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お母さん! 異世界での国造り

 

 □ □ □


 ゴーレムマンション奪還、魔法少女達との戦闘、そして、セバスの死から早一か月が経った。

 ホワイトシーフ王国はホワイト達巨人族の力やゴーレム幼女の尽力によって道が作られ、ある程度の家々も完成しつつあり、国としての外観を取り戻して来ている。


 戦いの後、自分達の行いを知った魔法少女達は自身を責め、自分達の住んでいた森に戻ってしまった。

 連れ戻そうと何度か足を運んだのだが、ゴーレム幼女の声にも俺の声にも応える事がなく、彼女たちの心の傷が癒えるまで大分時間がかかりそうだ... ...。


「花島様! 花島様!」


 木々の合間を抜けて木漏れ日が降り注ぐ森の中をホワイトシーフ王国の兵士が俺の名前を呼びながら駆けてくる。

 やれやれ、やっと、セバスの墓前に花を手向ける事が出来たと思ったらゆっくりする事も出来ないな... ...。


「なに!? どうしたの!?」


「あの! ゴーレム幼女様が今、公民館を作っていてそれの屋根の納まりが分からん! 花島を呼んでこいみそ! とお怒りでして... ...」


 若い兵士の顔を見ると右頬が赤くなっており、小さな手の痕が... ...。

 ああ。

 こいつも色々苦労してんな。

 と若い兵士を労うように肩をポンと叩いた。


「じゃあ、帰るとするか。腹も減ったしな」


「あ、はい!」


 セバスがいなくなった後、シルフを補佐する人物が王宮内にいなかったので済し崩し的に近くにいた俺が急遽、その役につく事となった。


 流石に執事という役職で呼ばれるのには抵抗があったので”国王補佐”という立ち位置であれば良いよ。

 と言って了承。


 そんな俺は上手くやれているのだろうか?

 セバスにそれを聞こうとしても返答はない。

 しかし、心なしか背中を押してくれているような気がして、帰路につく中、一度も後ろを振り返る事は無かった。


 □ □ □


 街に着くと同時に頬に鈍痛が走る。

 目の前には頭から湯気が出るほどに怒りが心頭している金髪の幼女の姿をした獅子が腰に手を当て、唾を周囲にまき散らしながら俺に罵声を浴びせる。


「花島! 忙しいのに油売ってるんじゃないみそ! 顔面も油でベトベトしてるし、お前は油屋さんか!」


「いや、油屋さんじゃないし... ...」


「口答えばかりするなみそ!」


 そう言ってゴーレム幼女は幼女とは思えないような重たい右ストレートを腹に打ち込む。

 それも腕に回転を加えてだ。

 見る人が見たら「おめえさん、拳闘やらねえか?」とスカウトされるレベルだ。


「_________ごふっ!」


 あかん。

 これ以上、腹に打たれたらゲボ吐いちゃう... ...。


「____ゴーレムちゃん! あっちの方が人手不足みたい! 手伝いに行ってあげて!」


 ドスドスと地鳴りを響かせながら、ホワイトが近付いてきた。

 ほっ。

 良かった。

 これで、もう、殴られずに済む... ...。


「分かったみそ! 花島! 私が見てなくてもちゃんとやるみそよ!」


「分かってるよ!」


 渇を入れ、ゴーレム幼女はトテトテと町の奥の方に駆けて行った。


「花島? 大丈夫?」


「ああ。なんとかな。いつもすまんなホワイト。助かるよ... ...」


 最近、ゴーレム幼女が俺に異常に厳しい。

 この前も昼前に早弁をしたら顔をグーで殴られたし、作業が終わったから木陰で昼寝していただけで顔面に泥を投げつけられた。

 見ようによってはオッサンが幼女に虐められているようにも見え、俺が非常に危ない性癖の持ち主だと勘違いされる。

 現に兵士の一人に「花島さん。いいっすねぇ」と声を掛けられた事もある。

 

 王国復興の責任を任せられ、躍起になるのも分かるがあまりにもスパルタ。

 平成生まれの俺にしてみればチョコチョコ休憩も欲しいし、何よりもしかるよりも褒めて伸ばして貰いたい。

 まあ、それを本人に言ったらまた殴られるから言いませんけど!


「花島。そういえば、シルフ様の体調はどう?」


 ホワイトがくもり空のような表情で尋ねる。


「うーん。体調は悪くなさそうなんだけどね。ほら、精神的にまいっちゃってるから」


「... ...そうだよね。家族のように慕ってた人がいなくなっちゃったんだから」


 ホワイトは目に涙をためながらシルフに同情の言葉を述べる。

 俺は結局、魔法少女達を洗脳し、ゴーレムマンションを支配しようとしていた黒幕がセバスだとは誰にも言っていない。

 皆にはセバスが命を犠牲にし、ハンヌを倒したと嘘を付いた。


 セバスの洗脳により、意識が繋がり、セバスの記憶を垣間見てしまったのでどうも彼を犯罪者にしてしまうのは憚られたからだ。

 ホワイトや国の住人たちは俺の言った事を信じているようだが、シルフとゴーレム幼女は懐疑的。

 シルフは兎も角、ゴーレム幼女には事の真相を伝えるべきか... ...。


「花島さん! 花島さん!」


 これからの動向を模索していると兵士が俺の名を呼びながら駆けてくる。

 なんだ? 

 また、厄介事か?

 もう、ゴーレム幼女に殴られるのは嫌だから仕事に取り掛かりたいんだけど。


「はあ... ...。はあ... ...。疲れた」


「何? 俺、もう、殴られるの嫌だから行きたくないよ!」


「いえ! そうではなくて!」


「そうではない? じゃあ、何? エロ本でも発見したの?」


「エロ本という物は存じませんが、西の門に他国の者が現れたらしく... ...。いかがなさいましょうか?」


 他国の者?

 そういえば、この国は百年もの間、日本でいう鎖国状態で近隣諸国と関わっていなかったな... ...。

 兵士が取り乱すのも納得か... ...。


 まあ、国を復興・発展させるには外交を行うのは考えていたこと。

 相手がどんな奴か知らないが良いきっかけだ。

 会ってみるか。


「よし。じゃあ、俺が話をつけよう」


 俺は国で一番強い兵士のように意気揚々と西の門まで歩を進めた。

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