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お母さん! 大丈夫オジサンを追っています!

 大丈夫おじさんの小さな足跡を追って山の奥に入る。

 くそ! どんどんと雪が深くなってきやがる。

 足が取られて中々、進めない。


 蟹股になり、膝まで迫る雪を払いながら前に進む。

 大丈夫おじさんは身体が軽いのか、雪の沈み込みは浅いようだ。


「だ・大丈夫か?」


「うお!」


 俺を心配して、後を追ってきたホワイトの兄に後ろから幼児を抱きかかえるように持ち上げられた。

 普段なら幼児のように扱われて、イラッとするのだが今回は助かった。


「も・森の奥は、あ・危ない」


「いや、それは分かる。でも、何か行かなきゃいけない気がするんだ」


「... ...」


「ダメだよ! 危ないって! あれの正体だって分かってないんだから!」


 あれ? あれとは何だ?

 まあ、行ってみれば分かることか... ...。


 ホワイトの兄は俺の気持ちを察してくれたのか、ホワイトの言葉を無視して、俺を肩に乗せ、森の奥に歩みを進めた。

 

「もう~! 何があっても知らないんだからね!」


 ホワイトも寂しいのか、俺達の後をついてくる。


 カサッと樹が揺れる音がして、その方向を見るが、何もいなかった。



  □ □ □



「ピッピッピッ... ...」

 先程から森の奥に進むにつれ、聞こえてきた機械音が大きくなる。

 この世界では聞いた事がないような音だ。

 

「花島? さっきから聞こえる、この音は何?」


「分からん。ただ、進むしかない」


「戻ってもいいんじゃない? まず、大丈夫おじさんって誰?」


「ん? 小声で「大丈夫」って言うおっさん」


「え? 何それ? 帰りたいんだけど... ...」


 ホワイトは、あきれ顔を見せるが、俺とホワイトの兄がドンドン進んでいくので後をついてきた。

 巨人の足の膝くらいまで雪がきているので、俺が実際に歩いたらすっぽりと雪に全身が隠れてしまっていただろう。


「お・おい! あ・あれ!」


 ホワイトの兄が取り乱した様子で、進行方向を指す。

 そこには大きな氷柱があり、どうやら、機械音はそこからするようだ。

 

「おー。これ、カキ氷作ったら何杯分だ?」


 練乳とイチゴシロップ持ってくれば良かった... ...。

 しかし、デカイ塊だな。

 巨人の背丈より少し大きいくらいだから、4mくらいか。

 コンコンと叩くが反応無し。


「これ、自然で出来たには不自然だよな?」


「もしかしたら、上級者魔導士が置いて行った魔道具かも... ...」


 魔道具。恐らく、魔法少女や婆が持っていた、ステッキのようなものだろう。

 

「ホワイトの兄。これ、成分調べられないか?」


「あ・うん。や・やってみる」


 ホワイトの兄は舌を出して、氷の塊をペロペロと舐めている。


「ん... ...。はああああ... ...]


 え? いや、何その声?

 すごい気持ち悪いんだけど... ...。

 さっき、泥食ってた時、そんな、声出さなかったじゃん。


 ホワイトを見ると、そんな兄の様子を見たくないのか、あからさまに視線を外していた。

 そういえば、大丈夫おじさんの足跡、ここで消えてる。

 この辺にいるのか?


「グルルルル... ...」


 どこからか、獣の声がする。

 木の上を見ると、一匹の狼が大丈夫おじさんを咥えた状態でこちらに威嚇をしている。


「だ・大丈夫おじさん!!!」


 大丈夫おじさんは小声で「あかん... ...」と言っている。

 そうだね! 大丈夫! って言ってる状況じゃないもんね!


「はああああ... ...」


 横を見ると、ホワイトの兄はカブトムシが樹液を吸うように、未だに氷の塊を舐めている。

 ホワイトもそっぽを向いたままだ。

 

「ガー!!!」


 木の上に乗っていた狼は木から飛び降り、俺を襲おうとしてきた。

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