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ギルティナ・オンライン  作者: 夜宵 天兎@玄武
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第1話 GOの世界

ほい、どうも玄武です。

お久しぶりです。

今回はソロプレイによる執筆です。

楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。

それでは、第1話をどうぞ。

『ギルティナ・オンラインへようこそ』


無機質な機械音声が俺、篠崎 桐也の脳内に響く。


『ログインしますか? Yes/No』

「Yes」

『ロード中です。しばらくお待ちください…』


視界の端に『Now Loading…』という表記が表示されている。

このロード中の時間は不思議だ。

ギルティナ・オンラインをプレイする前の時間はこの暗い場所で浮いているような感覚になる。

何故か不思議と楽になれる。


『ロードが完了しました。それでは、ギルティナ・オンラインをお楽しみください』


ふと、体に重力を感じる。

閉じていた目を開ける。瞼を貫くような強い光が目にしみた。

活気の溢れる街は中世の街並みのようだ。建物と建物の間から吹いてくる風は心地よく、NPCやプレイヤー達が行き交っている。

街の喧騒、雑音、路地裏の静けさ。

これがVR世界。


―――ここが、ギルティナ・オンラインの世界だ。



―――ギルティナ・オンライン。

通称『GO』。

高速インターネット回線《ライト》の普及により、今やネット世界は近しい存在となっていた。

筐体は頭に着用する小形ヘッドプラグ。

微細な脳波や五感をキャッチし、VR世界での活動を可能にした。そのため、プレイしている時は身体は眠ったように動かず、意識だけがVR世界にあるということになる。もちろん、感覚もVR世界に存在する。

基本無料のVRMMORPGで、リリースから約3年がたった今でもユーザー数は増えている。

豊富なアバターパーツと職業(ジョブ)

