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禁書庫司書の受難  作者: 睡魔ASMRer
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影の王国

 深い霧が立ち込める中ヘルエスはヘルミウスの元へ訪れていた。


 「教官、呪いの発生地点と発生時刻の総まとめ、貰ってよろしいですか?」


 「お前が消し去った所もか?」


 「えぇ全てです。」


 「わかった。少し待ってろ。というかここに来たのを覚られてないだろうな?」


 睨みを効かせるヘルミウス、ヘルエスは顔色何一つ変えることなく答えた。


 「そんなヘマするわけないじゃないですか。魔法で王都全域包んで隠蔽してここに来ましたよ。」


 「無茶苦茶しやがる。」


 「明日王都を出ます。使えるものはなんでも使わないとですから。」


 「そういう話ではないがまぁ良い。なら尚更身体休めておけ。一部屋貸し出すから。」


 「ありがたく使わせていただきます。」


 ヘルエスが執務室を出ると既に使用人が待機しており案内してくれた。


 相変わらずの用意周到さ、まるで未来予知していたかのような連携具合である。


 部屋に入り椅子に腰掛けヘルエスは自身の記憶の範囲でのケットラーズの行動順から推察を開始した。


 かれこれ小1時間推察をしているとヘルミウスが本のような書類の束を持って部屋へやってきた。


 「なんですかその束……。」


 「纏められた調査書類の束そのものだ。

 少し添削させて要項を絞ってある。」


 「そんなに証拠あって突き止められて居ないんですね。」


 「それだけ影が厄介ということだ。」


 ヘルエスは争うことを止めて書類の束を受け取った。


 「今日ここで泊まっても?」


 「ならぬ。というか今すぐ出ていけ。今回の霧現象を受けて貴族が数人面会を申し込んできた。今別室で応対してるからそのうちに出ていけ。中庭から魔法使うことを許す。」


 どうやら猶予はあまりない模様である。


 「それじゃあ行ってきます。」


 「生きて帰れよ。」


 ヘルエスは言葉を返さずに部屋を出た。







 翌日、ヘルエスはいつもの森の中にある岩場で待ち合わせしてグロリアとアルバの2人と合流していた。


 「ヘルエス様、よろしくお願いしますね。」


 「……よろしく……します。」


 どうやらアルバは少し引っ込み思案らしい。


 「グロリアさん、私はもう司書じゃないので様つけないで貰って良いですか?」


 「では私もさんは付けなくて構いませんわ。」


 「わかりましたグロリア。えーアルバでしたよね?よろしくお願いします。前回は間違えて殺しかけて申し訳ないです。」


 ヘルエスとアルバは出会うのはゾンビ兵から王族を守る護衛任務中でありその時に侵入者と勘違いをし殺しかけたことを謝った。


 「よろしくお願いします。」


 「ではヘルエス、我が家へご案内致します。」


 「はぁ……わかりましたがなぜですか?」


 「ヘルエスには戦闘、そして最初の移動をお任せする形になります。なので我が家でもてなしを施させてください。」


 ヘルエスは今すぐ殺しにいくつもりで気持ちを統一させていたため拍子抜けた。


 ガイア一家の自宅は王都の外れにあった。


 王都の北側には山が聳えており麓の森の中にひっそり佇んでいた。


 それはさながら森の洋館、なぜこんなところに、ポツンと森の中にあるのに誰もその所在を知らない土地であった。


 「私の旦那、既に亡くなってますが彼が残した呪いがこの館周辺を歪めています。

 影を操れないと出入りできないんですよ。

 家族を幾つもの国から護る苦肉の術でした。

 追われ囲まれた私達のため命を賭して守ってくれたんです。」


 「呪いって幅広いですね。怒りだったり逆恨みだったり家族愛だったり……。

 その話だけでその方が聡明であることが伝わってきます。」


 「えぇ自慢の旦那です。」


 満面の笑みを浮かべるグロリア、ヘルエスはもてなしを受けることを選択した。


 リビングへ案内されると既に豪勢な料理が並んでおりヘルエスは驚愕した。


 「あのこれは?」


 グロリアは不敵な笑みを浮かべて宣言した。


 「影の王国(シャドウキングダム)へようこそ。」


 大勢のヴァンパイア達が一斉に姿を現して無言の一礼をしてくる。


 ヘルエスは呆気に取られていた。


 その間思考力がフル回転、一つの結論へ辿り着いた。


 「え、あー……ひょっとして世界各地の同族を保護されたんですか?この人数を……。」


 ざっと200人ほどいる人影を見ながらヘルエスは答えを呟いた。


 「えぇ正しくその通りでございます。

 我が旦那、ライズと息子のドーンが世界各地を飛び回りかき集めた者たちです。

 そしてライズの呪いによって保護された皆が私達一家を担ぎ上げてなぜか王国を名乗り出しました。」


 どうやら王国は担ぎ上げた結果であり建国したとかそういう話ではなかった。


 「あーうん凄いですね。」


 ヘルエスの語彙力は消失しており賞賛を述べる以外言葉が浮かんで来なかった。

 

 ヘルエスはその後食事を取り、案内された部屋で先日渡された資料を眺めて思案しだした。


 もてなすとは言われたもののできることはケットラーズ達の思惑を図ることだけでありそれ以外ヘルエスにできることはなかったのだ。


 そして1つただ単純なことに気がついた。


 これが恨みによる犯行なのだとしたら、そして邪魔者(ヘルエス)をどうにかしてから王国を潰そうとしてるのではと……そうすると襲われた街の共通点に気がついた。


 これは王国の孤立だけでなく貿易路道中の街、港街を中心に壊滅しておりそして国際世論はヘルエスへの風向きを悪化させる策なのだとしたら術中にハマっているのだろうと。


 「すると私に勝てる見込みなのかしら?それともこの程度で私が処刑されて死ぬと楽観視してるのかしら?」


 ヘルエスは怒り混じりの声色で独り言をこぼしたのだった。


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