魔の魔女
ヘルエスは最後の関連施設と思しき施設に到着していた。
平原の中に建つ屋敷、それは今までの施設とは違い富豪か何かの屋敷かと思える建物だった。
しかしそれはどこか廃墟と言われても納得できる風格を纏っていた。
所々割れたガラス窓、部分的に剥がれた木壁、欠けてる柱、それらは管理が止まった、そんな印象を与えてくる。
扉には鍵がかかっておらず普通に入れた。
「お邪魔します。」
なんとなく挨拶する。
歩いて回り出した時1人メインバルコニーに顔を出しに来た。
「どなたでしょうか?」
人気無い空間に1人の声が響く。振り向くとメイド姿の女性が2階から見下ろすように立っていた。
「旅のものです。平野にポツンと建っていましたので気になり寄ってみました。」
ヘルエスは猫被りモードで旅人に扮飾する。
「そうですか。見ての通り廃墟ですので歩き回られる際はご注意下さい。怪我しても保証致しかねます。」
返答は想像してないものでありヘルエスは困惑する。
最悪この人を殺す必要さえ感じていたからだ。
「一応お名前をお聞きしても?」
屋敷の女性に尋ねられ少し悩んだ後、ヘルエスは嘘偽りない名前を名乗ることにした。
「ヘルエスです。」
すると今まで無表情を貫いていた女性は顔を明るくさせた。
「まぁ貴女がヘルエス様ですか。ご主人をお呼びしますのでこちらへ。」
あまりの変わり具合に罠の覚悟をしつつヘルエスは女性に案内された部屋に入る。
椅子を引き案内された通りに座る。
やがて女性は誰かを呼びに部屋を出て隣の部屋へ入っていった音が聞こえた。
数分後ヘルエスの知ってる顔が部屋に入ってきた。
ご主人はノアだったのだ。
「は!?ノア!?」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
「やぁ。お疲れ様。もう着いたってことはここ一軒目かな?運がいいね。」
運が良い、これにてヘルエスは察した。
「さては私を良いように使いましたね?」
「人聞き悪いなぁまぁまぁ。」
ヘルエスは説明を促すとノアは語ってくれた。
「ここは俺の活動拠点、彼女は俺の従者だ。
んで前渡した資料のうち2枚は軍事施設、後で破壊にいくよ。」
「残りの2つは破壊しました。私が。」
ノアは少し驚いてくれたようだ。
「早いねぇそして運ないな。」
軽く小馬鹿にされた。
「脱線したね。ごめんごめん。
ここは君、というか魔法特化戦力の研究、生産を行っていた施設だ。10年前に空き家になって僕が別の名義使って買い叩いた。
倫理観なんて皆無の現場さ。後で資料見せてあげる。
ここで生まれた人は魔の魔女と言ってね。魔法の多重、連続、複数同時発動を可能にさせる研究だったんだ。」
ヘルエスは自分がやっていることが特殊なことにここで思い至った。
「アスティほどの使い手からすると連続発動は大した恩恵ではないんだけど多重、複数は脅威的な威力を持つ。魔の魔女のうち3人は僕が始末したから後3人、うち2人が帝国に居るね。
あくまでここで生まれた子だからその後に帝国が生み出していたらその限りではないけど……。」
「私がそのうちの1人なのね。」
「そうここが君の故郷だ。親は分からないだろうね。沢山の魔法に適正のある女性を囲って子を作らせてさらにその子に子供作らせて、そして生まれた子に手術を施してっとまぁ口で言うとそこまでだが実態はかなり酷かったみたいだね。
中には攫われてここに入れられた人もいて強姦してるわけだからね。
パーナルト王国の選民の歴史に並ぶベスティア帝国の闇の側面さ。」
ノアは立ち上がり付いてくるように促した。
「案内するよ。今後ここは王国が帝国に攻め入る際の拠点になる。その前に必要な資料、この施設の実態を君に実際見てもらおう。」
ノアに最初に連れられた部屋は隣の部屋だった。
部屋の中央に転移門がある。
「ここは王国に繋がる転移門ね。あ痛っ!」
ダストトレイルの杖先でぶん殴っていた。
「私の魔力返せ。」
その後2階の数ある部屋を通りながら説明を受けていた。
「んでここが魔の魔女の母体が暮らしてた部屋だね。
君の母がどの部屋かは知らないよ。そもそも母の素性が完全に秘匿、というか計画終了時点で全員口封じのために殺されてるよ。」
「やはり。」
自分のルーツ、真相に触れれそうでヘルエスは少し期待を膨らませていた。
4章か5章で終わると思います。
そのために急いで2章書き始めの際に思いついていた過去背景を明かそうと思います。
本当は戦後に訪れる予定でした。




