第七話 オニキスちゃん真面目に戦う
今回も過激な表現があります。
苦手な方はお気をつけ下さい。
あとゲスがゲスな妄想します。これも不快な方は気をつけて下さい。
7
夕暮れ時のスラム街を場違いな服装をした少女が走っていた。
短く切りそろえられているがサラサラと柔らかそうな金髪。
血色もよく整った顔立ちに
法衣のようなデザインの綺麗な学生服。
どう見てもスラム街に暮らしているタイプの人間ではない。
「お嬢ちゃん、そんなに急いでどこいくんでちゅかぁ?」
「おいおい赤ちゃん言葉はねぇだろ。うへへ、嬢ちゃん銀貨5枚で一発どうよ?」
幸いにもスラムの男たちは少女に注目してはいるものの、
野次を飛ばしてくるだけで積極的に絡んできたりはしてこない。
しかし、幸いだったのは少女ではない、スラムの男たちの方である。
今の彼女に迂闊に絡んでいたら、
時間をかけないよう全力を持って排除しようとする彼女によって、
逆にスラムの住人が大怪我をしていたことだろう。
普段の彼女ならば絶対にしないことだ。
それだけ今の彼女には余裕がなかった。
――あれは危険だ。
彼女、リーベ=グリュックは自身が優秀な治癒魔道士であると自覚していた。
治癒術士とはいえ彼女がその気になれば攻撃魔法も中級以上のものを行使できる。
それ故、大概の障害や魔物など撥ね退けられる自信はある。
普段おっとり間延びした喋り方をする彼女ではあるが、
その能力はSクラスの中でも上位に入るほどなのだ。
しかし、そんな彼女にとっても、
先程見たスクデビアと呼ばれる男の変化は異常であった。
その身から溢れ出ていた魔力は悍ましく、感じたこともない膨大な魔力量を誇っており、
彼女がどう戦い方を工夫したとしても時間稼ぎすらままならないことが即座に理解できた。
だからこそ、彼女はシャマの言葉に素直に従った。
あの二人であれば、防御に徹すれば時間稼ぎぐらいは出来るかもしれない。
それでも彼女たちですら危険過ぎる相手であることは間違いない。
下手に残って足を引っ張るくらいなら急いで救援を呼んでこなくてはいけない。
――それでも、彼女たちを置いて逃げるのは、
身を引き裂かれるような思いだった。
まだ知り合って間もないが、彼女たちはこんな自分を助けるためにこんなところまで来てくれたのだ。
いっそ残ってこの身を肉壁にでも出来ればとすら思った。
しかし、きっと彼女たちはそんな愚かなことはさせてはくれない。
そんな自分を庇って隙きを見せてしまうだろう。
そんな事は死ぬより嫌だ。
「――オニキスさん、シャマちゃん、どうかご無事で。」
涙をこらえ、そう強く祈りながら彼女はスラムを全力で走り抜けていった。
その背後からは小さなコウモリがリーベの後ろ姿をながめていた。
――――――
――スラム街の奥。かつて教会であった廃墟。
廃棄され、無人であるはずのこの建物から轟音が響き渡った。
壁が吹き飛び、屋根が崩壊する。
建物の中には3メートルほどの大きさの魔物と、
このような修羅場には似つかわない美少女が二人。
「シャマさん、魔法は使えそうですか?」
「んー、シャマもダメみたいですね。これは近接攻撃で何とかするか、
対魔法絶対防御結界が切れるのを待つしか無いですねー。」
「近接と言いますけど。私が斬りつけた腕がもう生えているみたいですね。
あれを刀で殺し切るのは些か面倒臭いですよ?」
素早い動きで腕を振り回すスクデビアの攻撃を躱しながら、
どこか緊張感の無い会話をする二人。
「まぁリーベさんが戻ってくるまでしばらく時間はありますから色々試してみますか。」
「それではシャマは外から人が来ないか見張ってますのでお好きなだけ暴れてみて下さい。」
そう言うとシャマは気を失っているチンピラを片っ端からつかみ勢い良く外に投げ飛ばしていく。
……たまに少し壁にぶつかり、キリモミ状に外に飛んでいっている。
一応目をさましている者はいないようだが、あれは死んでいるのではないだろうか……?
