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第十六話 変態紳士

ちょっと間が空いてしまいました。

なんか今週は筆が進まず、申し訳ないです。

16




 ――――ヴェスティ視点


 今、私は早足に更衣室に向かっています。

この胸に抱いているのはなんと、あのサントアリオ学園の女神、

オニキス姫様の魔法衣なのです。


 まだ入学されて間もない方ですが、

入学試験での魔法試験、クティノス代表との親善試合、何よりその美貌!

何かと話題に登る天上人、オニキス姫様!


 まだ入学式から1ヶ月ほどしか経っていないというのに、

その人気たるや、既に学園1位との呼び名も高い凄い方なのです。


 その姫様が憂いを湛えたお顔で被服室にいらっしゃった時は、

正直私、心臓が張り裂けるかと思いました。


 だけど、悲しげなお顔もなんて美しい。


 しかしその憂いの原因が、どうやらそのお手にある魔法衣であるとわかった時、

私が姫様のお役に立てるチャンス到来と頭に雷がビビビっときましたです、はい!


 早速姫様に話しかけた所、姫様ご本人は周りが姫様と呼んでることをご存じなかったご様子でした。

オニキス姫様とお呼びした時の驚き顔。


 あぁ、何故私は写真機を常備していなかったのか!

”そなえよつねに”この言葉を過去の自分に送りたいッッッ!!


 取り合えず姫様は私の提案を快く受け入れてくださいました。

しかも、その報酬は姫様が何でも言うことを聞いてくれるとのこと!!


 嗚呼、コレほどの美貌と実力を持ちながら、

それを笠に着るでもなく、常に優しい笑みを浮かべておられます。


 まさに女神と呼ぶにふさわしい御方です。


「私は平民の出ですので姫と呼ばれるのは些か気恥ずかしいのです。」


「はぅ、姫様……。」


 なんと謙虚なお言葉!そしてその困ったようなはにかんだ笑顔!!

 心臓が破裂するかと思いました。


 息を乱す私を見て姫様がますます困ったような顔をされています。


 ごめんなさい。


 ――そして、その魔法衣を受け取った瞬間から私達の戦いは始まりました。


 ご本人はお気にに召していらっしゃらなかったようですが、

正直この魔法衣はオニキス様に良くお似合いの素晴らしい意匠を凝らした逸品です。

 オニキス姫様はどうやらリボンが子供っぽくて嫌だったようですのでこれは外すしか無いでしょう。

よくお似合いでしたので本当にもったいないですが。


 代わりに大人っぽくレースを誂えて可愛らしさと大人っぽさを共存させましょう。

あの方は確かに美しいですが、同時に可憐さも持ち合わせておられますので、

どちらかの魅力だけではなく少女らしさと大人っぽさ、

この矛盾を共存させることがあの方に最もふさわしい!


 嗚呼、インスピレーションが湯水のように湧いてくる!


 どうやら姫様は私達に差し入れを持ってきて下さったようですが、

どうせなら完成まで隠して驚かせて差し上げたい。


 すいません姫様、お気持ちだけお受け取りさせていただきます。


 このヴェスティ=クライドゥング、今より修羅道に入り、

究極の魔法衣を作り出してみせます!!



 ――ダンジョン講習当日。


本日はダンジョン講習当日とのことですので、

お姉様はもう更衣室に向かわれているとの事だった。


 本当はもっと余裕を持ってお渡ししたかったですが、

細部にまで拘ったので、思いの外時間がかかってしまいました。

 しかし、この服であれば姫様のご要望全てに応えられるはず。

 私、いえ、私達の持てる力以上のものを込めましたからね!


「オニキス姫様!お待たせしました。」


 意識して元気に挨拶をします。

姫様はお優しいので、私達が疲弊していたら、

きっとお心を痛めてしまわれるに違い無いからです。


姫様は微笑みながら服を受け取り、個室に入られました。

しばらくして出ていらっしゃった姫様は、とても凛としたお顔でいらっしゃいました、

どうやら私達の努力は報われたようです。


 しかし、とてもお似合いになるだろうと思ってましたがまさかこれほどとは……。

 見とれてしまって固ってしまいました。


「それではダンジョン研修に参りましょう。」


 姫様はそう仰られるとまっすぐにダンジョンに向かわれました。



 あぁ、あまりの美しさにお声をかけ損なってしまいました……。


 




