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anithing+ /双子は推理する  作者: 淡島かりす
+ImaginaryBeast[幻獣]
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7-1.雪の夜の来客

 ある日の深夜、喉が渇いたアリトラは夜中にベッドから抜け出して、キッチンで水を飲んでいた。

 フィンは寒冷であるため、雪が降る季節は窓や扉を締め切って、暖炉と魔法陣で家を温める。だがその温度が高すぎると体の水分を奪われてしまって、こうして夜中に震えながら水分補給をする羽目になるのも珍しいことではない。

 まだセルバドス家は、魔法使いのエリート二人がいるために室温は安定しているが、一般の家庭では「冬の夜に起きた時のための水」が当たり前に常備されている。


「さーむいなー」


 本当はお湯を沸かしたいところだが、火事対策で夜中はコンロが使えない。解除することも出来るが、そこまでやっていると目が覚めてしまう。

 従って、アリトラは冷たい水を喉に流し込んだだけで、二階の自室に戻ろうとした。

 だが、ふとその足を止めると、背後を振り返る。キッチンの勝手口の方に向けられた視線には、警戒と不審が覗いていた。しかし、勝手口の扉の向こうから聞こえた声に、その目を見開く。少し悩んだ後に、扉に近づくと、鍵を解除して慎重に開いた。


「……わぁ」


 外は雪が降っていて、裏庭をうっすらと白いベールが覆っている。

 そしてセルバドス家の勝手口の前には、巨大な白い塊が落ちていた。それは雪ではなく毛皮であり、さらに言えば呼吸をしていた。上下する背中を見て、アリトラはもう一度感嘆符を上げる。


「大きい犬。狼さんかな?」


 その獣はアリトラを見ても襲い掛かってくる様子はなく、寒そうにそこで震えていた。

 体に少し雪はかかっているが、裏口の庇からはみ出した足や尻尾の先だけで、身体に雪は積もっていない。普通の犬よりも大きな体躯をしていて、二本足で立てばアリトラの身長を簡単に追い抜かしそうだった。


「風邪ひいてるの? 中入る?」


 そう言うと、まるで言葉がわかるかのように獣は尻尾を力なく揺らした。

 アリトラはその獣を台所に入れると、更にその先にある居間へ導いた。暖炉の火は落としたが、保温用の魔法陣のお陰で、まだぬくもりがある。


「ここで寝ていいよ。毛布持ってきてあげる」


 元来が世話好きなアリトラは、獣が寝るためのカーペットと毛布を手早く暖炉の前に用意した。獣はゆっくりとした動きでそこに横たわる。


「明日、皆に相談しよーっと」


 どこかの野良犬にしては妙に大きいし、狼にしては人間慣れしすぎている獣の正体を探るには、アリトラの眠気のほうが少々勝っていた。

 欠伸をしながら居間を去ったアリトラは、ベッドに戻るころには獣のことも忘れてしまった。


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