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宮原少年の怪奇譚 ~桜無垢の巫女~  作者: 北森青乃
第3章 渦巻く思惑
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一緒に向かうべき道

読んで頂きありがとうございます!

 


「えっ……とっ、とと…………透也君!」


 おれの声に気付いたのか、真白はおれの顔をじっと見つめると、驚いた様な声を上げる。顔や声で真白本人に間違いはない。けど、再会を喜ぶ間もなく耳に響いた大きな声に、


 ちょ、声大きいって真白!


「しっ、しー!」


 慌てて人差し指を口の前へ持っていくと、呟くように声を漏らす。するとそんな仕草を理解したのか、


「はっ! ごめんごめん」


 焦るように手のひらで口を押える真白。そんな状態でしばらくお互いを見つめ合う内に……


「ふっ……」

「ふふ……」


 どちらからともなく、含むような笑いが零れた。何て事ない行動。でもそれは頭の中に残ってた、


『もう……放って置いて!』


 そんなセリフと共に不安に駆られていた彼女の姿を……消し去るのは十分だった。


「無事で……良かった」


 無意識に口に出ていた言葉。それはどんなに驚いたとしても、あの場に真白を残して行ってしまった罪悪感からだったのかもしれない。けど紛れもなく本心でもあった。


「透也くんも、無事で良かったぁ」


 そう言って真白が見せた笑顔。その表情におれは改めて……感じる。


 また会えて、良かった……と。


 とりあえず、また会えたのは良かった。てか、真白が普通? って言ったらおかしいかもしれないけど……出会った時と同じ様子に戻ってるのが何より嬉しいな。ん? でもなんで……てか、佐一は……


「はっ! そうだ、こんな事してる場合じゃないよ? ねぇねぇ透也くん」

「っ!」


 そんな疑問が頭に過る中、またしても耳に入る突然の声。そしてそれと同時に、勢いよく近付いて来る真白に、


 うっ、うお! どうしたんだいきなり? しかもっ!


 おれは一歩も動けなかった。

 しかし当の本人は全く意に関していないようで……


「ねぇ透也くん! 男の人! 男の人来なかった?」


 もう少しで真白が当たりそうなくらいの急接近に、ある意味緊張して仕方がない。


「透也くん? 聞いてる?」


 ちょっと身長差はあるけど……この距離はヤバくないか? ってダメだ。ちゃんと話しないと、気付かれるっ! えっとなんだっけ? ……あっ、男の人! 男の人の話だ。


「きっ、聞いてるよ。男の人だろ?」

「うん! 透也くんが言ってた……袋を被った人!」

「袋!?」


 その単語が耳に入った瞬間、自分でも不思議なくらいに心臓の鼓動が落ち着いていく。

 時間が繰り返される前、御神殿から出来た人物。自分が目にしたその人物は間違いなく着物を着て、頭には麻袋の様なモノを被っていた。


 袋って……もしかしておれが見た奴か? あの御神殿から出てきた……でもあの時、真白はその姿を見ていない。しかもなんで真白はそいつが……()だってわかってるんだ?


「そう! それとわたし、わかったの! 儀式邪魔した人!」

「えっ!?」


「この目で聞いたの! それも本人から……」


 まっ、待て待て待て! いきなり情報量が多くてついて行けないぞ? とりあえず……


「真白?」

「えっ!?」


「その……おれも話したい事がある。でもここじゃぁあれだ。いくら村の人が家に居るからって万が一って事もあるだろ? だから……」


 どっかに隠れて、ゆっくり話を聞くのが先決だ。


「あっ、ごめん」

「良いって。だから……こっち!」


 おれの言葉に少し落ち着きを取り戻した真白。そんな彼女と一緒に向かった先は、御神殿の横の辺りだった。木々が立ち並ぶその場所は、身を隠すのにはまさにうってつけ。


 よっと、ここだったら村から見上げられても見えないだろ。じゃあ詳しく話聞こうかな?


「それで? 真白。邪魔した人がわかったって言ってたけど……」

「うん。あのね? 透也君……さっきは色々興奮しちゃってて忘れてた。けど、まずはこれを口にしないといけなかったんだよね」


 ん?


「……ごめんなさい。わたし透也君に酷いこと言っちゃった。どれだけ傷付くのか、透也君居なくなってから気付いて……本当にごめんなさい」


 そう言って、深々と頭を下げる真白。もちろんそれはさっき……耶千さんに襲われた時の話で間違いはない。むしろそれしか心当たりがなかった。


 ごめんなさいか……確かに放っておいてとか言われた時は驚いたし、多少は傷付いたよ? でも、今考えるとさ? おれ真白の事知らなかった。ここに来るまでにどんな心情だったのかもさ? 今だって正直、あの話されたらどんな反応して良いのかわからないよ。それでも……


「何言ってんだよ、俺の方こそごめん。真白の気持ちなんて全然考えないで、勝手に連れ回しちゃって」


 真白が笑顔見せてくれたのが嬉しい。無事で居てくれたことが嬉しい。


「そっ、そんな事ないよ! 私は……透也君に出会えてよかった。常に私を引っ張てくれて……それだけで嬉しかった。知らない場所に1人で居て不安だった私を助けてくれたんだよ? だからこそ……あんなこと言った自分が許せなくて……後悔して……」


 助けたって……ちょっと恥ずかしいな。でもさ、そういう意味ではおれも同じだよ。気絶して目が覚めた時……真白が居た時の安心感と言ったらさ? 


「真白? おれだって真白に助けられたんだぞ? 目が覚めた時、真白が居てくれて安心した」

「えっ……」


「だってそうだろ? こんな可愛い子が目の先に居たんだ。嬉しかったし、夢かと思ったよ」

「かっ、可愛いって! もっ、もう! 透也君? 真面目な話してるのにぃ」


「真面目だよ? それに本音だよ? だから、お互い様なんだよ」

「とっ、透也君……」


 だからさ、もう忘れちゃったよ。それに大事なのは……今だろ?


「それにさ? ここまで来てくれたって事は、真白もおれと同じ考えなんだろ?」

「……同じ……だよ?」


「「儀式を成功させる」」


 だったらそれだけで十分。2人でなら……絶対大丈夫! だから……


「じゃあ、教えて? 真白が見た事聞いた事。そんでさ? 絶対……」


「儀式成功させよう!」

「うっ、うん!」



 もう二度と、あんな顔にはさせない。



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