と、そんなことを気にしている余裕はない。
スクデビアは禍々しいオーラを纏いながら高速で接近し、
そのまま大ぶりに腕を振り回す攻撃を仕掛けてきている。
理性は完全に失っているようで、言語の類は一切発していない。
とりあえずセオリーどおりに攻めてみよう。
攻撃に合わせ居合にてカウンター気味にスクデビアの腱を切断していく。
ズズゥン
どうやら体の作りは生き物のそれに近いようで腱を切断されれば行動不能にはなるらしい。
両手両足の腱を斬られたスクデビアは起き上がることも出来ずに地面に突っ伏した。
このまま縛って学園に持っていったほうが良いか……。
そうオニキスが考え始めた時、突然の変化が始まった。
切断されたはずの傷跡がボコボコと泡のように膨らんでいく。
膨らみが収まったその両手両足はもとより歪にはなっていたが、
その能力は完全に復活していた。
「うわぁ、凄く面倒くさいです……。」
「オニキスちゃんふぁいとーふぁいとー。」
抑揚のないエールが聞こえる。
凄い、応援されてるのにどんどんモチベーションが下がっていく。
だが、この状況はあまり良くない。
少なくとも魔法すら使えないというのは非常に不利だ。
単純な事しかしてこないので攻撃を躱すのは容易いが、
こちらもダメージを与えられてる手応えはない。
「仕方ないですね、無力化するのは諦めましょう。」
流石に元が同級生とあって命まではと思っていたが、思った以上に危険な相手であるらしい。
コイツを放置するのは危険過ぎる。
攻撃を躱し、すれ違いざまに心臓があったであろう位置を突く。
深くめり込みはするが出血はない。
そのまま取り込まれぬように素早く引き抜き、返す刃で頭部を切断する。
が、即座に泡が頭部と胸部を覆い修復されていく。
修復後はやはり歪ではあるが機能は復活するようだ。
「うう、気持ちが悪い……。」
切断前はまだ、中央に口があるとは言えスクデビアの面影を残していたが、
復活した頭部は人間の頭蓋骨に汚物を覆ったような顔になっていた。
中央の口は無くなったが顎が大きく開いている。
しかも手足に関しては、変化前より動きが良い。
「あ、ァ、あ。オニギズゥまデぃィィぃぃいィ!」
「ッ喋った、これは……!?」
シャマの方を見る。
シャマはオニキスの目を見つめ頷いた。
「いまのはシャマの声ではありません。」
「わかってますよ!?」
損傷を修復すると同時にその箇所の強化を行う?
人間をこのような生き物に変化させる石、異常過ぎる。
しかもそれは脳にまで及ぶというのか?
今度は腱ではなく腕を根本から切断する。
即座に大量の泡が発生し、その傷口を覆っていく。
「な!?」
修復された肩口からは二本の腕が生えていた。
さらに少し考える素振りをしたスクデビアは、
その腕で自らの両足をもぎ取りそのまま口に運び咀嚼する。
「これは、信じられませんね……。」
生命力が強いなどというレベルの話ではなかった。
コイツはいま、目の前で進化をしてみせたようなものだ。
もはや原型を留めないその姿はひたすらに悍ましく。
生命その物に対する冒涜としか言えないような異様な姿を晒していた。
「オニギィィィィィす!ゴろズ!!」
咆哮とともに先ほどとは比べ物にならない速度で間合いを詰めるスクデビア。
「くはっ!」
スクデビアの拳がオニキスのみぞおちにめり込んだ。
素早さも上がっていたが、なによりその動き。
先ほどとは違い、明らかに格闘技術を駆使した動きにとっさに対応をしきれなかったのだ。
吹き飛ばされたオニキスにとどめを刺すべく追撃する。
しかし、その勢いは鋭い剣閃によって阻まれた。
宙を舞う頭。
泡に包まれる傷口。
「同じ箇所でも修復は可能……ですか……。」
「とうゼんだ、わタしは、かみニなったのだ。オニキス=マテぃ。」
「更に、知能もあがっているのですか……。」
