シャルのご実家訪問
「……以上で報告を終わります。」
会議室に重い沈黙が流れる。
それは痛ましい、失態も含んだ過去の記憶を呼び覚ましたからだ。
「やはりかの国との関連性が疑わしいな。ジークフリート卿、続けて紛失本3冊のその後の調査報告を……。」
「はっ!ベスティア帝国との辺境の村が複数、人が消えており確認しに参ったところ魔術行使された事が確認されました。ベスティア帝国の手に渡ったものとして間違いなさそうです。目的はおそらく軍事的利用と思われます。」
さらに空気が重くなる。
「となるとやはり此度の一件は歴史書狙いとみて間違いなさそうですな。」
「罪の擦りつけで国際的に立場を悪くさせてくる可能性もあり得る。的確に処理せねば荒れるぞ。」
「外務省との連携も不可欠だな。」
「軍事費増額を進言せねば。」
「貴族会議を通るとでも?」
会議はバラバラに散らばりだした。
「っつきましては!残っている村に張っておいて回収するのが理想と思われます。王国軍から複数人、司書から2人の少数精鋭で回収に当たりたいと思います。」
纏まりの無い空気感を恫喝1発で沈め話を戻すジークフリート。
「2名ということは同行させたい人は決まっておるのだな?」
質問に対して不敵な笑みで返す。
「ガイアとヘルエスでございます。」
「へきしっ!ぐしゅん……。」
唐突に訪れたくしゃみにヘルエスは赤面して俯いた。
「やだー可愛い。御坊ちゃまはこのような方がお好きなんですか?お好きなんですね?」
「アスティナ様以外初の女性のお客様ですもんね。今お召し物準備して参ります。」
「ええい噂されたんだろ。父さんにこれ渡しといて……。」
あれやこれやの大騒ぎである。
「貴族?だったですか?」
「いや貴族じゃ無いよただの商家、まぁ規模はでかいから間違われるんだけど……。後で物色していいよ何か一つ奢ろう。」
彼が自分を誘った理由をなんとなく察した。
「それでもう1人というのは……。」
「俺だよ。」
背後、存在を寸前まで認知出来なかった故か咄嗟に体を捻ると同時に足が出てしまった。
「げほっ!いきなり蹴るなよ!新人仲間だろうが……。」
黒い傘を手にしたガイアであった。
蹴るなよと言われてムカついたので少し煽る事にする。
「あら、爆弾特攻で顔も出さずに人任せだったガイアじゃないですか。いきなり人の背後取らないで下さい。」
これに関しては彼は何も悪く無い。しかし彼も今回の規模を理解しており思うところはあったようで……。
「そりゃさぁあの場にいても俺が出来ても相手の動き封じる事くらいだけどさぁけどさぁ……。」
悶々としてるガイアの肩をポンとシャルが叩くと彼を擁護し出した。
「ガイアの専門は対複数じゃないしそもそも彼には空間魔法への警戒が必須で俺が頼んだんだ虐めてやるな……。後背後は取らせた君が悪い……。さ、朝飯にしよう。」
こうしてヘルエスの人生2度目のお宅訪問が始まったのである。
彼女にとってそれはとても新鮮だった。食べた事ない料理、飲み物、普通の家庭の温かさ、全てが新鮮でゆえに疑問が浮かぶ。
「なぜシャルは司書に?今日みたいなのは定期的にあるんですよね?安全に裕福な暮らしが約束されててなぜ?」
自分は致し方無く、だけどこの人は違う。高い実力要求されそして危険な司書になる必要性はないはずである。
「あーそれ聞いちゃう?……楽……。」
真顔で間を開けて放った言葉を理解するのに時間をかかった。
「今日みたいなケースはレアだよ俺らはついてない方だ……。基本2、3人で突入してくる。神経毒仕込んだ針刺せば仕事は完遂できる。それ以外は閲覧者対応、座ってるだけこんな楽な仕事他にないね。」
理解に苦しむ2人を見兼ねて解説してくれた。
「ガイアは?」
その流れで聞く。
「なんでそんなに気にするんだよ……。俺は半強制。家というか一族が少し特殊でね。囲うために買われてるのさ国にね……。ヘルエスのも聞かせてくれるんだろ?」
どうやらヘルエスと同じ訳ありなのを聞いて話始めた。
「家庭、初めてで……。教官に拾われて戦闘のために育成されたんですよねその実戦配備先としてまず司書になりました。」
一気に場の空気が重くなる。
「はいはい重いの禁止〜。さ、倉庫に案内するよ2人に先輩が奢ってやろう。」
「まじっすか!?いよっしゃ!」
「お言葉に甘えさせていただきます。」
口挟めば空気が入れ替わりシャルはとても口が達者だなとヘルエスは感じさせられた。
家は店から離れており歩きながらどのような物を取り扱っているのかを聞く。
メインは古物商や道具関連の商いらしく古物であれば武器もあるとのこと……。
逆に食品関係はあまり取り扱っておらず乾物や珍しい香辛料など保存が効く物しかないらしい。
そうこうしてると家の倍はあろうかというほどの巨大な建物が姿を現した。
「うおぉでけぇ。」
「古物でかき集めるからね。あ、父さん俺がこの子たちに買うからよろしく。」
素直そう。やり取りの裏でヘルエスはガイアの思考分析を行っていた。
中に入ると2階建てになっており眼前に広がる光景は圧巻の一言である。
「2階は食品だから基本1階がおすすめ。ヘルエス、魔道具を紹介しよう。」
やはり魔道具、なんとなく察していたヘルエスは有無も言わずに後を付いて行った。
「手に持って魔力通す。そしたら選べるらしい。俺は魔法使えないし知らん。」
立てかけられた杖、箱に仕まわれた宝珠、ブレスレット、本、これらが魔道具がずらっと並ぶ。
実際に杖1本手にとって魔力を通して見ると言わんとしてることがわかった。魔力の通り方に抵抗感があったためである。おそらく合ってないのだろう。
それと同時に魔道具の便利さも理解した。
魔法の組み立てはパズルみたいなものだ。詠唱がまさしくそう。一つ一つ起こしたい事象にまつわる魔言を魔力で組み立て発動させる。杖を手にして魔力流した途端既に組み立っていたのだ。
おそらく道具に魔力流せばそれだけで組み立てやすくなる。詠唱なんて適当にやってれば発動もできるくらいには……。
魔導書と呼ばれる本に魔力流した際は開いてるページの魔法が勝手に発動して焦ったくらいである。
これは持ってないとおかしいって思われても仕方ない。
そして1つの杖が選ばれたのである。




