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お母さん! ペット生活は快適です!

 □ □ □



 ゴーレム幼女様との生活は約一か月が経過していた。

 もっと奴隷のような扱いを受けると想像していたが全く違い、ここでの生活は快適そのもの。

 むしろ、実家にいるような心地良さすら感じていた。


 昼はゴーレム幼女様が食料などを調達しに行き、陽が沈んだ頃に帰宅。

 その間、俺は家で何もしていない訳ではない。

 色々と異世界から出るための方法を考えていたり、座禅を組み、精神統一を行い異世界という未知の世界に自身が呑み込まれないように精神強化を努めている。

 瞑想が終わると家の掃除や洗濯、夜は食事の準備などをし、休む暇がないが充実した生活だ。

 

 人によっては俺の事を「お前、ただのヒモニートじゃん」と揶揄してくると思うが、俺は言わば、遭難者に近い位置づけであり、本当は保護されるべき存在。

 このように知らない地で、かつ、異世界の住人と過ごしている事をむしろ称賛すべきなのだ。

 だが、「もしかしたら、俺、ヒモニートなのかも... ...」と一抹の不安を抱いた俺はゴーレム幼女様に聞いてみる事にした。


「ゴーレム幼女様。あの、ヒモって知ってますか?」


 ゴーレム幼女様は近くにあった麻紐を両手で掴み、綾取りのように両手で広げて満面の笑みで俺に見せてきた。


「じゃあ、ニートって知ってますか?」


 ゴーレム幼女様は台所まで歩き、食品庫からドリアンのような形をした謎の果物を取り出し、満面の笑みで頭の上に掲げる。


「では、ヒモニートって知ってますか?」


 ゴーレム幼女様は謎の果物に紐を巻き付け、俺に手渡した。


「でしょうね... ...」


 この世界には「ヒモニート」という言葉・存在しない事が分かった。

 結論、俺はヒモニートではないので今のままの生活を続けていても後ろ指をさされる事はない。

 安心感を得た俺は、ゴーレム幼女様との生活を一生続けるのも悪くないかな。

 と頭の中で考えていた。


 ______だが、その悠々自適な生活も突然、終焉を迎える。


「花島! 洗濯物と掃除やっておくみそ!」


「うん。わかってるよ」


「やってなかったらご飯抜きみそ!」


「うん」


 一か月も経った頃には場慣れした俺は既にゴーレム幼女様にふてぶてしい態度を取るようになっていた。

 前まで、ゴーレム幼女様が狩りに出かける時はお見送りをしていたのに、今ではTVを見ている休日のお父さんのように後ろを向き、素っ気ない返事を返すのみ。

 

 また、ゴーレム幼女様はタメ口を聞いたり、無礼な事を言っても特に怒る事がない。

 これはあくまで推測だが、ゴーレムという種族には敬語もなければ、相手を敬うという行為がない。

 なので、俺が無礼な態度を取ってもゴーレム幼女様は自身がバカにされているという認識がないのだろう。

 

 じゃあ、ゴーレム幼女様はアホっぽいし敬語使わなくていいや。

 一応、俺の飼い主だから~様と付けておくか。

 と自分の中での線引きが確立され、どんどん、俺はワガママになっていった。


 □ □ □


 いつも通り、俺は室内で瞑想し、疲れていたのか、そのまま寝てしまった。

 そして、帰宅したゴーレム幼女様に足で蹴られ、起床。

 眠気眼を擦りながら見上げると、顔を真っ赤にして、怒り心頭の様子のゴーレム幼女様がダメなペットをしっ責するように声を荒げた。


「おい! 花島! 掃除と洗濯やっておけって言ったみそ!」


「あ? 今、やろうと思ってたんだけど」


 俺は寝起きを起こされた事と日頃から蓄積していたゴーレム幼女様への不満が爆発し、初めて反抗心を向ける。


「決まりではあたしが帰って来る前に終わらせる約束だみそ!」


「別に帰ってくる前でも後でもどっちでも良くね?」


「良くないみそ!」


 まるで、母親のように俺をしかるゴーレム幼女様。

 俺は27歳で立派な大人だ。

 年は俺よりも上からもしれないけど、見た目が幼女の奴に怒られたくはない。


「... ...うぜえ」


 むくっと立ち上がり、家のドアノブを捻り、外に出る。


「おい! 花島! どこに行くみそ!?」


「... ...」


「おい! 言うこと聞け!」


「... ...」


 小さくなるゴーレム幼女様の声。

 変なプライドが先行した俺は遂に家出をしてしまった。

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