そして、アップデートやイベントもまだまだ続く。

そんな事もあり、ユーザー数は伸びているのだ。




少し街をぶらつく。

歩くごとに装備が揺れ、カシャカシャと音を立てる。

肌を撫でる風は少し冷たく、心地いい。

ちなみに俺の職業(ジョブ)はサムライだ。

最上級派生職業(ジョブ)で、装備は和装が多い。もちろん、中には洋装を装備しているサムライもいるが、数が少ない。

サムライは最上級クラスの職業(ジョブ)であり、職業(ジョブ)解放の難易度がかなり高い。

お陰でサムライのプレイヤーの数はなかなか増えない。


「あ、お兄ちゃ…違う、シキヤ殿ー!」

「カエデか」

「inしたんでござるね! 一緒にクエスト行くでござるー!」

「早速それか…。もうすぐご飯にするから、もう少ししたら落ちろよ」

「そうでござったか、了解でござる」


カエデ、楓色の長い髪のツインテールのアサシン。

昔、駆け出しの頃にあげた防具とアクセサリをまだ使っている。

アクセサリは装備する事で自身のステータスを強化してくれるアイテムだ。

まぁ…不肖、俺の妹である篠崎 楓乃(かの)だ。

ロールプレイを楽しんでいるようだが、今の会話のようにたまに忘れるようだ。フッ、まだまだだな。


「…さて、どうしようかな? とりあえず酒場にでも行くか」


酒場。プレイヤーが多く集まり、パーティーメンバーを探したり、NPCから情報を集めたりするための場所。

もうすぐ飯になるし、手頃なクエストの情報でも集めるかな。


ログインした場所から3分程歩けば酒場だ。

いつも通り、プレイヤー達が集まりワイワイとやっている。

空いているカウンター席を見つけて座る。

隣には白い長髪で、装備一式が白い女性プレイヤーが座っていた。コイツ、見覚えあるな…。

このVR世界でネカマは存在しない。最高かよ。アカウントを登録する際の利用規約に書いてあり、現実(リアル)での性別が自動的に選択されるそうだ。


「隣、良いか?」

「…えぇ、どうぞ」

「悪いな」

「…あなたは」

「ん?」

「《鬼刃》さん?」


白い女性プレイヤーはクスリと笑い、俺の二つ名を口に出した。


「あー…、そうだな」


前々からそうだが…二つ名で呼ばれるのは、恥ずかしい…。


「ふふ、やっぱり。その武器と防具、ホンモノね」

「そういうアンタも、な。《純白の姫君》」

「あら、知ってたの」

「やっぱりか。アンタ程のプレイヤー、知らない奴はほとんどいないだろ? 相当な有名人だし」

「そうかしら?」

「謙虚だな、ロゼさん」


ロゼ。

GOでもかなり名の知れたプレイヤーだ。

しなやかな動きで適確に敵を殲滅(せんめつ)し、戦場を駆ける《純白の姫君》。

クールでミステリアスな一面を持つ彼女はファンが多く、ギルド単位でのファンクラブが存在するという噂だ。

まぁ、このゲームのアバター、現実世界(リアル)の自分の身体をベースにしてるからスタイルの良いロゼは中々の美少女だろうきっと。


「ロゼでいいわ、シキヤ君」

「呼び捨てでいいぞ?」

「遠慮するわ」

「何でだよ!?」

「ふふ、それにしても久しぶりね、会えて嬉しいわ。あ、話は変わるのだけれど、これからクエストに行こうと思ってるの。一緒にどうかしら?」

「あー、悪い」

「あなたの目つきが?」

「そこはどうにもならないから触れるな」

「まるで死んだ魚のようだものね。生気を感じられないわ。死霊術師(ネクロマンサー)に蘇生を頼みましょうか?」

「コイツ…」


昔は良く一緒にクエストに良く行っていたが、勉強が忙しいとロゼがログインしなくなってからはクエストに行けていなかった。

行きたいのはやまやまだが、楓乃に料理を任せれば死人が出るだろう。主に俺。

要領がいい自慢の妹だが、料理だけが出来ないので俺が担当している。


「分かってるわよ。妹さんとご飯食べるんでしょう」

「……変わらねぇな、お姫様」

「随分な言いようね、お侍さん」

「って、ヤベ…。もうそろそろ飯作んなきゃ…」

「あら、それは寂しいわね」

「クエストの件、悪いな…。また誘ってくれ」

「えぇ、また今度ね」


ロゼは優雅に手を振る。

それに応え、ログアウトしようとすると、


「あぁ、そうだ。手頃なクエストの情報、教えてあげる」

「え、なんで?」

「久しぶりに話せたから…、ということにしておきましょう。南門の門番のNPCに話しかけると良いわ」

「そっか、ありがと!」

「それじゃぁ、ね」

「おう」


メニュー画面を開き、ログアウトを選択する。

するとホログラムが俺を包み、ギルティナ・オンラインの世界は暗転した。


『ログアウト処理中です。しばらくお待ちください…』


また無機質な声が響く。

急に静かになって違和感を感じるが、すぐに慣れた。


『ログアウトします。お疲れ様でした』


俺の感覚は現実世界(リアル)に帰ってきた。




「楓乃ー、皿出してくれー」

「りょーかーい」

「あ、あと箸もついでに」

「はーい。あ、そういえばお兄ちゃん、ロゼさんに会った?」

「あぁ、落ちる前にな」

「私がログインした時から酒場に居たみたいなんだよね。会えたみたいなら良かったけど」

「楓乃がログインする前からか…」


まぁ、細かいことは分からないけどな。

俺は昨日作り置きしておいたカレーを温めながら、読みかけだった小説を読んでいた。

ページを捲り、焦げないようにゆっくりとかき混ぜる。

食欲を刺激する香りが漂ってきた。

もうそろそろ温まってきた頃だろう。

IHの加熱を止め、皿に盛りつける。


「楓乃、冷蔵庫にサラダがあるから、ドレッシングと一緒に出してくれ」

「はーい」

「そういえばお前、テストっていつだっけ」

「ギクっ……」

「まさか…」

「いや! ちゃんとテスト勉強してるよ!?」

「どのくらい?」

「あ、えと………」


これは教科書パラパラ捲って見てるパターンだな…。お前、速読なんて出来たっけ?

ちゃんとやらないとお兄ちゃん怒っちゃうよ?


「はぁ、ちゃんとやれよ」

「はーい……」

「…それじゃぁ、冷めないうちに食うか」

「うん! いただきまーす」


俺も手を合わせてから、スプーンを持ち、カレーを口に運ぶ。

ピリッと辛みがくるが、やはりカレーは美味い。

まだ熱々だが、次の一口を身体が欲しがってしまう。

水を飲み、一旦口の中を休憩させる。

そして一口、もう一口…。

気づいたらカレーはなくなっていた。

スプーンから箸に持ち替え、サラダにターゲットを変更する。


夕食を食べ終えた後、洗い物をしていると電話がかかってきた。

多分、母さんだろう。


「はい、もしもし」

『あ、桐也? お母さんだけど』

「うん、どうかした?」

『少しだけ早く帰れそうなの。楓乃は?』

「多分、勉強してるかな? 夕飯食い終わったあと、勉強道具持って部屋に行ったから」

『そう、分かったわ。何か買ってくるものある?』

「あー…甘いもの適当に買ってきて」

『了解。それじゃ』

「はーい、気をつけて」


…にしても、楓乃はちゃんと勉強しているのだろうか……。


「…心配だ」


洗い物を済ませた後、楓乃の部屋に向かう。

ドアをノックする。


「楓乃ー、ちゃんとやってるかー」


…返事が返ってこない。

もう1度ノックするが、やはり返事はない。

少しだけ嫌な予感がした。

不安に思いドアを開ける。楓乃は思春期の女子だが、今はそれどころではない。

ドアを開けた俺の目に飛び込んで来たのは、ベッドに寝そべる妹の姿だ。


「楓乃…? 寝たのか? オーイ」


反応がない。まさか…。

楓乃の頭にはヘッドプラグがあった。


「この愚妹がぁ……!!」


俺はドアを荒々しく閉め、自分の部屋に入り、ヘッドプラグを着ける。

電源を入れ、GOへログインする。



楓乃、もといカエデにDM(ダイレクトメッセージ)を飛ばす。

『勉強せずにゲームとはいいご身分ですねお嬢さん。3分以内に酒場に来い』

という、脅迫じみてるDMだが。


「あの愚妹がぁ…。あの勉強道具はダミーだったか…!」


イライラしながら酒場のカウンター席で愚妹を待つ。

テストの点数ヤバかったんじゃねぇのかよ。この前、このままじゃ追試だって泣きついてたじゃねぇか!


「あー、えーと…シキヤ殿」

「…予想より早かったな、愚妹」

「は、はい…」

「何してた?」

「…クエストデス」

「今のお前のクエストは何だ?」

「勉強デス…」

「このまま追試で良いのか?」

「あ、いや、その………」

「勉☆強しろよ?」

「は、はひぃ………」


反省の色を見せるカエデ。

まぁ、今でコイツが嘘を言ったことはないし、信じても大丈夫だろう。

とりあえず、頭を撫でておこう。何か可愛いし。


「ちゃんと落ちて勉強しろよ?」

「…はいぃ………」


カエデが落ちたあと、ロゼに教えてもらったクエストに向かう。

久しぶりのソロプレイ、腕がなるな。

楓乃には悪いが、アイツも自業自得だな。

俺は目的地、南門に足を向けた。

今回、VRMMOは初挑戦です。

不定期更新となりますが、次回もお楽しみに!

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