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禁書庫司書の受難  作者: 睡魔ASMRer
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真相と覚悟

 一階はどこもかしこも手術台だらけで掃除も十全に行われていなかったのか血痕が乾きこびり付いていた。


 「……んでここが地下への入り口。と言っても廃棄場なんだけどね。」


 廃棄、嫌な予感しかしない。


 階段降りた先の扉を開くとそこは1つの大きな部屋につながっていた。


 当然の如く血痕がこびり付いているがそれよりも目を見張るのは大量の骨だった。


 「何この骨の量……。」


 ヘルエスは思わず口にする。


 高さ3メートルはあろう部屋の天井につきそうなくらいの骨の山が積み上がっていたからだ。


 「半分くらいは魔物だね。君たちを作るのにどうやら魔石埋め込んでいたらしく取り出した後の魔物は当時は利用できないから皮とか剥いでから捨ててたんじゃないかな?」


 もう半分は聞くまでも無いだろう。


 「残りはひょっとして失敗作や母体の遺体ってことですよね?」


 自分もひょっとしたらここに居たかもしれない。考えれば考えるほど怖いというより悍ましい感覚で埋め尽くされた。


 「そう。で王国は13年前にこの情報を掴んでいて翌年にここの制圧作戦を決行。結果は失敗、国際舞台に持ち込まれないように両者で秘密裏な条約を締結、これにて終わりだ。」


 「そんなことあったんですね。4、5歳ですから普通なら物心ついてる頃なんですけど知りませんでした。」


 「君たちは人間という生き物と同じじゃ無いということさ。1番最初の記憶、どこ?」


 ヘルエスは思い返す。


 ヘルエスはスラムの中で親おらずに育っていた。


 1番最初の記憶……腹を空かせて渋めの木の実を齧っていたところだろうか。


 「スラムに紛れて木の実齧ってましたね。」


 「あの作戦の後そんなことになってたんか。」


 ノアはどこか呆れた様子である。


 「そもそもケットラーズは実験体脱走者って言ってましたよ?」


 ヘルエスはケントの言っていた言葉が頭によぎる。


 『こいつ12年前の実験体脱走者と同等かよ。』


 実験体脱走者、王国の作戦が事実なら脱走という言葉は少し違和感があった。


 「そもそも私達一度逃げ出されてるのでは?でも王国の作戦失敗したんですよね?」


 「あぁ君たちを処分する予定で普通に1人も処分できなかった。


 後で調べて分かったことだけど君たちの母では無い腹に子を抱えた1人の女性とここで魔石加工に携わっていた1人の男性が協力して君たち全員を逃がしていることが分かった。


 王国の作戦のどさくさに紛れてね。」


 ヘルエスはなんとも形容し難い感情に襲われる。


 「その人達は?」


 生死は?もし生きてるなら会いに行きたい。そんな気持ちは無慈悲に返された。


 「んなもん帝国に処刑されてるよ。というか謎の死者が調べてたら洗い出されてそっから脱走の真相知れたからね。」


 「そう。まぁそれもそうですね。」


 「とまぁあとは資料に色々書いてあるよ。僕はこの後、ここを軍事拠点にしなきゃいけないからな。あとはお好きにどうぞ。」


 ヘルエスは転移門を使い王国への帰路に着いた。





 家に着いて手にした資料を眺める。


 戦争が始まってからブラウン家を出て我が家に帰っていた。


 残った魔力を絞り出すように炎を生み出し湯を沸かす。チェアを机横に持っていき手にした資料を雑に放り置く。


 長距離転移門の影響で魔力もからっきしになりとてつもない疲労感に見舞われ椅子に落ちるように座り込んだ。


 湯呑みを片手に資料を手に取り眺める。


 資料には魔の魔女(マーラウィッチ)の詳しい作り方が書かれていた。


 要約すると魔法に最適化加工した魔石を生まれて1ヶ月の子供の心臓周辺の膜に挟み込む。


 どうやらこのままじゃ魔力を通さないので動体として魔石を砕いたやつを練り編んだ糸で魔石をがんじがらめするように縫い付ける。


 これにより魔力が糸を通して魔石が機能するらしい


 次に最初は魔力のこもった水に沈め、その次に魔力を込めた植物で食事をさせていき、一歳頃に電気変換させた魔力で魔石を活性化。


 この時点で多岐に渡る魔法を使える身体に組み変わるらしい。


 当然拒絶反応、水責め時の溺死、電気による心停止、様々な死因を乗り越えた末に生み出されるらしく成功率は1%切っていたとのこと。


 6人ということは600人の子供は最低でも犠牲になった可能性がある。


 下手したら1000超えるはずだ。


 母体の部屋が多かった理由、無数の骨の山、全てに合点がいった。


 湯を飲み干しため息を吐き捨てる。


 湿った暖かい息が生きてる実感を与えるとともに冷たく荒みそうな心を溶かしてくれた。


 私達の存在は戦況を一変させる。2人が敵にいるならいつか倒さないと戦争は終わらない。


 ケントを取り逃したことによって自分の存在は帝国に知らされてるとすれば自身が倒されるのが先か残りの2人を倒すのが先か。


 それで戦争の命運が分けられてる。そんな使命感に似たものをヘルエスは感じ取った。


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