第三十話 デート+3
お久しぶりです。
更新止まってて申し訳ありませんでした。
ちょっと冬コミでHな本描いてました!
今日からまた更新していくのでまたよろしくお願いします。
30
聖サントアリオ学園正門より伸びる大通り。
出店などで活気あふれる通りは、
休日を満喫する人々で賑わってた。
その一角に、周りの喧騒とは異質な一角が生まれている。
人々は会話を止め、目の前を歩く二人の少女達に目を奪われていた。
亜麻色の艷やか髪を風に流し、
クティノス風の着物を身に着け、
愛くるしい三角の耳を頭から生やした少女。
そしてその少女と手を繋ぎともに歩く黒髪の少女。
どこか浮世離れした美しさを持つ少女達に、
休日を満喫していた人々は暫し言葉を失う。
「ふむ、余り休日外を出歩く機会がなかったのですが、
やはり話に聞くのと実際見るのでは違うものなのですね。」
「そうなのですか?」
「ええ、聞いた話では、
休日のこの辺りはもっと歩くのも大変なほど賑わっていると聞いたのですが。」
言われて見回すと、確かに歩くのも大変という感じではない。
しかし、耳を澄ましてみると、
少し離れた場所からは人々の喧騒が聞こえてくる。
よく見れば月詠とオニキスを取り巻く人々は、皆一様にこちらを注視していた。
「あー、これは……。」
横で不思議そうにしているオニキスを見て月詠は合点が行く。
「これはオニ様が原因で御座いますので、
ご友人方が大げさに言っていた訳ではないと思われます。
本来この場所は、歩くのも困難なほど賑わっているのだと思われまする。」
「……?」
よく解らず首を傾げているオニキスを見つめながら、自分の魅力に鈍感な人だと苦笑する。
――かく言う月詠も実は人々の目を大いに奪っているのだが、
そんな事に全く気がついていないので、人のことを言えた義理ではない……。
ある意味では似たもの同士である。
「とにかく、参りましょうオニ様。
休日は噴水広場に大道芸人や屋台が並ぶと聞いておりまする。」
「ほうほう、屋台に大道芸ですか。
それは面白そうですね、早速行きましょう。」
二人は再び手をつなぎ、ゆっくりと人垣を割って歩いて行く。
その様はさながら海を割るモーセのようであった。
……――――
「――聞こえましたか?
どうやらターゲットは噴水公園で大道芸を見る予定のようですね。
飛んで火にいる夏の虫。
暗殺するにはもってこいのシチュエーションです、
毒殺、絞殺、拐かし……通り魔的に真っ二つにするのもいいですね……。」
「え?何で君は突然彼らを殺そうとしているんだい?」
「あ、あの、あの、冗談ですよねぇ?シャm……。」
「シャラップです。
これは極秘の潜入任務。
名前を呼びあうなんて愚を犯すようなら切り捨てますよ?
それと亡き者にするのはあのメス犬のみです!」
「ふぇぇ、じゃあなんとお呼びすれば~……。」
「……コードネームを決めましょう。
シャ、私はホワイト、王子はオレンジ。
そして貴方はレズだからピンクです。」
「ふぇ!?」
「ピンクちゃんがレズだからピンクなのは納得だけど。
僕がオレンジなのと君がホワイトなのは意味があるのかい?」
「ふぇぇぇ!?」
「王子を性格で名付ければ、
男女見境なく盛るのでピンクになってしまって被っちゃうじゃないですか?」
「……ふむ、成程、得心した。」
「えぇっ!納得しちゃうんですかぁ?」
「うるさいですよ、レズ。
さあ、先回りします。オレンジもついてきて下さい。」
「ふえぇぇ!?
わ、私はピンクですぅ~。」
「ピンク……もう認めちゃってるじゃないか……。」
「あうあぅ~……。」
……――
「オニ様見てくださいませ。
本当に沢山の大道芸人がおりまする。」
月詠の指差す方向を見るとたしかに沢山の大道芸人が各々の芸を披露していた。
口から火を吹く大男、腹話術で人形と話す青年。
ジャグリングをする狐面をかぶった少女の見事な手さばきは、
いつまで見ていても飽きないと思わせる魅力があった。
更には音楽隊が曲を奏で、出店が呼び込みをかける。
休日の噴水広場は、宛らちょっとしたお祭りのような様であった。
大道芸人たちの見事な技の数々に月詠とオニキスは目を奪われる。
「本当にすごいですね、
魔法とも武術とも違うこういった技術は見ているだけでも面白いです。」
ふと、先程ジャグリングをしていた狐面の少女を見ると、
彼女はこちらを指差し、近くに来るようにと手招きをした。
「月詠、なんだか私達を呼んでいるみたいですよ。
行ってみましょう。」
「はい、オニ様!」
二人が近寄ると狐面の少女は、
無言のままオーバーな身振り手振りで何かを伝えてくる。
少女は懐から赤い玉を4つ取り出すと、
それを器用にジャグリングし、
オニキスの前でそれを全て右手に収め、
握り込んだ玉をオニキスの目の前で開く。
すると握り込まれたはずの玉はどこにも無く、
代わりに少女の手には、鮮やかな赤いバラが握られていた。
少女はそのままオニキスの髪にそのバラを挿し、
いたずらに成功して喜んだ様なジェスチャーをする。
続けて今度は月詠の方に向き、
オニキスの時のように青い玉を4つ取り出すと同じようにジャグリングを開始する。
そして、再び片手で握り込むとその手をそっと月詠の頭の上で開く。
月詠の頭上に、たしかに何かが置かれる重さを感じる。
「妾にも何かの花を……?」
月詠はそっと頭の上に置かれた何かを握ってみる。
次の瞬間、月詠の手にはひんやりとしたブヨブヨの何かが握られた。
「……!?」
驚いた月詠は慌てて頭の上のものを地面に落とす、
すると地面に落ちた縞模様のあるグロテスクな”それ”は、
あまり可愛らしくない鳴き声を上げると、
ぴょんぴょん跳ね始めた。
「ヒェッ!!」
落ちたそれと目が合うと見る見る月詠の顔から血の気が引いていく。
「カ、カ、蛙ッッ!!」
「あ、月詠、それ田鶏ですよ!
