VS雷の魔の魔女
『帝王の海戦』その顛末を聞かされたヘルエスは即座に作戦決行を決め飛び去った。
エアムーブと竜巻風4重の重ね技で高速飛行を行い国境付近で海に出た。おそらく船はまだ撤退中のはず。
海上をしらみ潰しに探しながら帝国の海沿いの都市、ガーベルドへ向かった。
幸いなことに街に到着する前に海上を並走して進む2隻を発見、先回りする事にしてガーベルトに到着した。
なぜガーベルドかそれはここが有数の海沿い一大都市でありヘルミウスより停泊はおそらくここだろうと伝え聞いていたからだ。
街の側で降りてから徒歩で向かい到着、旅の者を装い街へ潜入する。
日が沈み街が眠りにつく頃にその船はやってきた。
中級魔法・水鏡、二重発動
遠くに2隻、ゆっくり近づいてきている。
狙える射程に入ったタイミングでヘルエスは最高火力をぶっ放した。
最上級魔法・インフェルノ、5連発動
見事に命中、船2隻とも轟々と火を撒き散らしながら沈んでいく。
その光景を見ていると炎を突き破るように稲妻が走るのが見えた。
まだ生きてる。稲妻は迷いなくこちらに向かってるのをみて建物を陰にし烈風波を駆使し街外れの森まで退避した。
周囲より高い3階建ての屋根上にいることを確認して今度は烈風波を進行方向とは反対側の街沿いへ連続発動、自身は音を立てぬよう進捗に歩いて近づいていく。
おそらく攻撃魔法は発動しても防がれる可能性が高い。
この場合互いにジリ貧な削り合いとなる。
だが攻撃中ならば……。
「ライ・ボル・ゼラ・スパク……
相手の詠唱が始まったのを確認し突っ込む。
初級魔法・烈風波・二重発動
初級魔法・烈風波
これで届くのはせいぜい10メートル、刀身二振り分足らない距離を少し遅めに発動させた烈風波で背中を押して距離を詰める。
相手の詠唱が終わると同時に相手は驚いたようにこちらを向き身体を捻り始めた。
背後で轟音が響き街の周りを囲むように広がっていた森は雷に打たれ一掃される中剣を縦に振り切る。
「ちっ!」
横腹を軽く掠り血が少し飛び散るが軽傷といった様子。
追撃を加えようと飛び込むと相手は建物から落ちていく。
地上まで5メートルはある。普通なら詠唱も間に合わず即死だ。
だが私達ならそこから空をも飛べる。
初級魔法・烈風波・3重発動
落とさない、それがヘルエスの取った選択だった。
「きゃっ!」
突然飛び降りたはずの屋根に向かい急加速する謎現象に悲鳴をあげる少女に向かい剣をそのまま振り下ろした。
「ぎぃぃぃやああぁぁ。」
皮膚、筋肉、内臓を次々と切り裂き背骨まで到達、だが背骨は流石に切れずにそのまま地面へと叩きつけるに至った。
大量の返り血が噴き出てきていたもののそれを受け入れる。
とりあえず1人目、去ろうとする直前、急速な魔力の流れを目にして慌てる。
お尻から地面に落ちており少女は辛うじてまだ生きていた。
ヘルエスはすぐさま目玉に刃を突き立てて脳を潰しにかかる。
だが間に合わなかった。
最上級魔法・エクトプラズマリィサンダー・∞発動
道連れ、そう言わんばかりの最期の魔法が発動。
後に魔女之怒と呼ばれるそれは聡明な魔女が受けた理不尽な死に対する怒りだと噂される事となる。
「ちょ、馬鹿……。」
ヘルエスは市民を巻き込まないように配慮していた。
わざわざ少し離れた森からの烈風波で魔法を釣り出させたのもそのためだ。
それを無に返す魔法、少女の亡骸を抱えてエアムーブにより離脱を図った。
範囲は幸か不幸か街と同じ範囲だったためなんとかなっていた。
通常であれば魔法行使者からの魔力供給が止まれば不発となりすぐに止まる魔法も全く止まる気配が見えない。
待機中の魔力を糧に発動、魔法の着弾点から魔力が霧散、また発動を繰り返していた。
次第に街から阿鼻叫喚、悲鳴が響き渡るも数刻と経たぬうちに再び夜の静けさを取り戻していた。
鳴り響くは雷の導、その音がヘルエスに突き刺さり悔いへと姿を変える。
止めたかった……と。
ヘルエスは森の深くまで避難していた。
誰も居ないことを確認した上で少女の亡骸の胸を切り開く。
肋骨を胸骨との境目から割きいくつかの膜を切り分けていくと次第に心臓が見えてきた。その横には例の結晶、加工された魔石が見える。それを丁寧に抜き取ると遺体に向けて魔法を放ち火葬する。
この魔石は罪の証、それを胸の内ポケットに仕まい込みヘルエスは王国への帰路に着くのだった。




