貴族戦争その余波
保守派、それは国を守るために今の体制を維持しようとする勢力でありアガスティア。ブラウン、トールの公爵家を中心とした枠組みである。
改革派、主に有力貴族の子息達で構成されており実質的な反禁書庫派閥といえる。中心となるのはヨトゥン公爵家である。
始まりはヨトゥン公爵家がトール公爵家、ブラウン公爵家に対して金利上昇を行い金融の締め付けを行ったことである。
あまりにピンポイントすぎる締め付けだったため保守派ではヨトゥン家の貿易ルートの封鎖を行い対抗処置とした。
中立派だったヴィンオーガ伯爵家がこれに反発、ヨトゥン公爵家に対して貿易連携を発表。
たった3日の間にほぼ全貴族に影響が波及するのだった。
「ケビン、カイシェスト、お疲れ様です。交代の時間です。」
ヘルエスはいつものように紋様を見せながら交代の挨拶する。
「おう。ヘルエスお疲れ様。」
「……。」
カイシェラはどこかうわの空といった様子だった。
「カイシェスト?息してますか?」
覗き込むように尋ねる。
「……え!?はい!?」
「イテッ!」
慌てて振り上げた杖がおでこにクリーンヒットする。
「あ、ヘルエス!これから任務なのにすみません。」
「おいおい大丈夫かよカイシェスト。疲れてんなぁ。家か?」
後ろからジャシードがやってきた。
「今日はジャスとですか。よろしくお願いしますね。」
「お疲れ様でした。お二人ともよろしくお願いします。」
カイシェラは俯きつつ早足で去っていった。
「ほんじゃ後よろしく。カイシェスト見送ってくるわ。」
見兼ねた様子でケビンは後を追うように帰っていった。
「で家とは?」
ヘルエスは知らない事情を察してすぐに聞いた。
「カイシェスト・フォナ・ロッケンベルグ。ブラウン家と強い繋がりのある貴族でな。
最近金融の締め付け喰らったろ。あれの余波というかブラウン家よりダメージ受けてるみたいでな。
まだ3日しか経ってないのにな……。」
「貴族だったんですね。というかカイシェスト弱くないですか?司書やってて大丈夫なんです?」
ぱっと見そんなに強くは見えなかった。
注意散漫は魔法使いにとっては致命的である。
「そもそもあいつは臨時だ。
一年と3ヶ月ほど前に3人ほどやられちまってな。
それの代役としてブラウン家と付き合いあったロッケンベルグの令嬢が指名されたんだ。魔法はそれなりに使えるから大丈夫だってなってな。基本暇だろ?だからだな。」
どうやら事件後の穴埋めらしい。
「じゃあ強くなってもらうしかないんですね。」
「そうだ。俺らにできることはなんもねぇってこった。俺、中でいいか?」
「はい。外はお任せ下さい。」
仕事終わりに家に着くとそこには顔見知りが立っていた。
教官ことヘルミウス・ブラウンその人である。
「あれ?教官?……教官ですか?」
咄嗟に詠唱破棄で上級魔法・アクアロックを発動させ拘束しながら尋ねた。
「ちょっとヘルエス。身体検査して本物か確かめていいからいきなり拘束しないでくれ。」
少し思案した後に魔法を解いた。
「すみません。教官がここに来ることなんて一度もなかったので。あ、差し出し以来ですか?」
「警戒心高くていいことだ。いやねちょっとゴタゴタしててね。最近一部貴族の動きが怪しいからもし何かあった時用として一時的にブラウン家に仕えて貰えないかなと思ってね。」
唐突な相談である。
「具体的役割は?」
「暴動起きた時用の鎮圧に加勢してくれ。もし起きるならって話。このまま争いが沈静化されるならいいんだが今のところあり得ない話だからな。」
元々教官に育てられているため育った家に帰るようなものである。
「別に構いませんが司書で居ない時はどうするんですか。」
「従者を1人待機させておく。そいつが連絡網となってくれるさ。」
結果的にその日のうちに準備して一時的に引っ越すことになった。
最小限の手荷物に纏めて家に鍵を閉めて向かう。
徒歩30分、懐かしい家が眼前に見えてきた。
「意外と早く戻ってきましたね。一年と少しですか。」
感嘆を上げながら見上げる。
入り口に1人立っていた。
「ご足労ありがとうございます。ヘルエス殿。私カイン・ミエールがお相手いたします。では手荷物お持ちいたします。」
カインと名乗る中年のオジサンがテキパキと部屋へ案内してくれた。
「ではごゆっくりお休み下さい。夕飯の際に再びお呼びに伺います。」
頭を深く下げながらその後去っていった。
この後どうするかいまだに決めかねたまま話進めてるので矛盾とかあればご指摘下さい。一応チェックはしておりますが……。




