終戦
ヘルエスは指定された時刻になったため王宮にきていた。
「こちら指令書です。」
門番に指令書を提示、通して貰った。
門を潜り王宮を眺める。
贅の凝らした彫刻が永遠と続く外壁、街には一切見られない機能よりもデザイン重視の屋根、どれも新鮮な感覚を味わえていた。
「ヘルエス様、こちらへお願いします。」
使用人に通された所は王宮にある地下室への階段だった。
下へ降りていくとどこか既視感のある無機質な質感の一本道へと繋がっていた。
「ここは非常時の避難場所兼物置小屋となっている場所でございます。ヘルエス様にはここで防衛をよろしくお願いします。
禁書庫周辺と違い壁には強化魔法は貼られておらず対空間魔法の魔法陣も今敷設最中でございます。
厳しい条件かと思いますがよろしくお願いします。」
説明を終えると上から1人の若い女性が降りてきた。
咄嗟に構えると使用人が制して教えてくれた。
「彼女は味方です。味方証明の観点では判別が難しいかと思いますがいきなり殺すということはやめていただけると助かります。」
そこでヘルエスは防衛に対する意識の甘さを感じてしまう。
「すみません善処します。」
そう返答こそするもののヘルエスは少し苛立ちを覚えずにはいられなかった。
すると背後から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「ヘルエス。やっぱ君も呼ばれてるのか……。」
ガイアであった。
「やっぱって一応来るだろうって予測してたんですね。貴方はやはり影対策ですか?」
仕事モードで敬語で軽く言葉を交わすヘルエスにガイアは答えた。
「そう、家族総出でね。今通ってきたのが妹、ってうぉい!」
ヘルエスは妹という言葉を聞いた瞬間にガイアの胸ぐらを掴み聞いてないんだけどという視線を送っていた。
「妹、アルバ、不必要かと思って行ってなかった。年は多分ヘルエスより下、今年16、そのごめんなさい。」
ヘルエスはガイアを降ろした。
「ごめん、私今とても気が立っていて彼女殺しかけたの。知っていたらとも思ったけど会う機会なかったしどのみち殺しかけてるわ。」
ヘルエスは1人の友として謝罪した。
「いやうん多分アルバなら避けれてるよ彼女とても魔力練って操作するのが速いんだ。」
ヘルエスはここでガイアは家族思いのただのバカではないかと思考が回っていた。
回る思考の中でガイアが司書としての仕事につけていないことにも気がついていた。
「そう。なら良かった。後で私からも謝っておくわ。後、禁書庫にケントとあんたの兄死体きてたわよ。姿は見せなかったけど本盗もうと躍起になって影伸ばしてた。ガイア一家頼れないとなると本盗まれても致し方ないわね。」
禁書なんかより王族護衛の方が最優先である。
それを報告し終えるとガイアは一つの推察を話し始めた。
「俺らの力って魔力が必要なんだけど死体に魔力を生み出す力はない。だから多分なんだけどケントの魔力を兄に流して俺らと同じ力を引き出してるんじゃないかな?そして今のこの惨劇を生み出したのも彼1人の仕業とすると多分今魔力切れでどこかに潜んでるよ。」
「それって兄ゾンビは実質魔道具と同じ扱いってこと?」
ヘルエスは少し不謹慎と理解しながらももっとも近い例え話で返した。
「そうなるね。母と兄のためにも遺体さっさと回収してあげたいんだけどね。」
どこか寂しげに話すガイア、ヘルエスはらしくないと一蹴し背中を叩いた。
「ってて。ごめん湿らしくしちゃって。じゃ俺休んでくるわ。」
手を上げ階段を登っていくガイアを何も言わずに眺めていた。
結果的に何事もなく街中のゾンビ掃討だけが課題として山積していた。
総数300万、幾つもの村と主要都市の住人そのすべてが動員されたようである。
王都が麻痺しつつある中、後日、1つの条約が締結、終戦の時がやってきたのである。
王帝和平条約、王帝請求権協定、王帝貿易協定の3つが締結された。
調停者はベスティア帝国皇帝、ロズワルド・ボナ・ベスティア、パーナルト王国、国王代理、ノア・パーナルトである。
肝心の国王はというといまだに王都内はゾンビで溢れ返り隔離されていた。
終戦の決め手は経済悪化に追い込まれた状態での帝都の完全封鎖にあった。
最前線が帝都に移ってからの1ヶ月間で徐々に陸路の封鎖範囲が拡大、やがて帝都は完全に孤立した。
その状態で抗っていたものの帝都の要塞は半壊しており一部機能の麻痺、それが決定打となり打開不可能と判断、無条件降伏ともいえる条約の調停に至ったのだ。
主な内容は戦争責任として数名の処罰、戦争犯罪者の処罰権を王国に譲渡すること。
和平を結び不可侵、相互協力関係を結ぶこと。
一時的にレクイア含む複数の都市は王国の占領下となり教育は王国のものにじゅんずること。
戦後の賠償協議を日程調整の後行いその決定内容に帝国は従うこと。
相互、貿易に関して税金を撤廃、経済協力体制を強いて両国の経済停滞の改善を図ることなどが明記されていた。
これにより8ヶ月に渡って繰り広げられた帝王戦争は王国側の勝利となって終戦となった。
そしてこれは全世界に衝撃を与えることとなる。
それは誰しも王国側の敗北を予想していたからだ。
そもそも相手は無敗で国力を増強させていっていた帝国、多種多様な文化圏、技術を取り込みなお拡大する国家である。
その国に裏工作で経済的悪化を招いた上での開戦、誰がどう見ても持って2、3ヶ月で負けると予想されていた。
やはり最も大きかった転換点は戦後3ヶ月後の帝王の海戦である。
同時に他国からの支援も無視できない影響力があった。
帝国の侵攻速度に翳りを見せ始めていた丁度その時に痛み分けの反旗、これにより海上の安全が帝国側も得られなくなってしまったのだ。
そして戦後、その海戦で生死不明となっていた2名が奇跡的な帰還を果たすこととなった。
ジークフリート・ブラウン、ゼラード・ファルナ・トールである。
3章終了です。
最強、奇跡の生還、次回生還のルート語って4章が最終章にしたいと思います。




