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禁書庫司書の受難  作者: 睡魔ASMRer
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呪い

 茶会から3ヶ月、無事書類も一通り書き終わり行政を通ってヘルエスはヘルエス・ケラ・ガブンと氏名が変わっていた。


 皆からはヘルエス呼びで定着しているのだがそれでも一貴族に組み込まれた形である。


 ただ生活が何か変わったわけではない。


 変わったことがあるとすれば週に一度、港町ガブンへ足を運ぶようになったことくらいだろう。


 体裁というのもあるがガブン家もまたヘルエスの帰るべき場所へとなったのだから。


 通ううちにレオは随分とヘルエスと馴染んでいった。


 港町の住人への周知、言い換えれば見せつけるように仲睦まじそうに2人並んで歩く姿は正しく夫婦の姿であろう。


 そんな戦後の落ち着きが現れ始めた頃、帝国の戦争犯罪者の王国内での裁判が始まった。


 有罪ありき、量刑を決める裁判である。


 行方を眩ませた2人の戦争犯罪者を除いて……。


 大半が死刑として帝国内で処刑された。


 見せしめである。


 残りの僅かな人達は無期懲役が大半で主に戦争被害の復旧作業という名の強制労働を強いられていた。


 それはガブンも例外ではなかった。


 それもまたヘルエスの体裁を伝える一助になるのだがそれによって伝わる速度は遅すぎた……そうあまりにも遅すぎたのだ。


 「ヘルエス、司令書だ。」


 ジークフリートから貴族会議で通った司令書が手渡される。


 「……あれ?結婚の意味は……。」


 ヘルエスには思わず突っ込まずにはいられない内容であった。


 「これは結婚の次策だ……お前が捕らえた者たちは元帝国兵でお前が海路封鎖した際に

沈めた船に乗っていた者達で構成されていた。」


 「あら彼ら運が良かったのですね。」


 「あの時のお前はどこまで容赦かけていたんだ……。」


 「戦争には勝ったんですよ?無粋な憶測はやめて下さい。」


 「まぁいい。そんなバース帝国へ亡命していた彼らは中にはガーベルト出身の者もいてなお前が俺らの仇討ちへ走った街だ。覚えているな?」


 「えぇ私が魔法を止め損なったせいで今も雷が降り注いでいるとお聞きしております。」


 「術者、魔法使いから手放された魔法を世間一般では呪いと呼んでいる。

 中でも死の間際に放つ呪いの威力は計り知れん。

 そういう魔法使い故の恐怖を生みかねない要因を早めに排除しよう、そういう内容だ。」


 「つまり元から行うつもりだった作戦へ司書の雇用認可を3ヶ月もかけて行った、そういうことですね。」


 司書を動かそうとするためには貴族会議、そして文官省からの認可が必要となる。

 

 どうしても手続きに時間が取られてしまう。


 「つまりヘルエスが必要不可欠な任務ということだ。ヘルミウスに作戦指揮を取らせる。」


 こうしてヘルエスの遠征が確定した。


 3日後、ヘルエスはベスティア平原の中、馬車に揺られていた。


 無論、旦那ことレオと一緒である。


 彼はヘルエスのためにジークフリートの権限によって招集されたのだ。


 今回は完全に置物となってもらう手筈である。


 「ヘルエス、どうやら今回の街以外にここ最近呪いで燃え続ける村が増えているって話聞いたことありますか?」


 レオは凍った空気をなんとかしようと頭を捻らせ出した話題がここ最近の呪いの発生であった。


 完全にテンパって余計な口出しである。


 「場所は?」


 簡潔に、ただ声は冷たく聞き返した。


 「バース帝国の辺境だそうです。先月起こったみたいっす。」


 「そう。」


 会話は長くは続かない。


 「あの、お、怒ってる?」


 あまりの冷たさに耐えかねたレオがヘルエスに質問する。


 「ごめんなさい。仕事なの、おまけに私が失敗した後始末。少し苛立ちはあるわ。」


 お互いがフランクに話し合う仲であるはずが明らかに主導権はヘルエスが握っていた。


 翌日、目的の街へ到着した。


 実際はその数キロ手前なのだがそこからでも轟音が鳴り止まず聞こえてくるのだ。


 迂闊に近づこうものならたちどころに雷に撃たれてしまうことだろう。


 「作戦を開始する。魔法陣を描き始めろ!」


 情報交換はここに来るまでの馬車内で済ませてある。


 ここに派遣された魔法使いはヘルエスを除いて3人居る。


 この3人がせかせかと魔法陣を書き記し3人分の魔力全てを注ぎ込み始めた。ヘルエスはその間完全に待機である。


 「そもそも上手くいくんすかね。」


 「出来る出来ないじゃない。やるしかないのよ。私も理論的にこれで消し去れるって説明しきれる訳じゃない。

 そもそも私は呪い発動させられないし。」


 そう、呪いそのものはヘルエスにも無理難題である。


 魔力は制御してないとすぐに霧散して魔法が維持できなくなり解除される。


 そのため初心者魔法使いはまず魔力のコントロール、中でも集束を中心に練習する。


 そうじゃないと形作ることすら出来ないからだ。


 呪いはそもそも矛盾している。


 魔法使いの介在、つまり意図的集束を行わずに魔法を形作らねばならないからだ。


 まさしく矛盾、故にヘルエスは発動できないしそれの対処も知り得ない。


 「どうやるんすか。」


 レオは弱気になり口調が戻っていた。


 「上回る魔法ぶつけて魔法を壊す。」


 魔法同士の衝突、これはどう威力だと拮抗して魔力不足になれば消滅、どちらかが上回っていると一方の魔法が形を維持出来なくなり、つまり壊れてもう片方の魔法が残る。


 これを呪い相手にやろうというのだ。


 「街丸ごと包む雷をも超える魔法!?」


 普通の魔法使いでは束になってもそもそも敵わない。


 だがヘルエスなら、魔の魔女(マーラウィッチ)のヘルエスなら上回る魔法を撃てるのではないか。


 そのためのヘルエス招集であった。


 

尻に敷かれるレオ

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