事後処理
「女性のゾンビ兵は私が、男性のゾンビ兵はアルバで良いですよね?」
ヘルエスは優先的にそう告げた。
「構わん。俺らが用があるのはこいつだけだ。」
放心状態のケットラーズを抱えながらジークは答えた。
「ねぇ。ヘルエス。同程度の魔法ぶつけたらあれって消えるんだよね?」
ノアが呪いの後処理に加担してくれており質問してくる。
「私はそうやって消してきました。
今回火なのでそれ以外の魔法が良いとは思います。
実際どうかは試したことないので知りませんけど。」
ヘルエスはカレンの遺体を抱えながらそう答える。
「どうも。ところでそれどうするつもり?」
「家に一旦運びます。こんな暑いところに放置したら腐り早そうですしね。
ジーク一旦帰ります。すぐ戻ります。」
実際なぜ今の今まで腐らずに残っており遺体全体がどうなってるかはヘルエスには理解し難かった。
それでもヘルエスの感覚的にここに放置はしたくなく一刻も早く家にあげてあげたい一心である。
上級魔法・エアムーブ
ヘルエスはその場を後にした。
「ノア、お前から見てヘルエスはどうだ?」
飛んでいくヘルエスを眺めながらジークは尋ねた。
「合理主義ジークフリート卿にしては抽象的ですね。実力?それとも人柄?」
「全体的にだ。」
「強さは言うまでもないとして……なんと言うかアンバランスですよね。
芯がズレてるとまでは言いませんけど生まれに固執しどこを目指してるのかすら計り知れません。」
ジークは思い当たる節があるようで思い悩んだ。
「やはりか。彼女の幸せとはなんだと思う?」
続け様に質問する。
「え、何々?アスティナ嬢という完璧婦人持ちながら浮気ですか。貴族の風上にも置けませんね。って冗談冗談ハハハ。
彼女はそもそも幸せに頓着してないのでは?常に何かのために動いている気がしますね。
そんなに彼女の幸せ願いますか?」
「それが彼女を拾った我が一家の責務だ。
というか生まれを明かして焚き付けたのは貴様だろ。」
「お固いねぇ。まぁそこはさ俺も生まれ特殊な訳で共感というかさ彼女に知る権利あると思っただけさ。」
「はぁ。父上は貴様の片親、現国王のせいで振り回されっぱなしだったんだ。」
私怨混じりの語り合いの中後処理は進んで行った。
40分後、ヘルエスが戻ってくる頃には後処理はほとんど終わっていた。
「ただいま戻りました。呪い化してるところもう無い感じですか?」
ジークとノアはヘルエス待ちのため残っていただけで後は影問題である。
「お帰り〜。」
「ヘルエス、お前の家は安全じゃ無いだろ。後でヘルミウスの別邸へ運び直しておけ。」
「王都全体を霧で包んで誤魔化したんで大丈夫です。久々の家は扉や戸棚まで壊されてましたが氷魔法で扉作り直しましたし物理衝撃でどうこうできる代物じゃないので大丈夫ですよ。」
ヘルエスは自信あり気にそう答えた。
「相変わらず出鱈目だねぇやってることの規模が……。」
ノアは半分呆れていた。
「ヘルエス、ちょっと借りて良い?」
不意にアルバが現れ返答待たずにヘルエスを影の中へ沈めた。
ものの2秒後、再度地上に上がるとノアやジークの居ない平原へと降り立った。
ヘルエスは困惑する。
いくら影移動が早くてもそれは魔力操作程度の速度、2秒で数キロは無理なのだ。
ましてや周りに影が少ない平原では加速はほぼ不可能である。
2秒で進めても100メートル程度が限界だろう。
当然その距離だとジークとノアは目視可能である。
困惑していたヘルエスは空を見上げるとその答えがわかった。
「これ……影の王国と同じ呪い……。」
「本ってこれ?どっち?」
手渡された本は2冊、内容を確認してヘルエスは理解した。
「こっちの赤い方ですね。もう一つも禁書の写しというかメモ的なものなので私が貰い受けます。
お兄さんは回収できましたか?」
アルバはなにも言わずに頷いた。
「ここは内緒にしときましょう。どのみち影の王国手狭でしょうし。」
アルバはそれが言いたかったと言わんばかりに3回頷いた。
再びヘルエスは影に沈み元いた平原へ戻される。
「ジーク、こちらゾンビ兵関連の禁書です。
この後アルバを家まで送ってきます。ここだと影移動も困難でしょうから。」
ヘルエスはそれだけ告げてアルバを背負った。
急におんぶされたことで動揺するアルバだがヘルエスを信じその場をすぐ離れることができた。




