戦争の狼煙
家をノックする。
出てくるのは当然使用人である。
「どちら様でしょうか。」
「禁書庫の司書です。禁書不要論が禁書指定されたため回収に伺いました。この家にありますよね?」
ガイアの潜入によりあることは確認済みである。
「主人に確認して参ります。明日以降またお越し下さいませ。」
厄介そうである。
「そうは言われましてもハルヌメス・アガスティア子息については禁書庫にて不審行為を行われましてね。
どうも禁書不要論に感化されたようでして回収は急務でございます。」
なんとか食い下がらずに繋ぎ止める。
このまま帰させられたら探すところからやり直しである。
おめおめと帰るわけにはいかなかった。
「なんとハルヌメス様がそのような事を……。ハルヌメス様をお呼びいたします。」
ヘルエスは目を丸くした。会いたくすら無い人物を呼ばれるのだ。まだ敷地に上がらせてもらえるだけの方が仕事が早くて助かるのにそうは問屋がおろさないらしい。
「昼間から一体誰だ。」
「私です。ハルヌメス様、まさか覚えてらっしゃらないとは仰いませんよね?」
ダストトレイルを抜き喉元に突きつけ脅す。
「ひいぃぃーあの時の……。お、俺は何も知らねぇ!!」
詰んだ。悲鳴を撒き散らしながら逃げられてしまったのだ。
「あのハルヌメス様が何やられたのでしょうか?アスティナ様が直々にハルヌメス様を茶会と称して呼びつけたことがございましてその際もかなり凹まれておりました。
何かご存知で?」
逃げられたショックで呆然としていると使用人が食いついてきた。
「魔法を仕込んだ栞を禁書に挟み込まれました。現行犯で脅しをかけたくらいです。殺されなかったことを感謝していただきたいほどですよ。」
「なんとそのようなことが……。私に何かできることは?」
どうやら思い当たる節があったのか協力的になってくれたようだ。
一階、右隅の部屋の机、下から2番目の引き出し内に禁書があることを伝え持ってきてもらえることになった。
「ついでに御宅で魔石に魔法を刻むなどの資料がありましたらアスティナ様経由で一報下さい。それも禁書指定されております。
栞になんの魔法仕込んだかは知りませんが座標指定以外は魔石関連しか魔法を刻むことは確認されておりません。
どうかよろしくお願いします。」
深々と頭を下げてお願いする。
すると相手も頭を深く下げてきた。
「1使用人としてハルヌメス様の愚行、申し訳なく思っております。
今後はこのようなことがないよう主人にも伝えさせていただきます。ご連絡ありがとうございました。」
どうやら話は通じたようである。
その後取ってきてもらった本を受け取りその場を去った。
「ガイア次はどこ向かう?公爵伯爵あたりから済ませたいんだけど。」
「じゃあ三軒隣、ヴィンオーガ伯爵の所だね。」
貴族街にも序列的なもので地位の高い者ほど王宮に近い場所に住んでいる。
だからこの辺一体は使用人雇いまくりの大貴族ばかりだ。行く場所には事欠かなかった。
「そこにあるのね。わかった。」
結果として楽に終わった。使用人を押し退けてヴィンオーガ伯爵本人が対応してくれ、彼はかなり温厚で指定した本をすぐに持ってきてくれたのだ。
子息のチャイルからかなり睨まれていたようだがこちらとしては禁書以外心底どうでも良かった。
「次はバスター伯爵家だね。」
ここはかなり苦戦することとなる。
子息のゲラルドがかなりの抵抗を見せたためだ。
仕方がないのでプランBに切り替えて口論を苛烈にさせて止まらせている間にガイアに潜入させ禁書を盗み出してもらった。
禁書に対しては何しても許されるが住居侵入は流石にバレると不味く奥の手ともいえる。
結果的に上手くいきその場を去った。
その後ヨトゥン公爵、を最後に回収は断念することになった。
ジークとアスティナが引き継ぎを申し出たためだ。
話によるとヘルエスの噂の広まりがやばいらしい。
一般家庭のやつは全て処分終えたことを伝え全て一任することにした。
結果的に貴族間で分裂が発生、保守派と改革派に分かれてかなり激しい歪み合いが起きた。
これが王都を巻き込む貴族戦争の始まりの狼煙となったのだ。




