救われたかった聖女の独白
『こんな世界、滅べば良いのにと何度思っただろうか』
「聖女様、お時間です」
「わかりました」
私と同じ白を貴重とした服を着た人形が聖女と私を呼び、先導して教会の外へと私を連れ出す。
この時の私は『あぁ、またバケモノ達を見なければならないのか』と何度も思う。
廊下を歩いていくと光とバケモノ達の声が聞こえながらも外へと出ると聞こえる。
「聖女様だ!」
「聖女様を見れるとはありがたい事だ」
「聖女様」
「聖女様こちらを見てぇええ!」
『私を崇めるバケモノ達は何度見ても――
――キモチガワルイ』
そんな事を何度も思いながらもバケモノ達に作り笑顔で手を振ると歓声を上げる。
そんなモノを見ていると人形が話す。
「聖女様、馬車にお乗り下さい」
「えぇ」
私は馬車に乗り込み、目的地へと向かう。
昔はこの移動時間は好きだったが、いまは嫌いだ。
人形が目の前にいるからだ。
「…」
「…」
人形は無駄な話をしない。
教会が私を監視とお世話をするだけの存在。
そうゆう風に作られた存在を人形と言わずして、何だろか。
人形は私を監視する人形の様な目で見つめられる。
私は人形から目を離して外を見ようとするが馬車を護衛する騎士が目に入る。
「彼はもうこの世にいませんよ聖女様」
「ッ…」
「彼は裏切り者です。いい加減にお忘れ下さい」
人形の言葉は私の安らぎの思い出すら絶とうとする。
聖女という称号の鎖で無理矢理担ぎ上げられ、作り笑顔だけの私を本当の笑顔にしてくれた赤羽を付けた鎧兜を被った暖かい心を持った炎の聖騎士の思い出。
赤羽を付けた彼は平民の中でも異例の聖騎士に選ばれた青年だった。
入団当初から誰よりも民衆の信頼が厚い、騎士だった。
そんな彼は聖女の私を護衛する任を渡された。
出会った当初は人形とは、少し違うだけだと、思っていた。
けど、その考えは覆される。
彼は私を崇めるのでは無く、人として、友人の様に接してくれた。
聖女に選ばれて初めて、生きた心地がした。
彼さえいれば、バケモノや人形を見ても怖くない。
『彼さえ、いれば本当に良かった』
だが、人形の言う通り、彼はもう居ない。
教会の愚物が私の癒しという存在になった事を嫉妬して、裏切り者として祀りあげて、壊された。
私の頭の中は『絶望』で包まれた。
「聖女様、到着しました」
「えぇ」
馬車から降り、大教会へと足を進めながら思った。
『教会や民衆は救われても私は救われない』
だから、私は思う。
『滅べ』と何度も思い続ける。
『助けて』