表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルティナ・オンライン  作者: 夜宵 天兎@玄武
7/7

第7話 カフェラテとツインテとお使いと

完全に遅くなりました…。

これから頑張ります…。

「は…?」

「だから、アタシとパーティーを組めって言ってるの」

「いやいや、お前GOやってるの?」

「やってなかったらこんな話、アンタなんかにしないわよ」

「で、デスヨネー…」


なんかにって酷くない? なんかにって。

まぁ、でもGOをプレイしているんであれば死霊術師(ネクロマンサー)についての意見を求めてきたのにも合点がいく。


「それで? 組むの、組まないの?」

「組みます組みます。降参こーさん」


俺は両手を挙げて降参のポーズ。

組まないって言ったら学校で何されるか分かったもんじゃない。


「分かってるじゃない。…そういえば、アンタの職業(ジョブ)って?」

「サムライだよ。最上級派生職業(ジョブ)の」

「へぇー。レベルは?」

「85だ。つい最近なったばかりだけどな」

「ふむ、なかなかやるわね…」

「それでお前は?」

死霊術師(ネクロマンサー)よ。レベルは63」

「結構やってんだな…」

「まぁね。ただ、友達付き合いとかで外に出る事が多いからあまりプレイ出来ないのよねぇ…。はぁ…」

「リア充グループも大変ですな…」

「楽じゃないわよ? 話合わせる為に興味のないドラマも観なくちゃいけないし、ランチの為にお金もやりくりしなくちゃいけないしね」

「マジかよ…。俺なら家で作るかコンビニのおにぎりで済ませるぞ…」

「でしょ? てか、アンタ料理出来んだ」


瀬名川が意外そうな顔でまじまじと見てくる。

まぁ、そういうイメージは俺にはないと思う。実のところ、俺もそうは思わない。ぶっちゃけ料理の実力や手際の良さは調理実習とかでしか披露するくらいしかないしな。


「とりあえず、今日の21時って空いてる?」

「まぁ、多分」

「そ。なら、西にあるダリリー・カフェで合流しましょ」

「ダリリー・カフェに21時、か。了解」

「遅刻したらカフェでコーヒー奢りね」

「ヘイヘイ」

「それじゃぁアタシはこれで」

「おう、気ぃつけて帰れよ」

「アンタはアタシの彼氏か」

「そのパターンは初めてだな…」

「まぁ、楽しみにしておいてあげる」

「おう」


瀬名川は制服の襟を直し、コンビニを出ていった。




「しまった…っ! 完全に遅刻だ…っ」


夕飯が終わって片付けをしてひと休みをしていたところ、どうやら寝てしまったらしい。

風呂にも急いで入って約20分の遅刻…。コーヒー奢り確定だ。いや、多分、シメられる。

走ってダリリー・カフェへ急ぐ。

5分程走ると小洒落たカフェに辿り着いた。マップにも『ダリリー・カフェ』と書かれている。

店内には花や観葉植物が置いてある。渋い大人向けでありながら居心地の良い空間だ。カウンター席に長い髪を編みこんだ金髪のプレイヤーが座っている。多分、瀬名川だろう。

そのプレイヤーの隣に座る。


「遅い。いつまで待たせるの」

「スミマセンでした…」


瀬名川で間違いようだ。

金髪に赤い目、強気な顔立ちは俺が瀬名川に持つイメージそのものだ。装備は黒いゴスロリドレスだけれど…。

装備が黒いゴスロリドレスなのは死霊術師(ネクロマンサー)職業(ジョブ)にしている女性プレイヤーへの配慮らしい。めちゃくちゃ似合ってるけど。


「一応、自己紹介はしておくわ。プレイヤーネームはラティカ。死霊術師(ネクロマンサー)よ。よろしく」

「プレイヤーネームはシキヤ。職業(ジョブ)はサムライだ。よろしく。それにしてもこのカフェ、良いな。落ち着いてて」

「でしょ? プレイヤーも決まったメンツしか出入りしないから溜まり場とか待ち合わせ場所にはうってつけよ。…コーヒー奢り、忘れてないでしょうね?」

「ヘイヘイ……。マスター、コーヒーとカフェラテ1杯ずつ」

「…かしこまりました」


寡黙なマスターが拭いていたカップを置き、コーヒー豆を挽きはじめる。


「NPCにしては本格的だな…」

「マスターはNPCじゃなくてプレイヤーよ」

「え、そうなの!? スミマセンでした!」

「…いえ、お気になさらず」

職業(ジョブ)は何を?」

「…聖護騎士(ロードナイト)です。レベルは99。…カンスト済みです」

「最上級派生職業(ジョブ)かよ…。何でカフェのマスターを?」

「…昔よりも戦闘に出ることも少なくなりました。元々喫茶店を営んでましたので、今は趣味でここのマスターをしています」

「なるほど…」


改めて店内を見回すと、確かに現実の喫茶店ともそう変わらない。

レトロモダンとはこういうことを言うのだろうか?

