礼だけしてヘルエスはその場を去った。

 ヘルエスの感情で氷の一面の解説的なものしようかしまいか今日の今日まで迷っておりました。

 死生観大事。

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