その心はうつる?
「あ、そうだ―――」
ポニーテールを翻す。
見慣れた校舎を背景に、まだ見慣れていない制服姿の幼馴染を映す。
丸い目で私を見つめる彼女と対峙して、
笑顔で、首をかしげる。
「部活動は、何にするの。」
なにげない所作で、さりげない仕草で、
質問の返答をいつまでも待つポーズをする。
彼女は少し困った顔をしたが、すぐに笑い、
誇らしさと恥じらいを混ぜた口調で答える。
「演劇部の予定だ。さて、そのまま質問を返そうか。」
その言い回しは、何度か彼女の声で聞いたことがあった。
でも、その言葉は、初めてだった。
(へぇ~、演劇部かぁ~。何をするんだろう、演劇って。)
その返しに対する返しを、私は特段に用意していなかったので、
とりあえず、口だけを開く。
「う~~~ん、陸上部、水泳部…、あっ、航空部とか、どうかな~。」
頭をよぎった部活動の名前を並べる。
私の発言を彼女が復唱する。
「航空部。」
「えーっとね、ほら前に。ライセンス更新したよ~って話した、あの。」
「スカイスポーツだな。本当、陸海空なんでもござれだな。運動なら。」
たぶん褒められた。
うれしい。
「だが、」
彼女は悔しそうに目を細める。
「このブローシュアに、航空部の文字はないぞ。」
学園のパンフレットを見せてくれた。
部活動一覧の五十音順で、剣道部のすぐ次がサッカー部だった。
「あ、そっか。」
つい感嘆する。
私たちが通っている学園は、一貫校。
私たちはその節目に、制服と号を変える。
高等部進学後の学園の側の変化は、部活動の参加義務だった。
「とはいえ―――」
彼女は腰に手をあて、もう片方の手のひらを翻す。
「貴方は昔から、無所属ながらも、各所で大活躍だったな。
もちろんお声はかかっているのだろう。その陸上部と水泳部。」
彼女の言う通りで、
助っ人として頼まれたら、大抵、入部も勧められた。
だけど、言われたことをやっていただけで、
出場した種目の名前や、演技した技の名前は覚えてない。
だから、楽しめていたかもしれないけれど、
果たしてそこで、楽しめるかどうかは、わからない。
だって、そこは―――
「よし!」
彼女は少し困った顔をしていた。
でも、すぐに笑い、誇らしげに開口した。
「だったら、私と一緒に、演劇部に入ろう。」
私はまだ何も言えていないのに。
彼女はいつも、私の真意の一から十まで答えてくれる。
そんな気がした。
「そう、だね!入ろう!演劇部っ!」
彼女の手を握る。
「ふふっ。帰るぞ。」
茜色に映る景色を横に、帰路に落ちる。
頭がすっきりしたところで、素朴な疑問をつい反芻する。
「演劇部かぁ~。何をするんだろう、演劇って。」
「えぇ…。」
4月XX日 始業式