噂、禍根へ
王国軍現着、するとどうだろう。
何故か縛られたまま魘される人達が門の前に鎮座していたのだ。
「救援要請は……え、何があったんですかこれ……。」
ヘルエスとファミールは事の経緯を話した。
無論、司書であることを明かして……。
「流石司書様……いえ、とても助かりました。こちらで連行して素性を吐かせます。ご協力感謝いたします。」
部隊の隊長がそう感謝を述べた。
ヘルエスは拘束後家に取りに戻った解毒薬を小瓶に移し取り隊長に手渡しした。
「これ解毒薬です。留置所についたら尋問前に投薬して下さい。血中に入ったら効くらしいんで針なんかに塗って刺せば直に良くなると思います。」
「わざわざありがとうございます。ありがたく使わせていただきます。」
どこか畏怖の念が困ったような少し震えた声で隊長は解毒薬を受け取った。
無理もない、ただでさえ市民一般に凄く強くて規格外として認知されてる存在がその規格外さを発揮したのである。
一箇所に対する30人からの襲撃をたった2人で防ぐどころか誰1人殺さず拘束まで済ませるのは異常としか言えなかった。
そしてナイスタイミングでガイアが戻ってきたのである。
「朗報、ガブンに向かう道路で見つけたもう直ガブンに着く。
これからそいつらを尾行し続けながらガブンの領主に言伝いれておく。」
どうやら最低3分の1、下手したら数十分の1の確率を1発で引き当てたらしい。
「あ、じゃあ領主に取り入れる際私の名前出して良いわよ。」
ヘルエスがガイアにそう伝えた。
「何故?」
貴族とのパイプなどそう持てるものではない。
ガイアも禁書庫の司書であることを明かして取り入るつもりであったのだ。
「黙秘、さっさと尾行よろしく。私今日忙しいから。」
説明が面倒になったヘルエスは全てをガイアに押し付けた。
「失礼致します。こちらも部隊を切り分けて同行致します。微力ながら力添えになるかと……。」
隊長が進言してきたのでこれをガイアは受け入れた。
「よろしく。俺先行しますんでガブンに到着しても衛兵に扮して待機してて下さい。俺がゴーサイン出すまで下手に動かないで下さいよ。」
敬語ではあるもののどこか生意気さを感じさせる物言いで隊長に返答した。
そんな高圧的な態度は畏怖してる相手をより一層緊張させた。
「か、かしこまりました!」
返答を聞いてすぐにガイアは先行した。
隊長はメンバーから相応しい人材選定を始め出したのを見届けてヘルエスはお暇させていただくことにした。
「ファミ、私戻っても大丈夫ですか?
用事ありまして……。」
「うんヘルちゃん助かった。ありがとう。今度何かお礼、させてね。」
天真爛漫な笑みを浮かべて答えたのを背で挨拶して飛行魔法を発動させた。
向かうは家である。
お金を取りにきたのもあるがまだ顔を隠したいそんな思惑が彼女にあった。
仮面とローブを取りあらかじめ机の上に用意していたお金を再度金額も確認、一通りの化粧品が入ったポーチも確認、準備を整えてから家を出た。
家を出てから徒歩で20分、目的地のヘルバートの仕立て屋に到着する。
「あらいらっしゃい♡本日の御用はいかが致しましょうか?」
ヘルバートは仮面の下がヘルエスであることに気がついていなかった。
「これ受け取りに来ました。」
請求書を提示、そこで漸く眼前に見える悪名高き司書がヘルエスであることに気がついた。
前回来店時は化粧屋の後で仮面もその際に外したそのまま仕立て屋に来ていたためイコールには結びついて居なかったのだ。
だが今日の格好は貴族街なら知らない人は居ないほど見た目と悪名が浸透していた。
「貴女……貴女が司書の厄災張本人だったのね♡
こんな可愛らしい魔女さんだったなんて♡」
魔女という言葉に少し厄介な顔をするが仮面をつけているため外からは分からない。
「何ですかその悪名……不本意です。こっちは仕事で禁書を処分して回っていただけなんですけど……。」
「それだけ皆んなが貴女の力を認めざるを得ないってことよ♪
誇っていいことよ♡」
ヘルエスは誇る云々を気にしてる訳ではなかった。
戦争で暴れていた魔女=司書の厄災=ヘルエスと結び付けられていくのを危惧していた。
変な名前、況してや個人特定に繋がると厄介でしかないからだ。
「これ、服の代金です。ご確認下さい。」
素知らぬ顔でお金を渡して商品を受け取る。
「一応裾丈肩幅全部合わせてあるけど合わせ直して欲しい場合は連絡してね♡
今回の代金に含まれてるから無料で請け負うわ♡」
「助かります。」
ヘルエスは大きめの紙袋を受け取り店を後にした。
店を出ると日がかなり傾いてきていた。
まだ空は赤みこそ帯びて居ないがそう時間はかからないであろう。
ヘルエスは急いでブラウン家へ向かった。
建物などお構いなしの屋根上直線ルートである。
初級魔法の烈風波を使いこなして次から次へと跳ねていった。
ものの3分で到着、ほんの少しだけ上がった息を深呼吸一回で整えて門を叩いた。
「ヘルエスです。遅くなり申し訳ございません。」
対応にあたったのは女性の侍女であった。
「お待ちしておりました。ヘルエス様。
ジークフリート卿がお待ちになっております。
どうぞ上がって下さいませ。」