店内もそうなのだが、マスターの様な渋い大人がGOをプレイしている事にも驚きだ。


「あ、マスター。パンケーキ追加で」

「…かしこまりました」

「ここのパンケーキ、めちゃくちゃ美味しいから、アンタも頼めば?」

「いや、また今度にするよ。今はここの雰囲気を楽しみたい」

「ふぅーん…。まぁ、別にいいけどさ」


パンケーキが美味しい…。つまり、マスターは料理スキル自体の熟練度もかなり高い…という事だろう。

GO内での料理の味はプレイヤー本人の技術も関係してくるが、スキルによる補正もある。ある程度料理が出来る上、料理スキルもそれなりに熟練度が高ければ、それに見合った味の補正がかかる。料理スキルは『プレイヤー本人の実力』という不確定要素が関わる為、率先して熟練度を上げるプレイヤーは少ない。

事実、『プレイヤー本人の実力』が関わるスキルは多く存在する。その中には陽の光を浴びる事のないスキルもあるのが現状だ。

まぁ、いくつか面白そうなスキルはあったが…触れることはなかった。


「…お待たせしました。コーヒーとカフェラテです。お好みで砂糖とミルクもどうぞ」


瀬名川…、いや、ラティカはコーヒーに角砂糖を3、4個入れて1口飲んだ。

俺もカフェラテを1口飲む。

思っていたよりもすっきりとした味で、飽きずに飲める。ほのかに苦味を感じるが、これはこれで良い味だ。


「…パンケーキです。どうぞ」


ラティカの前にメープルシロップのかかったシンプルなパンケーキが置かれる。

ラティカは蜂蜜の入った瓶を取り、少しずつかけていく。

透き通った黄金色の蜂蜜が質の良さを物語っている。

ナイフで1口大に切り分けて口に運ぶ。

見るからにフワフワしているそれを口に入れたラティカは、


「ん〜…、しあわせぇ……」


至福の表情をしていた。めちゃくちゃ美味そうに食うなコイツ…。頬緩みまくりじゃねぇか。

こんな顔するのか。ってか誰だよこの人。


「何見てんのキモい」

「あ、やっぱりお前か」

「はぁ? 何言ってんのキモい」

「キモいを2回も言うなっ」

「キモい」

「ヲイ!?」


カランカラン…♪

と、店の扉が開く。誰か入って来たようだ。

紺色の小さなベレー帽を浅黄色のウェーブがかった長髪の上にちょこんと乗せた女性プレイヤーだ。

蒼いコート…、シルキニティコートを身にまとっている。確かあのコートは一昨年の冬のアップデートで増えた冬限定装備だ。実際、サイトや攻略雑誌で何度か目にしてはいるが…。装備しているプレイヤーは初めて見た。


「…いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」


店内を見回しつつも、軽やかな足取りで奥のテーブル席へ座る。

マスターはカップを棚に仕舞い、オーダーを取りに女性プレイヤーへ向かっていく。


「やっぱりあの席に座るのか…」

「ん? 何か言ったか?」

「あの女性プレイヤー、何回か見かけるんだけど、毎回あの席に座るの。常連客…なのかは分からないけど」

「落ち着くんじゃないか? あの席が」

「…そうよね。アタシもここの席にしか座らないし」

「他人の事言えねぇじゃねぇか…」


オーダーを取り終えたのか、マスターが戻ってきた。

コーヒー豆を挽き始めたかと思うと、奥の厨房へ消えていった。

カフェラテを飲み終えた俺は、アイテムの整理をしようとメニューを開く。

要らないアイテムや素材は定期的に売却しなければ所持数オーバーで肝心のアイテムを持てない時がある。念入りに仕分けしていく。


「へぇ〜、手際良いのね」

「ふひゃいっ!?」


いきなり耳元で囁かれた。お陰で変な声出た…。やめろラティカ。ゴミを見るような目でコッチを見るんじゃない。


「あらあら〜、ゴメンなさいね。お姉さん、つい興味が出ちゃって」

「あ、いえ…大丈夫デス……」


いや、実際全然大丈夫ではない。

気配を全く感じず、更には音までしなかった。完全に虚を突かれた。

くすくすと楽しそうに笑いながら席に戻って行く。

…あのお姉さん、一体何者?


「そういえば、フレンド登録してなかったわね」


ラティカの声音が低い…。

正直怖い。


「あ、あぁ、そうだな…。こっちから送るよ」

「了解」


メニューを開いてフレンドを選択。

フレンド申請を開き、対象を周囲のプレイヤーから『ラティカ』を選び、申請メッセージを送信。

数秒後に登録完了の文字が視界の隅に表示された。


「まず、手始めにどんなクエスト行く? 定石(セオリー)通り討伐系?」

「んー、やっぱり、まずは手頃なモノを探すかな…。お使い系とか。討伐系で連携はまだ慣れるまで時間かかるだろうし」

「ま、それもそうね。アンタに任せるわ」

「おい…。少しは考えてくれよ……」


リア充って大体こうだよな。

めんどくさい事はほとんど丸投げ。

…と、俺はカフェラテ飲みながら思いました。


「じゃ、お使い系で」

「随分テキトーだな」

「連携なら雑魚で練習すれば良いし、とりあえずは、ってことで」

「…そうかい」


この辺でお使い系クエストって言ったら…、アレか。「アトレのお使い」

1度クリアしても後から何度も受注出来るという、少し変わったクエストだ。

アトレという名のNPCの青年はクエストを受注したプレイヤーを記憶し、クリア回数と共に少しずつ報酬が豪華にしてくれるのだ。中心街から離れているものの、内容も簡単なので手軽にこなせる上に初心者でもそれなりのお小遣いが貰えるし、人気クエストでもある。


「アトレのお使いなんてどうだ? 簡単だし、道中の雑魚で連携の練習も出来るし」

「あー、お使い系の鉄板クエストね。良いんじゃない? アタシは構わないし」

「んじゃ決まりだな。早速向かうか」


残ったカフェラテを飲み干す。まだ温かいモノが喉を通る。


「マスター、お会計お願い」

「…少々お待ちを。……全部で820クルです。パンケーキ代を差し引き、320クルです」


320クル出し、マスターが丁寧に受け取るとレジに似た金庫の中へ入れた。



ラティカの会計も終わり、「アトレのお使い」を目指し、俺たちは東の農村…、パーレ村に足を運んだ。

アトレのお使いに向かったシキヤ達。

今回のクエスト内容はなんだろうか?

シキヤはそう思い、足を進めた。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