ポルターガイスト
「赤い屋根とその奥、茶色の屋根群左から3つ目とその右2つ目、黒い屋根、にそれぞれ禁書1冊ずつ。どれも書斎の本棚に収納されてる。」
ガイアは情報収集に長けていた。
やってることは他人の影の中からの盗み見と盗み聞きである。
中級魔法・水鏡・二重発動
水を大気中からかき集めレンズ状に大小2枚形成された。
水鏡は元来、炎、光特化の防御魔法である。
それは光の屈折をいい感じに生み出し2枚重ねることで望遠の役割を担えるのだった。
多重発動を可能とするヘルエスにしか気付けない発見である。
「赤い屋根の家、下から3段目、左から4冊目の黒表紙であってる?」
禁書不要論の背表紙は黒、今いるところは他人の家の屋根上、そこから覗き見ていた。
窓から書斎が見える場合は外から狙い撃つことにしたのだ。
「合ってる。」
確認が取れたらヘルエスは深呼吸して杖を握りしめた。
初級魔法・烈風波+中級魔法・焔咲
詠唱破棄して断続的に魔法が放たれる。
威力調整した烈風波で指定の本だけ弾き飛ばしてそれを燃やし尽くす。
高火力を狭い範囲に行う焔咲の紫色の淡い炎は地面に落ちる頃には魔力を抜き取り消滅させられていた。
ジークがヘルエスに魅せた技である。
無数にある本の中から一点狙うヘルエスの脳裏にはリカント達、そしてその首につけられていた首輪が過っていた。
(禁書は首輪、遠くからでも確実に狙って当てる。そしてそれを徐々に速く!)
一冊、また一冊、ガイアの的確な指示を元に速やかに燃やしていく。
紫色の炎、それは地獄を連想させ後に禁書の厄災と恐れられるようになる。
次の勤務までに一般家庭に普及した禁書、延べ200冊以上処分し終えるのだった。
ヘルエスは通常勤務中に身体を休める。
基本座って何かあったら対応、十分に動き回った身体は休まった。
次の日、いよいよ本丸の貴族街への禁書狩りを決行することになる。
ヘルエスは仮眠から目覚めた。それは家ではない。他人の屋根上で初めて一夜を明かしたのだった。
「お、起きた。いける?」
「誰に言ってんのよ。」
ガイアの問いに不満気に答えるヘルエス。
先に平民の家から禁書を燃やしたのは練習であった。
他に延焼させたら賠償しなければならない流石に貴族相手の賠償額など考えたくもないから先に平民で練習というわけである。
結果的にこれは裏目となった。
禁書の厄災の噂の広まりが早かったのだ。
窓側だと問答無用、見えないと司書がやってくる。
これらの情報は確実と伝わっていき結果として外から燃やせるのは10数冊に留まったのだ。
「これ貴族と相対せ。そういうことかしら。」
「だな。」
「「……面倒だ。」」
貴族街はアスティナとかに任せるという方法もある。
その方が揉め事もなく楽だろう。
だがヘルエスはムキになっていた。
自分の得意分野で自分ができないことを見せつけられたからである。
つべこべしてる時間は無駄だと切り捨てて突撃することにした。
狐面にフードも羽織り準備万端である。
「失礼します。司書です。禁書不要論、お持ちですね?処分いたします。」
「無い、帰れ!」
これである。
しかしあることは確実、ガイアが調べをつけてある。
「虚偽だった場合業務妨害としてあなたを法的に裁かせますがよろしいでしょうか?」
強気にでる。
「無けりゃ侵入罪で賠償してもらうぞ。」
これは勝ち確定演出である。
「2階、階段から二つ目右の扉、机の中」
ガイアが入る際に家主の隙をみて伝えてくれる。
迷わず進み机を探る。
本はすぐに出てきた。
「では回収いたします。我々には隠しても無駄ですので……。ご協力感謝いたします。」
意外とすんなり回収できたことに喜ぶ2人、これならと面倒そうな家から先に片付けようと話で合致した。
やがて2人がやってきた家は2人に因縁のある家だった。
ジルファード・ゼノ・アガスティア公爵の邸宅である。




