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禁書庫司書の受難  作者: 睡魔ASMRer
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弔う気持ち

 カレンが倒れた直後、ヘルエスの影を媒体として影が盛り上がってきた。


 だがそれは盛り上がりきる事なくとどまった。


 「ガイアの母さんナイスです。ケント、貴女に亡骸を渡すとでも?」


 ヘルエスはカレンの遺体を抱き上げる。


 まだ少し温もりのあるそれは持つとだらりと垂れ下がり徐々に冷えていくのが分かった。


 未練がましく残る影の靄が次第に大きくなりケントが姿を現した。


 「返せ!我が戦力を返せ!」


 ケントの言葉にイラつくヘルエス。


 「戦力?読み書きすら教えないで戦争の道具として育てたくせに?記憶もあんた達が消したんでしょ?10年以上記憶すらないなんて普通じゃない!ケントの活動時期的に戦争のためだけにこの子達を利用してたことくらい分かるわよ。」


 ヘルエスは救えなかった少女達への怒りを爆発させていた。


 「そりゃお前もだろ!王国の犬め!」


 ヘルエスは感情の限界を超えていた。


 「ごちゃごちゃ五月蝿いわよ!」


 最上級魔法・ブレードオブテンペスト


 触れたものを切り刻む竜巻はケントの眼前に召喚された。


 咄嗟に影に潜るケント、しかし少しだけ間に合わず血飛沫が舞った。


 「帝国を舐めるなよ。」


 それだけ残して彼らは去っていった。


 「あぁドーン……。」


 名残惜しそうにガイア母が溢す。


 「ドーンっていうんですか?ガイアの兄は……。」


 「えぇ。とても家族思いの子でした。

 ガイアが生まれてからというもののあの子にいいところ見せようと良く振る舞っていたのですが……あんな姿で敵国の言いなりだなんて……。」


 悲痛な声が伝わる。


 「戻りましょう。明日からは街の奪還です。」


 エアムーブで反転攻勢の一団へ向けて飛び去った。







 ヘルエスはガイア母を元いた軍に下ろして遺体を抱えたまま王都へ帰ってきていた。


 向かうはヘルミウスの元である。


 「戻りました。」


 執事が応対してくれる。


 「ヘルミウス様をお呼びいたします。少しお待ち下さい。」


 遺体を抱えたまま中に入るわけにはいかない。


 ヘルエスは遺体の血を拭き取りながら待った。


 「ヘルエス、その子は?」


 ヘルミウスがやってくる。寝不足だろうか。どこかやつれたような顔をしていた。


 「彼女が例の魔の魔女(マーラウィッチ)です。」


 ヘルミウスは訝しんだ表情をヘルエスに向ける。


 「何故?血を拭き取り遺体を弔おうとしているのだ。


 「彼女は戦いの末自害しました。帝国に戦争の道具として育てられて辟易していたようです。


 私が追い立てたこともあり生きる気力を失い自害しました。私が殺したも同然です。弔ってはダメですか?」


 ヘルミウスは呆れた様子を見せたのち立ち去ろうとした。


 「好きにしろ。私は君に物を言えた立場ではない。


 私も君を戦いの駒として育てたのだからな。


 才ある者の宿命だ。弔いたいなら好きにしろ。だが今は戦争中だ。忘れるなよ。」


 ヘルエスはまた1人になった。


 「棺桶がいるな。」


 ぼそっと独り言を吐いてヘルエスは自宅へ帰ることにした。


 帰宅そうそう残った魔力を絞り出して魔法を発動させる。


 中級魔法・アイスウォール・5重発動


 氷の壁でリビングのど真ん中に簡易的な氷室を作り遺体を保管する。


 ヘルエスは沐浴で体の血を洗い流し汚れた服を着替えて外出準備を整える。


 「カレン、もう少し待っててね。」


 遺体に話しかけヘルエスは家の扉を閉める。


 ヘルエスはこの瞬間ふと気配を感じた。


 周囲に気を配らせるが気配はするもののいまいち位置すら辿れなかった。


 強いてあげるとするならかなり近そうという事である。


 このまま突っ立っていても埒が開かないためヘルエスはそのまま買い物に向かうことにした。


 




 「はいよ。」


 ヘルエスは葬祭屋に来ていた。


 「棺桶を1つ、墓石への花を見繕って下さい。」


 ヘルエスは淡々と頼むと商品を持ってきてくれた。


 「顔が暗いよ。遺体あるだけ良かったな。」


 「どういう意味ですか?」


 ヘルエスは少し苛立ちを含む声色で聞き返す。


 「気悪くしないでくれ……。戦争で遺体が残るだけでもレアなんだ。3ヶ月前なんて貴族様ですら遺体が見つかってないんだからな。遺体から弔えるなら弔ってやれって話だ。」


 ばつが悪そうに頭を書きながら説明する店長、ヘルエスは頭を下げて謝った。


 「謝る事じゃねぇよ。戦争中だ。誰しも身近な人が死ねばピリピリするわ。もう半年も戦争中の葬祭屋やってんだ。流石に慣れてる。」


 ヘルエスはそれこそ場都合が悪くなった。


 「いえ敵の少女を弔いたいんです。生きたいように生きれずに私が追い立てて自害させてしまいました。」


 店長は目を丸くする。


 「え、えっとそりゃ……あー……そのぉ……お気の毒にな……。」


 返答に困るだろう。


 王国民でベスティア帝国に良いイメージを持ってる人なんて皆無だ。


 その敵国の兵を弔おうとしているのだから反応にも困るだろう。


 ましてや戦時の自害なんて相応の覚悟が求められる。


 自国に何の利もないからだ。


 故に反応に困る。


 「これお代です。お釣りは不要です。」


 ヘルエスは金貨で支払うと棺桶に花を入れて店を後にした。






 墓石は後回しに一度荷物を置きに来たヘルエスは違和感に気づく。


 出る前に挨拶までした遺体が消え失せていたのだ。


 ヘルエスは困惑した。


 ヘルエスは長考の末1つの結論に至る。


 「あの野郎、後付けてたのね。」


 ヘルエスは魔力も減りすぎていたため一度仮眠を取ることにした。


 遺体喪失がきっかけで戦後、1人の魔女が騒ぎを起こすこととなる。


 

 意思あるせいで和解エンドになったなら意思無くせばよくねとなりました。

 ごめんよカレン……話のために遺体活用させてもらいます。

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