不幸せな人々
あるところに、小さな村がありました。
その村では先祖代々自給自足の生活をしており、春は野菜、夏は魚、秋は稲、冬は獣を食べる生活をしていました。
みんな20歳ころになると、近くの幼馴染と結婚し、すぐに子供をもうけて家族団らんの生活をしています。
「私たちは幸せ者だ。ずっと一緒に居た幼馴染と結婚し、四季の移ろいを楽しみ、家族のみんなが長生きで、曾祖父から孫まで揃っている。」
彼らは自分たちの幸せを喜んでいました。
さて、そんな村に、ある時電気が通ります。これによって、人々はインターネットを使って世界中の人々と繋がることができるようになりました。
彼らは目の当たりにします。キラキラと輝くショウウィンドウ、美味しそうに焼肉を食べる人々、かっこいいスポーツカー、見たこともないほど美しいモデル。
彼らは画面に食いついてため息をついた後呟きました。
「この村には何もない。こんなに美人な女性も、夏にアイスを食べる機会も、夜まで明るいライトをつけて開催されるパーティーも、何もない。ああ、私たちはなんて貧しくて田舎者で恥ずかしい存在だろう」
一方で都会の人々は、最近テレビで注目されているインターネットに触れたばかりの未開の村の人々の映像を見ていました。
便利な道具に囲まれて、異性や友達との交流もそこそこあり、休日はどこかに遊びに行くような、何も変わらないけれど穏やかな日々に満足していました。
しかし、村の様子をテレビで見ながら、ノスタルジックな気持ちになって呟きました。
「あの村が羨ましい。小さなころから一緒だった幼馴染と結婚し、家族みんなで暮らし、自給自足の生活をしている。春は花を楽しみ、夏は水を浴び、秋は月を眺めて、冬は満天の星を探す。」
「それに比べて、こっちは孤独で、本心を語り合える恋人もおらず、仕事場と家を往復し、残業の夜景を見たくないから俯いたままだ。ああ、私たちはなんて不幸なんだろう」