嫁一筋なのに、ハーレムになった……。
深夜の謎テンション!
「旦那様、お願いがあります。どうか、ここにいる三人も娶ってくださいませ!」
何故!?
*****
はい。
救国の英雄、世界の守護者と呼ばれて一国のお姫様と結婚して公爵になったライン・マクドガルです。
前世はただの高校生でしたが、何の因果か異世界転生なんてものを経験して、育ての親から変な剣術叩き込まれて、世界を見てこいなんて言われて旅に出されたらあれよあれよという間に世界を救う大冒険に巻き込まれてしまったのです。
いやぁ色々ありました。
親友兼好敵手と出会って色々やらかしたり。
助けたのがお姫様でびっくりしたり。
魔界の軍勢の先兵ぶっ殺したり。
将軍クラスに負けたり。
強い仲間探して旅したり。
四天王に親友殺されて覚醒したり。
世界中を一致団結させるために頑張ったり。
四天王ブチ殺したり。
魔界に乗り込もうとして新しい四天王と戦ったり。
こっちに侵攻しようとする魔界の軍勢とこっちの軍勢が大激突したり。
その間に魔界に行って魔王をブチ殺したり。
大きな事柄だけ抜き出したが、かなり濃密な数年間だったなぁ。
まぁそれも全部終わって、一段落したから俺は最初に助けたお姫様と褒美がてら結婚して、一地方を治める公爵になった。
とにかくネームバリューやら何やらを駆使して復興の象徴として俺は存在し、実際の舵取りなど政治的なものは全て嫁である王女が差配していたりもする。
いやだって俺、そういうの無理だし。
ま、そんなこんなで俺は出来る嫁を貰って差配を任せつつ、物理的な治安維持任務のためにあちこち動き回っているってな訳で。
*****
俺が物理的に治安維持活動を終えて屋敷に戻ってきたその翌日。
愛しの嫁に話があると言われて鼻歌アンドスキップで応接室にやってきた。
入室すると、そこには愛しの嫁の他に俺の仲間たちが集合していた。
俺の嫁、サンダラス王国の姫で現リーガード公爵夫人フローリア。
金髪碧眼の美女で、王女として育ったので理知的な雰囲気が俺のハートを鷲掴みにしている。
俺の親友兼好敵手、ガイ・ザック。
俺がどちらかというと機動力重視に対してガイは防御力重視の戦士だ。
かつての旅で四天王相手に「俺に任せて先へ行け!」をやって戦死したかに思われたが、暗黒騎士もどきとして魔界の軍に単身忍び込んで破壊工作をやっていた猛者だ。
剣聖ボルドス。
俺の育ての親と一時期はバチバチに殺りあっていたということで最初は険悪だったが、戦場で共闘したら認めてくれたらしく、今では師匠の一人だ。
ボルドスの義理の娘、フェリーチェ。
戦災孤児だったがボルドスに拾われて剣術を仕込まれて、俺やガイと共に先陣を切って戦う前衛だ。
賢者ナーザリック。
魔法を極めた男として名を轟かせる御年不明のジジイ。
エロいがその力は凄まじく、四天王の魔法使いと戦う時は奴の魔法を全て相殺するという偉業を成し遂げてくれたお陰で勝てたりもする。
ナーザリックの孫娘で魔法キチに育ったグロリア。
無口無表情のロリとテンプレな奴だがその腕前は賢者お墨付きで、俺たち前衛組の突撃を的確にサポートしてくれた。
この世界の一大勢力である女神教会の教皇、サバト。
名前の通りクレイジーな爺様で、一勢力のトップのくせにフットワークが軽い。
モンクらしく鍛え上げられた肉体を維持していて、アンデット相手には無双する。
女神教の聖女、セーシェル。
ファッキン女神の愛し子で、世界最強の聖魔法を使える箱入り娘。
彼女がいたおかげでちょっとした負傷ならすぐに回復するため、俺たちは安心して敵に突撃できた。
他にも仲間はいるが、この八人は特に俺と関わりが深い人間たちだ。
嫁はもとより、他の七人は俺と共に最前線にいたわけだし。
「なんだ? 皆勢ぞろい?」
俺が入室すれば、全員の目がこっちを向く。
圧がすごいんだが?
