vs ケットラーズ 1
一瞬の静寂はヘルエスによって破られた。
上級魔法・ガイルスコルグ・3連
軽く品定めと言わんばかりの小突きは炎の障壁によって防がれた。
「あぁもうテメェを殺さねぇと何もかも上手くいかねぇのかよ!」
ぶつくさと愚痴を叫びながら胸元から一つ鉄板を取り出した。
咄嗟にそれが何なのか理解したヘルエスは魔法を発動させる。
初級魔法・烈風波
ピンポイントで発動したものの弾き飛ばすには至らずその鉄板は炎を纏い消失した。
ヘルエスも諦めて自分の持ってるやつを風任せに砕いた。
指輪の割れ口から魔力が溢れそれと共に自壊していった。
これにてヘルエスが移動時に消費していた魔力より少し多い魔力が戻ってきた。
対するケットラーズは魔力の保有量が限界を超えたせいか魔力光を身体から発する事態になっていた。
「死ねぇ!ヘルエス!」
最上級魔法・インフェルノ・五重発動
中級魔法・火焔地雷・十重発動
ケットラーズは容赦なく放つ魔法の裏でその後の戦闘をも見据えた魔法を同時に放った。
初級魔法・烈風波・五連発動
ヘルエスにとって放たれた魔法を迎え撃つことは容易い。
だが相手がどれだけ魔力の回復手段を持っているか分からない以上火力勝負しても痛み分けで魔力切れた方が負けるだけである。
それにヘルエスにしかない有利というのもあって……。
「アルバ、魔法で姿隠すので影で私をあいつの元へ接近させて下さい。
その後は適当に影で足奪って嫌がらせだけで大丈夫です。
作戦変更する場合は名前呼ぶので応じて貰えればそれで構いません。」
端的に指示を出した。
「分かった……ねぇ影で兄さんだけ引き込んで良い?」
アルバやグロリアの目的は家族の遺体の奪還である。
だがヘルエスはそれの危険性を察知していた。
「まだダメです。その時来るまでそれはしないで下さい。彼に遺体操作されてる以上貴女が危険で貴女を失うと逃げられます。」
「……分かった。」
ヘルエスはアルバを説得した後、魔法を放った。
上級魔法・ハイドミストフィールド・五重発動
見える範囲の平原全体が霧に包まれた。
インフェルノが残っている所は魔法の魔力が消し飛ばされているものの炎そのものが姿を隠す。
霧に紛れヘルエスが姿を眩ませ移動する。
影が放つ魔力光は霧全体の魔力光に紛れてケットラーズは反応に遅れた。
「せい!」
威勢のいい声と共に振られた剣を紙一重で交わすケットラーズ。
「や!はっ!」
崩した態勢を畳み掛けるとそれを転がり回避する。
だがそれはヘルエスの想定通りであった。
初級魔法・烈風波・二連発動
転がったケットラーズを烈風波で浮かしそこに向かって足元烈風波で飛び出し切りつけに向かった。
反射で護身用短刀を抜き出し防ぐケットラーズ、そのまま地面へ叩きつけられたまま炎を纏い低空飛行で距離を取った。
ヘルエスはまた霧に姿を紛れ込ませる。
そしてアルバが影で今度は少し離れた位置移動させた。
初級魔法・烈風波三十連発動
弾き飛ばす風渦巻く乱気流、それはケットラーズの身体の自由を奪うことに成功した。
だがその自由を奪った状態でさえヘルエスは切りつけることは叶わなかった。
また防がれたのだ。
ケットラーズは鍛え抜かれた元エージェント、剣を習い一年とちょっとの剣ではそう簡単に傷つけられないのだ。
ヘルエスは作戦の変更を余儀なくされていた。
このまま例えアルバが足を奪っても切り伏せられなさそうそう感じたヘルエスは魔法で攻め立てることにした。
最上級魔法・ブレードオブテンペスト
初級魔法・烈風波・三十連発動
風で切れる竜巻へ運ぶ技である。
だが風で運ぶのに2回目はなかった。
放たれた魔法がどこで発動するか、それは発動前の魔力光で分かる。
ケットラーズは魔法の適正が高いわけではないが見える側、発動位置を初見で把握したためこれ以上は混戦で不意をつかない限り成立しないのである。
ヘルエスは烈風波で接近戦を試みた。
ケットラーズは護身用ではなく直剣を取り出して応戦する。
「剣なら勝てるとでも!?あ?」
ケットラーズは声を荒げた。
ヘルエスの狙いは別である。
接近しながらの魔法戦、3度目の鍔迫り合いのタイミングでヘルエスが仕掛けた。
上級魔法・ガイルスコルグ・五連発動
背後、左右、逃げ道を防ぐように魔法を放つ。
接近したことによるヘルエスの魔力の流れで気づいたケットラーズは咄嗟に影に潜ろうとするもののそれをアルバが阻止、逃げ道を失ったケットラーズは差し違え覚悟で魔法を放った。
最上級魔法・インフェルノ
3人全員を包む範囲である。
初級魔法・烈風波・三連発動
魔法が発動しきる前にヘルエスは全力で範囲から距離を取った。
どうやらアルバも突然眼前を覆い尽くす魔力光にビビってしまい影から手を離し退避してしまう。
結果として誰にも当たらない炎はその場を死地へと変えた。
「すみません放した。」
「構いませんよ。安全第一でいきましょう。それに今のは追い詰めて打てる手がなかった証拠です。」
強力な魔法の影響を受けてか次第に霧が晴れていく。
ヘルエス達の環境的優位は消え去った。
それでもヘルエスは足を止めずに前に出る。
初級魔法・烈風波・三十連発動
ヘルエスはもう烈風波で相手を崩すのには期待していない。
だが烈風波で飛び回るヘルエスでなら崩せるのでは……そして先程やられた方法をやり返せば……その思考で飛び込んだ。
「は!?ちょ!このぉ!」
上下左右飛び回り何度も背後を取る動きにケットラーズは怒りをみせる。
結果として剣は止められ鍔迫り合いへ発展する。
最上級魔法・ブレードオブテンペスト
初級魔法・烈風波
上から斬り落としていたヘルエスは体重を下へ下へと乗せたままその場に魔法を発動。
切れる竜巻がヘルエス達を包む直前でヘルエスは烈風波により離脱してみせた。
バキン!
「ぐあぁぁ……。」
甲高い音が鳴り響いた後呻き声が漏れ出した。
片腕は肘からなくなっており平原に血まみれ傷まみれの腕が落ちてくる。
「まず一本……。」
ヘルエスの声は酷く冷め切っていた。
注釈、諸事情によりヘルエスは手加減しております。