 ――――――


 硬直したヴェスティたちの前から逃げるように移動したオニキスは、

ダンジョンに向かう道中全生徒の視線を集めに集めていた。

 中には態々友人などを呼び見物に来る者まで居る。


(屈辱だ、穴があったら入ってしまいたい……。)


 赤面しつつも姿勢を正しまっすぐ前に歩く姿から、オニキスの心情を察せる者は恐らく少数だろう。


 ダンジョン研修場に着くと既に月詠達は揃っており、こちらに向かって手を振っていた。


「オニ様、今日のお召し物も大変お似合いでございまするな。」


「先日の可愛らしい服もいいけど、こういうシックなデザインの方が君の魅力を引き出す気がするね。」


「お姉様はどんな服でもお似合いですねぇ~。」


 リーベとリコスと月詠の三人に褒められようやくオニキスの緊張が解ける。

この三人ならオニキスを辱めようと騙したりはするまい

 大和はなぜか無言でこっちを凝視している。

昨日からどうも大和がおかしい、大丈夫だろうか?



 ――しばらく待つとグレコがやって来て研修の解説を始める。


 ダンジョン研修は学内にある実際のダンジョンを使って行われるらしい。

表層であればそれほど危険は無く、

そこそこに罠も仕掛けられているので研修に丁度よいダンジョンであるとのこと。

 5層ごとにボス部屋があるそうだが、

コレも閉じ込めのトラップなどは存在しないので自由に逃走可能である。


 正し、20層以降は一気に難易度が上がり、

ベテラン冒険者でも危険な場所となるので、

Sクラス生徒は卒業までに10層のボスを突破するのが目的となる。

 一般クラスは大体5層突破が目標らしい。


「それでは準備出来たものから入っていいぞ。

だが、今回は敢えて地図は配らない。マッピングは自分たちでするんだぞ。

ニ日たっても出てこない場合は先生が救助に向かう。

逆に言うなら二日間は手を出さん。水、食料を忘れるな。

あ、あとオニキス=マティ。」


「はい?」


「お前らそのメンツでダンジョンに潜るつもりか?」


「はい、そのつもりです。」


 何を聞かれているのかわからないがとりあえず頷く。


「馬鹿野郎、過剰戦力だ。

初心者ダンジョンにSクラスTOPで固めたパーティで潜るんじゃない。

お前ら踏破でもするつもりか?」


 言われてメンバーを見渡す。


 元Sクラス剣士の リコス

 聖女候補 リーベ

 占星術 治癒術 さらには陰陽術まで修めた才女 月詠

 クティノス代表蛮族 大和

 死魚眼 シャマ


 なるほど、他のパーティと比べて強烈なメンバーが揃いすぎている。


「とりあえず二人ずつに別れて他の生徒を入れてやれ。」


 グレコの一言で周囲がざわつく。


「お姉様が私達とパーティを?」


 ざわっ 


「姫が俺たちとデートを!?」


 ざわっ ざわっ


「キィィェェェェェェ!オネェェェサマァァァァ!!」


「ウォォォ、ヒーメ!ヒーメ!!」


 ひぇっ!


 あまりの気配にオニキスが後ずさる。

 結局、収拾がつかなくなってしまった為にグレコが仕切り、

比較的常識があり、且つパーティも組めていない生徒をオニキス達の班に入れることとなった。


 オニキス達は公平にくじで班分けをすることにした。


 結果……



 オニキス&月詠


 大和&リーベ


 シャマ&リコス



 と、なった。


 勝ち誇った顔の月詠とそれを睨みつけるシャマ。

 ……君たちは本当に仲が悪いね。


「くふふ、オニ様と妾はやはり切れぬ縁で結ばれておりますな。」


 嬉しそうに笑う月詠。


 オニキスとしても久しぶりに会う妹同然の少女と、

共に行動できるのは嬉しい。


 しかし……


「おぅ、よろしくなぁ、ねぇちゃん!!」


「ひぇっ!」


「ちゃんと自己紹介してなかったなぁ?俺ぁ、大和だ!」


「ひぇっ!!」


「名乗りには名乗り返すのが礼儀ってぇもんだとおもうぞぉ?ねえちゃんよぉおお?」


「ひぇぇぇっ!!」


 何もしてないのにリーベの許容限界を遥かに超える恐怖を与える大和。

 あのコンビはまずくないかな?

