ヘルエス軍属する3
夜、辺りは寝静まり灯りも消え、海に反射する衛星の反射光が微かに辺りを照らしていた。
軍艦来るまで実質待機のため夕刻と同様に海の水面を眺めていた。
ふと港の方を見ると大勢が船に積荷を乗せてるのを見つける。
海を眺め続けたヘルエスはもう交渉すら億劫になっていたため遠隔で魔法を発動させた。
中級魔法・アイスウォール・二十重発動。
船を取り囲むように氷の壁が海より迫り出した。
「ひっ!魔女だ!あいつだ!」
「どっからだよ……怖えよ。」
「魔法を使って俺らを監視してやがんだ!撤収、撤収!」
「もはや呪いだろこれ……。クソが!」
時刻は宵刻を少し過ぎた頃、そんな叫びが静かな街へ響き渡った。
誰が騒ごうがどうでも良いヘルエスは定位置でまた海を眺め出していた。
すると水平線の奥に暗くてよく分かりにくいが船の一団らしいものが黒く見えていた。
上級魔法・エアムーブ
最初は軍艦がもう到着したのかと思っていたのだが近づくにつれて国旗が掲げられておらず軍艦ですらないことに気がついた。
看板に烈風波で慣性を殺しふわっと着地する。
「あんた何者だ!今空飛んでなかったか!?」
見張りが気付き、マストの紐にぶら下がり降りてきた。
「私はパーナルト王国の魔法使い、あなた達は?」
「俺たちはバース帝国の商団だ。ベスティア帝国からの交易船が来ないので何があったのではと思いこちらから足を運ぶことにしたのだ。」
「お引き取り願います。もうじき王国の軍艦がきます。ベスティア帝国の船と間違えられて船が沈められても責任取れませんよ?船というか船団の責任者を呼んできて貰えるかしら。」
ヘルエスは苦手な交渉を執り行うことになってしまった。
どうやら船団の責任者は隣の船らしく来るまで暇ができてしまったために船首に座り海を眺めて待つことにした。
船は交渉が終わるまでに港に着かないように帆を畳んでくれていた。
くれたというか杖構えただけで帝国軍が機能してない異変の元凶を察していう通りに動いてくれたのだが……。
そんなことは知らないヘルエスは燻製肉で腹ごしらえしていた。
「お、御食事中失礼いたします。このザグワーロ商会船団の責任者、カエス・ザグワーロと申します。」
「王国の魔法使いのヘルエスです。」
軽く挨拶を済ませる。
「ここは帝国領だと思ったのですが王国領でしたかな?」
どうやら航海中に手違いが起こって迷ったと勘違いしているようだった。
「いえ帝国領のレクイアという街です。
今王国は帝国と戦争中でしてここは戦地です。
下手な巻き添えで損失を被る前に撤退することを勧めますよ。」
カエスは驚くかの如く目を見開いていた。
「あの〜ヘルエスさん……。帝国の軍艦は一体何しておられるので?いや王国兵がこんなところで検閲をなさってるのを普通帝国軍が見落とすわけないですよね。帝国軍はどうされたんですか?」
「全部沈めました。この後王国の軍艦来た後攻撃を開始します。我々はベスティア帝国以外の諸外国との関係悪化は望んでおりません。」
口八丁手八丁、有る事無い事それっぽく語る。
そもそも海路封鎖だけで王国が港町を攻撃するという話はヘルエスにも入っていない。
おまけにヘルエスは外交とは無縁である。
関係悪化とかそれっぽいことを言ってるがこの発言に何の効力も伴ってはいなかった。
「沈めた!?……ですが我々には商売の権利がございます。」
手を引いてくれる気配は無かった。
「じゃあ帝国軍艦みたいに海の底に沈まれますか?別に陸路で良いではございませんか。遠いですけどそちらは私は関与してませんのでお好きにお通りください。」
ヘルエスは少し面倒になりだしていた。
「沈められるとそれこそこちらの国家とのトラブルがあるのでは?あーひょっとして……。」
ヘルエスの脅しの怖さに気がついたようである。
「海底に沈んだ廃船の山から帝国軍と見分けつくといいですね。」
ヘルエスは今日1番の満面の笑みで返答した。
「か、かしこまりました。撤収させます。」
どこか顔を引き攣ったように返答し帰還へと舵をとりだした。
「あの帝国は劣勢なのですか?」
バース帝国はベスティア帝国と商業的な友好国、両帝国の損失のためカエスはそれを尋ねずにはいられなかった。
「さぁ?私はそもそも軍人ではございません。そもそも戦況にあまり興味ないしがない魔法使いでございます。」
ここでヘルエスはカミングアウトする。
「これはやられましたね。進めば沈められ引けば良し、海上封鎖が目的でしたか。」
どうやらカエスは戦争、戦術にそれなりの嗜みはあるようですぐにヘルエスの目的に気がついたようだ。
「でもまぁ私にかかればいくらでも帝国に負荷をかけられます。負けることはほぼないですよ。商人でしたら損切りはお早めに……。」
自負心の現れに乾いた笑いをこぼし検討しますとだけ残してカエスは船の中へ入っていった。
ふと王国側の海を見ると複数の船が隊列を組んで進んでいるのが目についた。漸く到着したのうである。
ヘルエスは一応の確認のために新たにやってきた船団向かって飛行魔法で飛んでいった。
「誰だ!」
突如飛んできたヘルエスに王国軍人は警戒心を立てて叫ぶ。
「ノア様より王国軍が来るまでに海上を封鎖していた者です。
これ王国軍艦でいいですよね?私陸路への応援を頼まれていますので後は任せますよ?」
「え、あ、はい。かしこまりました。」
どうやらノアの知名度はそれなりに高かったようで兵士は一瞬で警戒心が瓦解し呆然と突っ立っている状態に陥ってしまっていた。
ヘルエスは伝えるだけ伝えてすぐさま飛び去った。
「何事だ!」
トラブルかと慌てて甲板に上がってきた兵士の上司が声をかける。
「ノア様よりここを任されていた魔法使いが挨拶に来られました。
おそらく司書のどなたかとは思います。
陸路の方へ加勢に向かわれました。」
ヘルエスに相対した兵士は報告を行った。
「もうレクイアに到着だ!包囲網敷くから準備しておけ。」
王国の反転攻勢は多角的に攻め込み始めた。
某侵攻や過去の戦争調べてましたが戦争ってそう簡単に終わらせられないんですね。
ヘルエスに定期的に暴れさせれば終わらせられるかなと舐めてました。
もう少しお付き合い願います。