珍しいですね、食べるととても美味しいらしいですよ!!」
「オ、オニ様!?
いくらなんでもこの状況でその反応は食欲魔神すぎで御座いませぬか!?」
悲鳴を上げる月詠、
何故か蛙に対して奇妙な知識を披露するオニキス。
「妾、蛙は無理なので御座いますぅぅぅぅ!!」
二人が大騒ぎをしている間に、
騒動の原因であった大道芸人の少女は姿を消していた……。
……――――
「……ホワイト君、流石にアレは酷いんじゃないかな?」
「そんなことありませんよ、
アレはあのメス犬の苦手とする蛙で嫌がらせをしつつ、
食欲の権化であるオニキスちゃんを釘付けにして逃走のすきを作る、
計算され尽くした完璧な作戦でしたよ。」
「だ、駄目ですよぉ。
お二人の邪魔をしちゃうのは可愛そうですよぉ。」
「レズ、アレは邪魔をしたのではありませんよ。
貴方は吊り橋効果というものを知っていますか?
どんな理由でドキドキしたとしても、
人間は勘違いから恋に落ちてしまうというあれです。
つまり先程のアレは、
私なりに御二人の背中を推して差し上げたのですよ。」
スラスラと空気を吐くように嘘を吐く謎の女、ホワイト。
「そ、そうだったんですかぁ。
わ、私ってばホワイトちゃんの親切を悪いように受け取っちゃって、
申し訳ありませんでした~。
ホワイトちゃんはとても友達思いな上に、
あんな芸まで習得してて、本当にすごい人ですねぇ~。」
ピンクの純真無垢な笑みが、
真っ黒な邪悪ことホワイトの心を照らす。
「……――やめるのです、そんな目で私を見るなッ!!」
「ホワイトちゃんを殺すには刃物も毒もいらない。
純粋で穢れていない綺麗な心があれば事足りるようだね。
あと、そのセリフは完全に邪悪な魔王か何かが死ぬときのやつだよ。
それとピンク君、君いつの間にか名前がレズ君になってしまっているよ……。」
「はうっ!」
なんとも言えない空気が流れる中、
オニキスと月詠は次の場所へ移動を開始していた。
「あ、あのメス犬、生意気にオニキスちゃんの手を握ってやがります!!」
「いや、あの二人は学園出てきたときから手を繋いでいたからね?
ところでホワイトちゃん……。
ボクはなんだか君もピンクなんじゃないかと思い始めているんだけど?」
普段と印象が違いすぎる友人をジト目で見つめるオレンジだったが、
ホワイトは聞く耳も持たず、すでに次の行動に移っていた。
「あ、ちょうどいいです。
ナイフ投げの芸人が月詠を的にしています。
ピンクレズ、風の魔法でナイフの軌道をあのメス犬の眉間に修正するのです。」
「ふえぇぇぇぇ~!?」
「いや、ホワイト君それ普通に犯罪だからね?
君は普段は物静かなのに、
オニキスちゃんの事となるととんでないな……。」
「は、離してくださいオレンジ!
何故私を拘束するのですか!?
今、あのメス犬をここで止めないと、
取り返しがつかなくなるのです!!」
「しょ、正気に戻って下さいぃ~!」
もはや暴走するホワイトを止めるのが精一杯で、
二人を尾行することは不可能になってしまった。
オレンジは折角のおもしろイベントを逃してしまった事に落胆のため息をこぼすのだった。
「オレンジ!離してくださいいいいい!!
二人を追わなければオニキスちゃんが!!オニキスちゃんが!!」
無表情にも関わらず物凄い力で抵抗する友人を力ずくで抑えながら、
今度からこういうイベントは一人で楽しもうと心に誓うのだった。
「……まったく、君ってばおもったより相当”アレ”だねえ……。」
読んでくださってありがとうございます。
これからはお昼にUPすることが増えるかもしれません。
なるべく頻度は下げないように頑張ります。
ちなみにコードネームのあれこれはある映画のオマージュです。