オニキスは不安に思いつつ二人を眺めていたが、

他のパーティメンバーが上手く間を取り持とうとしてくれているのが見えたのでとりあえず安心する。


 リコスとシャマは問題無さそうだ、あの二人は何だかんだ仲がいい。

シャマが月詠に向かって呪の電波を送っているようなポーズをとっているがスルーしておくことにする。


 とりあえず皆で行けなくなってしまったのはすこし残念ではあるが、

新しい交流をするのも良いものだとオニキスは心を切り替える。


 暫くするとこちらに近づく足音と話し声が聞こえてきた。

どうやら自分の班にも二人の男性が割り当てられたようだ。


 しかしその姿を見た瞬間オニキスの表情が固まる。


「やあはじめまして、君が噂のオニキスさんだね。

僕の名前はディアマンテ=エヴィエニス。

至らぬところはあると思いますが本日はよろしくお願いいたします。」


「……ヴィゴーレだ……。」


 美しいバリトンボイスで自己紹介をする彼はディアマンテ=エヴィエニスと言うらしい。

紳士然とした所作、物腰も穏やかな彼は”頭の上の孔雀の羽”を揺らしながら丁寧な挨拶をする。

 その腰からも色鮮やかな羽が伸び揺れている、形の良い両足は白く美しいタイツに覆われており、

 腰には緑とオレンジを基調とした金の刺繍が入ったかぼちゃパンツが煌めき、

その腰にはきらびやかなレイピアが輝いていた。

 目元を覆う蝶の面も怪しいが、全体のコーディネイトとしては調和が取れているのが恐ろしい。



 ヴィゴーレと名乗った男は2メートルを超える長身、

それに見合った筋肉の鎧、短く刈り上げた金髪が印象的だ。

顔は同年代とは思えないほど厳つく、正に重戦士と言った風貌の治癒魔術師だった。


 この国の治癒魔術師はどうなっているのか……。


「はじめまして、オニキス=マティです。本日はよろしくお願いいたします。」


「天津國月詠ともうします、よろしゅうお願い致します。」


 動揺をさとられないようにオニキス達も挨拶を返すと、ディアマンテは眼を大きく見開いた。


「驚いたね、見たかい?ヴィゴーレ君。

僕らの姿を見て平静を保てるなんて、オニキス君は妹の話の通りの人物らしい。」


 妹?

エヴィエニス……エヴィエニス!?


「それでは貴方はリコスの!?」


「そう、リコスは僕の最愛の妹さ!まあ腹違いなんで年齢は一緒なのだけどね。

父はとても愛多き男だからね、僕らは年の近い兄妹が多いんだ。」


 言われてみると確かに少し雰囲気が似ているような気がする。

仮面で見えないが、その僅かに見える目元などは整っており、スタイルも良い。


「妹もまた恋多き女であるのだけど、彼女があそこまで入れ込んだ女性は君が初めてなんだよ。

まるで男性に恋した時みたいなノリでねえ、兄としては不安になってしまうのだけど、

君が相手なら仕方がないのかも知れないね!

あ、僕の事は警戒しなくていいよ!

僕は僕に恋をし続けているからね!!」


 男に恋すると聞いて一瞬オニキスの顔が引きつる。


(ごめんなさい、それであってます……。)


 凄まじい勢いで喋り続けるディアマンテ。

ふと横を見ると丁度リコスがダンジョンに入ろうとしているところだった。

 彼女はオニキスの視線に気が付くと、

ゴメンネと言う様な素振りを見せながら中に入っていった。

 どうやら肉親の彼女から見ても彼の行動は厄介なものらしい。


「と、とりあえず、妾達もダンジョンへ向かうとしましょう。」


 月詠がオニキスの手を引き何とかこのマシンガントークから逃れようとする。


 すでにディアマンテの話はエヴィエニス家の成り立ちの話にまで遡っていた。

たしかにこのままでは探索に向かうことができなくなりそうだ。


「――そして、その時、我が祖先が国王のまえに……うわぁあっ!

ヴィゴーレ君、僕を荷物のように運ぶのは止めてくれないかな?」


 察してくれたヴィゴーレがディアマンテを抱えて運んでくれた。

彼は口数が少ないが、空気の読める男であるらしい。


 オニキスは少しホッとしつつこのメンバーでのダンジョン探索に一抹の不安を覚えるのだった。



ブックマークも徐々に増えてきてありがたい限りでございます。

これからもがんばりますのでみすてないでくだちい!

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