更に醜く歪んだ顔でスクデビアが笑う。
口の形が人間のソレとは大きく異なるため言葉は聞き取りにくいが、
すでに普通の人間程度の思考は取り戻しているように感じる。
そこからは一方的な展開だった。
技術では優るものの基本的な身体能力に大きな隔たりがあるため、
オニキスは防御をするので手一杯になっていた。
自ら腕をもぎ取り4本にまで増えた腕からは、
一撃でも貰えば骨折しかねない威力の攻撃が絶えず放たれ続ける。
うまく受け流してはいるがまともに受けてしまえば、
鋼鉄製の武器でもひしゃげるほどの威力はありそうである。
正直、こうして受け流しているだけで、
彼女ほどの戦闘能力を持ってしても体力と精神力を奪われていくことだろう。
それが解っているからこそスクデビアも深追いはせず、
なぶるようにヒットアンドアウェイを繰り返す。
無尽蔵な体力を誇る自分とは違い彼女は人間。
それも体も小さく非力な女だ。
今は何とか防いではいるが、
このまま攻め続ければすぐにその拮抗はいつか破れると言う確信があった。
スクデビアの心を愉悦が満たしていく。
この生意気な女を無力化した後はどうしてやろう。
スクデビアの濁った思考はすでに戦闘ではなく、
その後に待ち受ける陵辱に思いを侍らせていた。
まずは手足を折って無効化しよう。
その後動けなくなったこの女の目の前で、あの無表情な女を犯してやる。
この生意気な女がどんな表情をするのか今から興奮が止まらない。
その後は顎を外してやって無理やり口の中を犯してやろう。
泣いて命乞いをするようなら互いを殺し合わせるのも楽しそうだ。
もちろんその後両方殺すが……。
あぁ、楽しみだ……。
ビキビキビキ。
スクデビアの股間部分に禍々しい物が隆起する。
「うわぁ、何を考えてるか良くわかりますねえ。ドン引きです。」
「うーん、同じ男としてはまあ、複雑な気分ですね。あはは……。」
「――オニキスちゃん。
そろそろリーベちゃんが援軍を呼んでこちらに向かって来ようとしてるみたいです。
今頃は学園を出た頃かと。」
シャマの腕には小さなコウモリがとまっていた。
このコウモリはシャマの使い魔で、番いのコウモリと感覚を共有している。
番いのもう一匹は今上空からリーベの後を追いつついざという時のための護衛兼監視をしていた。
「わかりました、それでは彼女がスラムに入ったら教えてください。
なるべくそれまでに終わらせます。」
それを耳にしたスクデビアはその言葉に猛烈な不快感を感じた。
なるべく終わらせる?
こんな貧弱な女がこの戦いを?
「ふざげぇぇぇぇルなぁぁァぁぁぁ!」
凄まじい咆哮。
ソレはもはや空気を切り裂く攻撃と言っても良いほどだった。
咆哮と同時に地を蹴ると一気にオニキスとの間合いを詰める。
今までの動きとのあまりの違いにオニキスは反応できずまともに拳を食らう。
――ボキボキボキ
何かが砕ける音。
吹き飛ぶオニキス。
その体はゴムまりのようにバウンドしながら壁に激突し、
そのまま崩れた壁の下敷きになってしまった。
「あっはハハハッはぁぁぁぁァぁ!」
勝利の確信。
残念ながあれでは原型は留めて居ないかもしれない。
生きたまま犯してやりたがったが、
最早そんな事はどうでもいい。
人間を超え、神の域にまで達した貴族である自分を、
たかが人間の女が侮るなど、許せるわけがない。
まあ潰れてしまっていても使えるかも知れない。
あの女を穢せるならそれはそれで良いかもしれんな。
スクデビアは醜悪な笑みを浮かべると崩れた壁の方に向かって歩みをすすめる。
その下敷きになっているであろう少女を陵辱するために。
スクデビアくんはいいところなしのクズですが、薄い本では主役になれます。
ちなみに彼の名前は日本語に訳すとゴミ=ゴミ=ゴミとなる予定だったのですが、
スクデビアではなくスクビディアだったので何の意味もないですはい……。