「旦那様、こちらへ」
嫁がにこやかにソファを指し示す。
ガイは壁に寄りかかっていて、保護者組は六人掛けのテーブルセットに座っていて、嫁を含め女性陣はソファセットに座っている。
指し示されたソファに座れば、横に嫁が座って、対面に女性陣三名。
「で、どうしたの? 話って?」
嫁が淹れてくれたお茶を味わいつつ問いかける。
昨日、帰ってきたのが遅かったおかげで夫婦の時間がとれなかったから、出来れば今日はイチャイチャしたいんだが?
「はい、今日は大切なお話があります」
「なにかな?」
平静を装って聞き返すが、内心ドッキバクである。
何? 大切な話って何?
いい話? 悪い話?
「では、我々はこれで」
いやおっちゃんら、ちょい待て。
ここに来てなんで退室?
おい親友、何にこやかに退室してんの?
何しに来たお前ら。
「何? なんなの?」
嫁を見ればにこやかだし、対面の三人娘は……え、緊張してる?
ホワイ?
「旦那様、お願いがあります。どうか、ここにいる三人も娶ってくださいませ!」
何故!?
「もう、もう私は限界なのです」
なん・・・だと・・・?
「お、俺、そんな……何が」
「もう、私一人では旦那様の性欲を受け止めきれないのです!」
な、なんだってー!?
「旦那様が治安維持活動で出張する日はいいのですが、帰還した際の閨事はそれはもう言語にすることが出来ぬほどの怒涛の勢いで、次の日は私、まともに動けないのです!」
そ、そんな!
「お、俺との、その、夜のことは、不満? 嫌?」
「嫌ではないのです! 嫌ではないのです!」
お、おう。
「毎回、口付けは咥内を蹂躙されつくして、全身も嘗め尽くされて、私はもうそれだけで言語を絶する法悦を味わい尽くしているのです!」
「それだけでも大変だというのに、旦那様のモノに穿たれ続けることで私の意識はもはや正気を保っていられないのです!」
「私は今まで、王族として、戦いの後は旦那様を補佐する者として様々な知識や人脈を得るために邁進してきました。ですが、ですが! 旦那様との閨事の度に、それら全てが私の中から消えてしまいそうになるのです!」
「旦那様、分かりますか? 貴方との愛を確かめ合うための儀式の翌日は満足に動けず、ようやく復帰できたものの、旦那様から与えられた快楽によって溜め込んだ知識が薄れるどころか頭から消えてしまったかのように思い出せなくなる恐怖が!」
「嫌ではないんです! 今も旦那様の匂いによって私の身体は厚く火照っているのです! 私人として私はもう我慢できないのです! でも、公人としての私は怖いのです! 快楽に流されて馬鹿になってしまうのが!」
「ですから、旦那様が私一人を愛してくださるのは嬉しくて堪らないのですが、公のお仕事を疎かにする訳にはいかないのです。その間、旦那様を放置する訳にもいかないのです。そこらの女狐に旦那様の精を奪われるなどもっての外! ならば信のおける、それでいて旦那様をお慕いしている年頃の娘である彼女らならば安心できます!」
「なので旦那様、彼女らも娶ってくださいまし! そうすれば彼女らも、私も、旦那様だってハッピー! 皆オールハッピー!」
お、おう。
あるぇ?
どういうこと?
なに? つまり?
え? 一人じゃ大変だから人数増やすって?
しかもこの三人を?
え? この三人、俺のこと好きなの?
まじか。
「え? 三人は……どうなの?」
これもどうなの俺。
いや、この三人も美人だよ?
でもさ、俺って器用な人間じゃないから複数なんて無理よ?
「私は……剣術ばかりでお淑やかさなど無縁だった。けれど、結婚は、してみたい。だが、そこらの軟弱な男とは嫌だ。お前なら、私より強いし、剣を振るっていても文句は言わないだろうし、いいかな、と」
「僕、こんなだし。でも、君なら、守備範囲でしょ? 薄着の時に舐めまわすように見てるし。それに、君なら魔法の研究していても邪魔するどころか協力してくれるし。なら、いいかな」
「私は女神様に認められた貴方様とならば否やありません。むしろ、貴方様以外の殿方は嫌です。絶対に」
お、おう。
あれ? 俺って意外とモテてた?
「という訳で旦那様、お願いします」
「お、おう」
「良かった。ではスケジュールを組みますので!」
「え?」
「よろしく」
「え?」
「よろ」
「え?」
「よろしくお願いしますね」
「え?」
「あ、今日は私ですから。あなたたちは明日以降で」
え?