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お母さん! みんなを裏切りました

【ゴーレムマンション内部・螺旋階段】


 交わる事のない階段を下っていくと吹き抜けになっている空間からゴーレム幼女と白髪の幼子が戦っている音が辺りに響く。

 ゴーレム幼女に申し訳ないと思いつつも俺の足は出口へと向かう。


『見損なったよ!!! あんた! あの子達を一緒に救うって言ってくれたよね?!』


「... ...」


『そんなに自分の命が大切なのかい!? 死ぬ覚悟もない奴が一瞬でも牙を見せるな!!! 初めから首を突っ込むな!!!』


「... ...」


 リズの叫びに何も言えない。

 リズは間違ってなくて、俺は間違っている。

 そんなの誰から見ても明白だからだ。


 俺だって命を賭けて大切なものを守りたい。

 でも、皆が望むような強い奴でも伝説の勇者でもない。

 ただの人間。花島つとむ27歳。

 平凡な男で何も掴む事が出来なかった男。

 ずっと、何かを途中で諦めてきた。

 頑張っても俺には出来ない。

 頑張る事がカッコ悪い。

 それを達成した所で金にならない。

 27年間で身に着けたのは体の良い言い訳を並べるスキルだった。


 何も変わらん。

 現実の世界でもこの異界の地でも俺は俺だ。

 27年も生きると腐った性根は変える事が出来ない。

 コンビニとかでよく居るだろう? 

 下らない事に目くじらを立てて店員を怒鳴り散らすご老体を。

 将来の俺は恐らく”あれ”になる。

 だから、あいつらを卑下することは出来ない。

 将来の自分が分かっているというのは悲しい事だが、将来の不安を考えないという事で少し安心もする。


 リズはもう何も言わない。

 愛想を尽かしたのは明白だった。

 そう... ...。

 もういい。放っておいてくれ。

 もう、誰とも関わりたくない。


 螺旋階段を降りるた先には光が見え、出口がそこにあることを教えてくれる。

 上を見ると光が差し込み、円柱状に広がる空間は天国に繋がるエレベーターのようにも見える。

 

「... ...さよなら、みんな。そして、ごめん」


 そう言い残し、一人、ゴーレムマンションを逃げるように出た。

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