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夏の日  作者: 端の方。
3/5

3 HR

4月も2週目、授業の開始したのが月曜からだったのでもう今日で5日目となる。

2年生のクラスはまぁ、程よく全クラスから引っ張ってきました、といった様相で別段面白みのあるようなものでもなかったが、1人、編入生が入ってきているという点と、神薙がいるという点で去年からは少しだけ変わったと思える。

2年次である今年は修学旅行というイベントがある以上、楽しむためにもクラス内に友人は多いに越したことはない。


先に修学旅行というワードを出しておきながらなんだが、この学校は進学校を謳いながらにして、学級の結束を強めるなどといった名目のもと4月終わりにちょっとした遠足がある。この遠足の2年次の目的地は例年隣県の自然公園である。今年も例にもれずその自然公園なのだが、併設されている植物園の鑑賞や、昼食として用意されているバーベキューはクラスごとではなく、4人の班ごとになっている。

月曜の朝に担任の「ある程度班決めしといて~」などといった表面上の通達はあったが実際に決定されるのは金曜の最終授業も兼ねるHRで行う。そして、今がその時間である。

「おーい、あと一人誰誘うつもりかな?」

ちょうどその班員である神薙と、彼女が早くも連れまわし、その過程で僕ともある程度仲良く(少なくとも僕はそう思っている)なった、きれいなシルバーグレーの髪を持つ転入生、日高 芽衣菜(ひだか めいな)、通称メアが僕の席の一角に集まってきた。

僕がまだ決めていない事とメアがやりやすい人選をメアに決めてもらったほうが良いのではないかといったことを告げるとメアは

「…誰でもいいよ。おおよそこいつのせいでほかの人は大体話したことない」

と、神薙を横目に言う。

「いやいや、メア絶対あのままだったら誰とも話さないで空気に徹してたでしょ。お姉さんには分かるよ?あの時、そういう空間持ってた。」

と、神薙は返す。実際メアは口数の多いほうでもなく、少し大人びた雰囲気をもち、日本人の色の強い名前と薄い髪色のギャップを持つメアに話しかける人は、既に1年の時から仲のいい人同士で固まっていた風潮もあり多くはなかった。

僕的にも特に擁護もできないため苦笑を浮かべていると唐突に

「なぁなぁ!メア達3人だよな?よかったわぁ!ウチもここで決定!な!よろしく!」

と、一方的に僕らの班の4枠目をかっさらう宣言をしたのは、小柄でいてその活発さを表したようなポニーテールが特徴的な、三津 朱音(みづ あかね)。例の数少ないメアによく話しかけているうちの1人だ。

神薙とメアが当然のごとく了承し僕の方を見てきたので僕が賛同すると、もうこの授業中にすることはないため、書類へ班員の記入を済ませた後、各々帰り支度を済ませた鞄を持ち寄って雑談に興じる。

しばらく経ち全ての班分けが決まったのか、担任が授業の終了と放課を告げると神薙はあ、そうだ。と言って僕に

「明日、ちゃんとスケジュール帳を確認して、準備してくるんだぞ!お姉さんとの約束な」

と、神薙だと分かっていなければ見とれてしまいそうなほど綺麗な笑みを浮かべながら告げてきた。


生徒会活動のある神薙と、それに付き合わされるメア、陸上部に所属する三津と別れ、駐輪場で携帯端末を確認すると由紀から「今日は部活見学に誘われたから先帰っててね」とメッセージが届いていた。部活には興味がないと言っていたので"誘われた"から"見学"に行くんだろうなと思いつつ久々に1人での帰路についた。


先に帰ると僕は言いつけ通り、スケジュール帳を開く。するとそこには昨日までは確実に書かれていなかったメモが書き込まれていた。

そこには、明日あさっては泊りがけで出かけること、由紀には了承を得ていること、そしてなぜかこのスケジュール帳を紗夜に"中を見ないよう言いつけて"預けていくこと、神薙は話し言葉で書き込む癖があるので少し読みづらさがあったが、おおよそこの三点が書き込まれていた。土日両方抑えられたため泊りがけであることは予測はしていたが、本当にそのようであまり豊富とも言えない通帳を憂いながら少しだけ楽しみに思う感情を押し込めた。

恐らくHR中などに鞄を漁って書き込んだものと思われる、相変わらず行先などの一般的に重要な部分だけは書かれていないスケジュール帳をとりあえず自分用のメモとして携帯で写真に残し、出かけるための準備を始めた。


夜には「振りなの!?これは見ろっていう振りなのかな!?」と言う紗夜に知ったもんじゃないと預け、明日の集合時刻がそこそこ早いので、少し遠くまで行くのか等、目的地を類推しながら床に入った。

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