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お母さん! ヴァ二アルの国とは

「うう... ...。命だけは... ...」


 俺と会話していた時はとんでもない強者面していたくせに忍者たちは半ベソを搔きながら許しを請う。


「... ...どうする? 花島?」


「え? あ、うーん」


 どうするもこうするも別にヴァ二アルが無事に帰ってきたからどうでもいいんだけどな... ...。

 何か、国王補佐っぽいこと言った方がいいのか?

 そもそも、国王補佐っぽいことって何だ?

 解決案を模索していると眠っていた姫が起き出してきた。


「う・う~ん。もう、そんなに穀物ばかり食べられないよ... ...。トホホ」


 寝言でトホホっいうやつ初めて見たわ。


「おい! ヴァ二アル! 起きろ!」


 こんな状況にも関わらず、熟睡しているヴァ二アルに苛立ちを覚えて俺は一発、ヴァ二アルの頬を叩く。


「___いたっ! 何!?」


「なに!? じゃねえ! みんなお前を心配してたんだぞ!」


「心配?? どうして??」


「仲間だからだろ!」


 と某海賊王のように雄弁な台詞を言って信頼を得ようとしたのだが、生憎、麦わら帽子を忘れてしまい意味が伝わらなかったようで「いや、そうじゃなくて」と冷静に返答されてしまった。


「______あ! 才蔵に天音に伊達にトムじゃないか!」


 ホワイトの胸に抱かれていたヴァ二アルは忍者たちを発見し、そちらに歩み寄った。

 急に名前を呼ばれた忍者たちは困惑した様子で。


「ど・どうして我らの名を??」


「え? どうしてって... ...。あっ!」


 そこでヴァ二アルは自身の性別が変わった事に気が付き、胸の谷間をモソモソとし、何かを取りだそうとしている。

 俺もその動作に自然と釣られ、ヴァ二アルの胸を覗き込むと。


「花島。今、そういう場面じゃないから」


 とホワイトに真面目なトーンで釘を刺される。

 まあ、俺にはそういう空気とか関係ないから聞こえないふりをして谷間を見続けた。


「あった! これ!」


 谷間から何やら青い宝石のようなものを取り出し、忍者たちに見せる。


「そ・それは!? ヴァ二アル家の!? ま・まさか!?」


 忍者たちは一様に驚きを隠せない様子。

 まあ、無理もない性別が変われば誰でも驚く。


「そうだ。僕がヴァ二アル・パスだ。信じて貰えないかもしれないが今は訳あって美少年から美少女に変身中だ」


 こいつ、自分の評価高いな... ...。

 まあ、間違いじゃない所が悔しいが... ...。


 そう言われても信じられないのだろう。

 これだけ魔法がどうの、能力がどうのと言われている世界でも性別が変わるのは特異。


「あの... ...。では、質問させてください」

 

 忍者の一人がそう切り出し、各々、ヴァ二アルだけが知っているようなことを質問していく。


「パス様の好きな食べ物は?」


「米」


「... ...正解」


「飼っている犬の名前は?」


「チキチータ」


「... ...正解」


 なにこの暗証番号忘れた時用みたいな質問。

 こっちは作業がまだ残ってるんだから早く終わらして欲しいんだけど。

 ... ...あ。そうか。こいつらに俺のテレパシーで一連の出来事の映像を送ればいんじゃね?

 と効率的な閃きをする。


「座右の銘は?」


「先手必勝」


「ちょいちょい! 聞け! 忍者たち!」


 二人の会話に割って入る俺。

 すかさず忍者の一人から「忍者じゃねえ! 武士だ!」とツッコミが入るが「紛らわしい格好しているお前らが悪い!」と一蹴。

 形勢逆転した俺はいつになく強気だった。


「今から俺の能力『テレパシー』でこいつに起きた事をお前らの頭の中に直接伝える! それで理解しろ!」


 と一方的に宣言し、頭の中で一連の出来事を整理。

 そして、まあ、こんなもんかと編集作業を終了し、彼等の頭に直接イメージを送ると... ...。


「うわあ! 兄者! 何か頭の中に映像が!!!!」

「なんだこれは!? バケモノの仕業か!?」

「だ・ダメだ... ...。俺、吐きそう... ...」

「俺も... ...」


 何故か四人中二人が早々に吐き気を催す異常事態に見舞われる。

 そんな、変な映像送ったつもりが... ...。あっ。


「花島? 一体、何の映像送ったの?」


 とホワイトが心配そうに尋ねてきて。


「間違えて俺がゴーレム幼女の家で居候してた時に食ってた物の映像も入れちまったかもしれない」


「えー。一体、どんなもの食べてたの... ...」


「うーん。味は問題なかったんだけど少し不気味なモンスターを少々」


「そ・そう... ...。間違えてもあたしにはその映像見せないでね」


「う・うん」


 ◇ ◇ ◇


 映像を見終わった忍者たちは一様に肩で息をし、疲弊していた。

 精神力が弱い忍者の一人は気を失うほど。

 その光景を見ながらゴーレム幼女はホワイトの肩の上でよく分からない生物を干し肉にしたビーフジャーキーのようなものをお菓子代わりに頬張る。


「はあはあ... ...。国が違えばこれだけ食事も違うのか... ...」


「兄者... ...。私、外の世界では暮らしていけそうにありません」


「... ...俺も」


 何か俺とゴーレム幼女がむしゃむしゃしてたものがこの国の主食のように勘違いされてしまった。

 これが国際交流の場だったら、こいつらの国の人は俺達の国に来るということは二度とあるまい。

 おもてなしという行為が案外難しいことを痛感させられた。


「まあ、食べ物の事はともかく、これで状況が掴めたか??」


「あ、ああ。まさか、この国に魔女がいたとは思わなかった」


 魔女... ...。

 彼らはその言葉を聞いて顔を曇らせ、魔女の話をして発狂した忍者からは殺気のようなものを感じ取った。


「ま・まあ... ...。その魔女は俺たちが知っている魔女とはどうやら違う。殺戮を楽しむというような個体でもなさそうだ... ...」


 ほう... ...。

 魔女でも色んな奴がいて、誰でもかれでも迫害に遭う訳ではなさそうだ。

 どうやら、こいつは一般的な倫理観も持ち合わせているようだな。


「それで、みんな、こんな所までどうしたの?? 僕はまだ国には帰らないからね!」


 と先手を打たれる前にヴァ二アルから宣言。

 まあ、追手が来たということは連れ戻すというイベントが適当なのだろう。


「まあまあ、お前らも長旅で疲れたろ! とりあえず、俺たちの国で一休みしていったらどうだ? ここは危険な生物が沢山いるし!」


 俺は大人の対応をした。

 先程、こちらに敵意を見せた連中を国に招くと言ったのだ。

 当然、感謝されると思っていたのだが忍者たちからは意外な言葉が返ってきた。


「そんな悠長な事を言ってられるか! 国王陛下が今、大変な事になっているにも関わらず!!!」


「え... ...。パパがどうかしたの??」


 うわっ。声でか... ...。

 ヴァ二アルを見ると見るからに動揺している様子だった。

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