反転攻勢前日
注釈、今回の話は王国の反転攻勢、その前日までです。
遂に王国側の反転攻勢の日がやってくる。
これはその前々日、ヘルエスは仕事を終えてから既に攻勢を仕掛ける街スドンバの付近の森に到着しており野宿していた。
平原で群れていた牛を一頭魔法で狩った肉で腹を満たす。
食べきれない肉を燻製にしていく。
日は落ち森は一寸先は闇を呈していた。
ヘルエスは物心ついてからヘルミウスに拾われるまでの生活を思い出していた。
当時は食うものに困っていた。だからよく森の中で獣を狩っていた。
魔法とは名ばかりの魔力操作での状態変化のみを使ってである。
風を起こす、火種を生み出すその程度の魔法で試行錯誤しながらなんとか捉えては丸焼きにして1日かけて食べ尽くしていた。
奇しくも今と重なっているわけだ。
だが昔のような飢えはない。満たされていた。
相手はどんな人生を送ってきていたのだろうか。焚き火を眺めているとそんな考えが頭を過ぎる。
どちらかが死なないと戦争は終わらない。
だからこその単騎である。
燻製が終わり火が消えると同時に眠りにつくのだった。
反転攻勢前日、ヘルエスは森を出てスドンバを遠くから偵察していた。
反転攻勢は帝国領土内にある軍事拠点からと王都側からの挟撃奇襲によって一気に制圧、その後帝国内の主要道路封鎖、街の占領を経て残りのルキハ、バスティユニを孤立からの挟撃という流れである。
故に最初の戦闘の地、スドンバへ一足先について様子を見ていた。
街には王都側に向けられた大砲がいくつも設置されており兵士が巡回しているのが目につく。
もう既に王国軍の帝国領内に対する転送は行われており距離を縮めている最中だろうか。
そうこう考えていると背後から突如として気配がしたため跳び退くとそこにはガイアでもガイアの兄でもない女性のヴァンパイアが立っていた。
「??どなたですか?」
ヘルエスは敵味方分からない彼女にそう質問する。
「貴方がヘルエス様でいらっしゃいますね。私はガイアの母でございます。今回の攻勢の補佐として軍事についております。
要件と致しましては助けて下さい。帝国側の進軍が1人の少女によって半壊致しました。」
ヘルエスは咄嗟にエアムーブで帝国領土に向けて飛び去った。
10分ほど飛行すると爆炎が巻き起こる現場を目にして急降下する。
敵は3人だった。
魔の魔女1人、ヴァンパイア1人、そしてケントことケットラーズがそこにはいた。
「な、ヘルエス!?」
ヘルエスが着地するなり驚愕の様相を浮かべているがこの時点でヘルエスの攻撃は始まっていた。
初級魔法・烈風波・9重発動
1人3発、計9発放ち密集してた3人を一気に孤立させた。
「ちっ!カレン!撤退だ!」
幾度となく姿晒した時点で撤退されてきたヘルエスにとって撤退は読めており魔法速やかに発動させていた。
上級魔法・ガイルスコルグ・三重発動!
三者の頭を貫かんと放たれたそれは影に潜られ、魔道具で弾かれ、魔法で防がれてしまった。
その後、ケントとカレンと呼ばれた少女に影が纏い出す。
こうなってはそう簡単には干渉できない。
直後ガイアの母が到着、入れ替わるように影に収納されて移動を開始した。
「ヘルエス様!東です。え、きゃっ。」
影の気配を伝えてくれるガイア母、ほぼ反射で彼女を抱え、エアムーブでその場を飛び去った。
ケント達が逃げた先は帝国内の大きな街だった。
ヘルエスは名も知らない街に降り立つ。
ガイア母は咄嗟にヘルエスの影に隠れる。
「ケント、いやそのカレンでしたか?彼女に用がございます。逃しませんよ?」
ヘルエスの声は冷たさと残忍さを纏っていた。
それは街をパニックにする。街だけではない。逃げてきたケント達もであった。
「は!?なんで影移動先がわかったんだよ!くっカレンお前を失うわけにはいかない!撤退だ!」
杖を握りしめ応戦の構えを取っていたカレンと呼ばれた少女に再び影が纏われる。
「させません!」
ガイア母の声が聞こえた瞬間影が彼女を覆い尽くすことはできなくなっていた。
「これがガイアがやり損ねた影を掴む行為ですか。貴女がいて本当に良かった。」
「あの、ガイアが何かご迷惑を!?うちの馬鹿息子がお世話になっております。」
「いえ別に……彼は私の良き仕事仲間?相棒ですので。」
ヘルエスは禁書狩りを思い出しながらそう返すと母はお供いたしますとだけ残して場に静寂が戻る。
睨み合い、そんな状況をヘルエスはお構いなしに攻撃する。
上級魔法・ガイルスコルグ
カレンに向けられた魔法は分厚い炎の壁にて防がれた。
「ちっヴァンパイアめ!影で引っ込んで暮らしてろよ!」
ケントは差別的な悪態を吐いた。
「なら息子を返していただいてよろしくて?死体をまるで道具のように……。」
徐々に重みが増していく母の言葉はとても深い怒りが込められていた。
「クソが!第一敵地のど真ん中だぞ?てめえら捕えて終わりだ!」
ケントはハッタリを咬ます他手立てがなかった。
彼女が多重最上級魔法を使えば街に被害が及ぶだけでなく捕える兵士すら瞬殺されてしまう。
それを防ぐのは無理難題であり雷の魔女が放った際にヘルエスが取ったように基本は逃げに徹するのが無難である。
そう理解していても脳がパニックを起こしているのだ。
「ほら移動しましょうか。ここで殺り合うのもなんですし。誰も来ない平原なんかで……。例えどこへ行こうと地獄の果てまで追いかけますよ?幸い食料はありますしね。」
カレンに向けて放たれたヘルエスの言葉はカレンを行動へと移させた。
上級魔法・ファイヤープロプローション・三重発動
それをみてヘルエスも発動する。
上級魔法・エアムーブ
2人は決戦の地、ベスティア大平原へと向かった。
次回決戦炎の魔の魔女(どのように戦闘進めるか決着つかせるか未定)




