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禁書庫司書の受難  作者: 睡魔ASMRer
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葬式前夜

 影の王国(シャドウキングダム)に戻るとグロリアが2人を出迎えた。


 他の者は皆仕事中であり全員顔出せば人口密度がすごい王国内も静かなものである。


 「あぁドーン……やっと会えました。ありがとうございます。ヘルエス様。」


 目に涙を溜めながら礼をいうグロリア。


 アルバは顔を伏せ素顔を隠したまま地面に水滴が落ちる。


 「彼が残した呪い、ここと同じ影を操れないと入れない空間がベスティア平原にもできました。広さはここの倍はあります。皆さんでお使い下さい。」


 「ドーンが……ありがとうございます。」


 グロリアの感謝はヘルエスが軽く流した。


 「見つけたのはアルバです。私は私と同じ生まれの子を弔いたかっただけですので……。

 そろそろ帰ります。遺体には防腐処理と思われる処置が施されてましたが遺体であることには変わりませんしね。早く弔ってきます。」


 足早に立ち去ろうとするヘルエスをグロリアたちは静止した。


 「でしたら私達が運搬、手伝いますよ?

 貴女の家は他国民、自国民双方から荒らされたと噂をお聞きしております。

 弔うなら安全な所で、ゆっくり手間暇かけて弔ってはいかがでしょうか。

 それこそ新たなベスティア平原の影の中とかで……。」


 この提案をヘルエスは受け入れることにした。


 グロリア、ヘルエス、アルバの3人で影の王国(シャドウキングダム)を出発しヘルエスの家へ向かう。


 辿り着くと早速招かねざる客が氷の扉を破ろうと手斧を何度も打ち付けていた。


 「ヘルエス様いかがなさいますか?」


 「私は司書ではないんですよ。様付けしないで大丈夫です。そうですね。まぁ中の荷物取るだけなので足止めくらいで良いのでは?」


 上級魔法・アイスジェイル


 「は!?なんだこれは!?」


 突如として現れた氷の檻が男の身体を覆った。


 困惑する男性の影を伸ばして姿を晒さずに屋内へ入る。


 既に遺体付近に物を整理させていたこともありものの10秒ほどで用意を済ませて家の扉の氷を溶かした。


 「不法な住居侵入は罪に問われますよ?」


 怯える男性に一声かけて魔法を解除する。


 その場を立ち去る背に男は手斧を振りかぶるも風に吹き飛ばされ壁に激突、その衝撃で気絶してしまった。


 「あれくらい影で避けてよかった。」


 アルバが何か訴えてくるがヘルエスにとっては些細な違い、どうでもいいことである。


 「後、化粧品取りに行きたいのでガブン家へ運んで頂けますか?」


 貴重品や金品はガブン家の新たに用意されてあるヘルエスの部屋に移されているため棺桶やお香、遺体を旧ヘルエス宅で手にしたらガブン家へ向かう必要があった。


 ガブン家へ着く頃には日は落ち、宵闇が訪れていた。


 門番の前で影から飛び出すヘルエスに槍を向けるものの現れたのがヘルエスであったため通された。


 家の扉を3回ノックし1分ほど待つと侍女が応対してくれ中に入った。


 久しぶりの我が家である。


 「ただいま戻りました。ヘルエスです。」


 侍女が伝えるより先に声を上げて帰還の挨拶を発した。


 その声に反応して飛び込んで来たのはヘルエスの旦那、レオ・ケラウス・ガブンであった。


 「ヘルエス、無事でよかった。お帰りなさい。」


 目に涙を溜めまるで泣き縋るようにヘルエスの胸元に飛び込んで来た彼をヘルエスは撫でる以外の行動が出てこなかった。


 「はい。私は無事ですので通してもらってよろしいでしょうか?」


 ヘルエスはただ物を取りに来ただけでありそれを伝える。


 2、3分かけてレオを宥め終えるとレオの両親に事の顛末、今日の用事、今後の動きを説明する。


 「やはりすぐに復帰というわけにはいかないんだな。」


 「ここは貴女の家でもあるのよ?休んでいきなさい。」


 「そうだヘルエス、その葬式ここで執り行いなさい。我がガブンがバックアップしよう。墓場もまだ用意できてはいないのだろう?」


 「そうね。それがいいわ。貴女の安全も確保できるもの。そうしなさい。」


 ヘルエスにも止められない速度で話が流れてしまった。


 訂正しようと口を開こうとしたところでヘルエスはこの熱量を直すのは無理だと悟りその提案を受けることにした。


 「分かりました。そうさせていただきます。ただ死化粧や納棺、遺骨の埋没全て私の手で行わせて下さい。」


 返答ついでに大事なところを真っ先に伝えた。


 ここはヘルエスにとって譲れない所であった。


 「そんな事侍女に任せなさい。」


 無論反論されるもヘルエスは頑なにそこだけは譲れなかった。


 理由を説明できる訳でもなく捻り出した回答は使命感、それを伝えた所で当主は折れヘルエスを尊重することにした。


 「すみませんグロリアとアルバを連れております。彼らを客として本日の食事と寝床を用意していただけませんか?」


 顛末説明と遺体処理の話が終わりようやく自由に発言できるようになったため要望を伝えた。


 「客人連れてる場合は事の顛末など後にしてまずは彼らを接待するのが基本だ。遅い!御二方の食事と寝床を用意しろ!」


 当主に指摘されヘルエスはグロリアとアルバ両名に謝罪を行うと影から2人が飛び出してきた。


 「我々もこの後用事がございます。家に帰りますので寝床は不要です。食事だけいただきます。」


 ガブン当主は難色を示したためヘルエスが2人に無理を承知で送って貰ったことにして2人は解放されることになった。


 ヘルエスは後に無き事柄にて怒られることとなった。

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