必ず勝つ秘策
ヘルエスは翌日の司書の仕事を完遂するとブラウン家の離れを訪れていた。
するとブラウン家の者では無い者とばったり出会した。
「あれ?カイシェスト!?どうかされたんですか?なんか久しぶりに出会った気がします。」
ヘルエスは軽く挨拶を交わすとカイシェストは深々と頭を下げてきた。
「以前命を助けていただきありがとうございました。司書を辞めることになっていたので今日は教官にご挨拶をと思い足を運んでいた次第にございます。」
いつもと違う口調でそれはさながら貴族の礼節さであった。
「???辞めてしまうんですね。お疲れ様でした。どこで捕まってしまったかだけでもお聞きしてよろしいですか?恥を承知でお聞きします。」
もう会えないかもしれない。そうなるとなぜ捕まってしまっていたのかそれを訊かずにはいられなかった。
「決起集会、その前日、私は職務に当たっていました。その後の帰り道に背後から突如として気配がすると同時に黒い何かに身体を覆われて捕まってしまいました。ただでさえ弱い自分が強さに憧れてた人に助けられるだけで相当な屈辱で……。戦争が始まったこともあり家のことにも手を回さなきゃいけず辞めることになったのです。」
聞けば聞くほどどうしようもなさが伝わってきた。
ガイアを3回ほど蹴り飛ばしたのはある意味正解なのだろうか。
蹴り飛ばせずに体を影で覆われると操作権が無い普通の人は何もできずに捕まってしまうと思われた。
ヘルエスはそう思案しているとカイシェストは続けて語った。
「もし戦地でお会いしましたらその時は貴女のお力を是非お貸し下さいませ。貴女の力は私にとって羨ましい限りですので……。」
焦がれていることを伝えられると反応に困った。
ヘルエス自身かなり真面目なこともあり生まれそのものに責任感を感じているからだ。
「それでは失礼します。」
去り行くカイシェストをただ眺めることしかできない自身にヘルエスは深い憤りを感じる。
だが頭はすぐに切り替わり前を向いた。
(彼女は彼女。私は私。私が成し遂げなければならないことがある。もたついてる暇はない。)
ヘルミウスの私室へ到着すると執事が通してくれた。
「ヘルエスか。すまない。今は書類に覆われていてな。余裕がないのだ。手短に要件を頼む。」
軍閥ともいえるブラウン家、戦争により負担が増えていたのだ。
「1日30分でいいので剣を教えてくださらないでしょうか?帝国には私と同等と思われる魔法使いが最低2人はいます。
この2人を仕留めない限り戦争は終わりません。私たちは1人で戦況を一変させますので……。
私が仕留めます。私達相手だと数の有利は取れません。」
書類処理の手が止まった。
「剣がその話にどう繋がる?なぜ剣なのだ。」
ヘルエスは自身の杖を見せつけるように掲げた。
そして引き抜き剣先を露出させる
「これはダストトレイルと申します。
これは杖であり剣です。必ず勝つにはこの優位を活かすことが必要に感じました。
接近しながらの魔法は他にない強みになり得ます。それ故の稽古をと思いまして……。
お忙しいのは理解しているつもりです。」
話を聞き終えるとヘルミウスはまた書類処理を始めながら答えた。
「分かった。引き受けよう。だが時間は指定させてもらう。ヘルエス、お前が司書としての職務を終えてから1時間、教えてやる。
いいか?俺は手加減が嫌いだ。やるなら徹底的に……それが我が矜持。
半端な覚悟してくるなよ。」
「ありがとうございます。失礼いたしました。」
ヘルエスは一礼し執事に案内されて部屋を後にした。
翌日、ヘルエスはシャルとの任務を終えて別れ際に言葉を交わしていた。
「へぇ剣も使えるようにするってことはジークやノアスタイルってことだよね?いいねぇいいねぇ俺は戦争じゃ医療班だからな。ガンガン暴れて楽させてよね。」
「本当に面倒くさがりですねシャルは。」
そうして別れた後早速ブラウン家離れに向かうと執事が中庭へ案内してくれた。
「来たかヘルエス。ではまず筋トレだ。」
「あの剣は?」
「今の貴様に教えても肉体なき剣のイロハは戦闘の邪魔するだけだ。
まずは正しく速く強く動ける身体を作るところからである。
プランク3分!始め!」
ヘルエスは過去にヘルミウスに体の鍛え方を教わっている。教わっているがそれをメインでは行なって来なかった。
1分超えたあたりで身体が震え始める。
震えをなんとか抑えように踏ん張る。
震えはより大きくなり痙攣となってストップと言われる頃には釣り上げられた魚のようにピクピク震えるだけになっていた。
「次腕立て100回3セット、その後プランクだからな。」
地獄の特訓はまだ始まったばかりである。




