その心はとける?
「「おはようございます!」」
「「おはようございます!生徒会長!」」
元気な声が響く。う~ん!さわやかな朝ね!
挨拶活動は、私たち生徒会の役割の一つ。
全生徒と顔を合わせることができるこの時間は、私にとっても大切な時間。
「おはようございます!委員長!」
一段と響き渡る一声。私はこの声をよく知っている。
「おはよう。今日も元気ね。新しい制服、とても似合っているわよ。」
「ありがとうございます!また会えてうれしいです!それでは!」
ツインテールの生徒は駆けていった。
「おはよう、委員長。」
「おはよう。あら、今日は朝練はないのかしら。」
サイドテールの生徒が私を呼ぶ。
「今日は”こういうことをする日”だろう。緊褌一番!今年もよろしく!」
「ええ、心機一転。また後で。」
さわやかな朝は続く。
この学園は有数のマンモス校。
人は多く、敷地はとてつもなく広い。
それゆえに入学数日は、”迷子者”が現れる。
そんな子を導くのも、私たち生徒会の役割。
先の挨拶で確認した顔と、生徒名簿を照らし合わせる。
さて誰かしらね。今後要注意な生徒は。
始業五分前の予鈴が鳴る。
残りは、二人。
「会長、残りは誰ですか。」
副会長が問う。
「あと二人よ。どちらも高等部一年A組の―――」
不意に言葉が詰まる。
「高等部ですか!?」
一つ目の驚きはそれだった。
計算では、小学部一年の生徒だったのに。
そして二つ目の驚きは、その人物だった。
その二人は、一人は要注意な生徒だけれど、
もう一人の、優秀な生徒がいつもカバーしてくれているから。
だから、遅刻はないだろう、なんて。
「そういえば、まだ見ていなかったわね…。」
不覚のため息をこぼす。
「あれえ~~~???
もしかしてあそこで急いでいる二人だったりする~~~???」
「そうみたいだね…。」
生徒会の役員が指摘する。
「まったく初日から遅刻とか~~~???
よりによって高等部の生徒が~~~???」
「まあ、あと四分四十五秒あるから…。」
遅刻寸前の二人に目を落とす。
この学園の入口は、まず上りの階段があるので、
仮に走ってきたのなら、そこは相当な鬼門になるだろう。
彼女たち、
いや彼女は、大きく肩を上下させている。
「ほら~あとちょっとだよ~」
「ぃゃ、…ぉ、…。」
「おはようございます!彼女も、おはようって言ってます!たぶん!」
「ぃゃ、…ぉ、…。」
「おはよう二人とも。今日の高等部一年A組の一限目は化学、移動教室よ。
場所は東棟三階の三〇一号室。
あと、あなたが彼女を背負ってあげれば、九九パーセントの確率で間に合うわ。」
「あ、そっか!ありがとうございます!委員長。」
「いえいえ。東棟の三階だから、間違えないようにね。」
「東棟の三階だぞ。」
「東棟の三階だよ。」
彼女は駆けていった。
走っていたからだろうか。
彼女たちは、二本のポニーテールを揺らしていた。
4月OO日 入学式