第1章 信頼と駆け引き⑧
「・・・どういうこと?」
夏野の問いに俺は、ヘラリと笑う。
彼女たちにとって、俺の存在はイレギュラーだ。
「君たちがずっとやってきたことって、俺みたいな不安分子入れて大丈夫なことなの~?」
結束の力が大切なデモ活動において、不安なものは入れるべきではない。
・・・特に人間は、平気で裏切るのだから。
「・・・それぐらい私たちは追い詰められているってことだよ。今回軍は戦力を増強してデモ活動を取り押さえようとしてきた。この状況のなかで今の私たちの力をもって軍の力に対抗するのは・・・もう難しいだろう」
確かにこれからは今回のような力のある兵器を使ってくるだろう。
「もし私たちに、きみの手助けができるなら、私たちはそれを全力でサポートする」
・・・ちょっと待てよ。
俺に足りないものは何だっただろうか。
・・・”味方”と俺の力を生かせる”場所”。
そして、1人でいないこと。
そのことを考えると・・・。
「・・・君たちの最終目的って何なの~?」
俺の問いに2人はきっぱりと答えた。
「「軍を倒して、今の政治体制を変える」」
目的は明確、か。
しかも、俺の目的と彼女たちの方向性は同じだ。
・・・でも。
「・・・軍を倒してって、さっきあっけなくやられそうになっていて、簡単に言うね~」
「おい!!」
挑発の言葉を吐くと、夏野のほうが怒ったように声を荒げた。しかし、上代は俺の方を向いて、黙っているだけだ。
「勝算はあるの?生徒会長さん?」
「・・・あるわけないだろう。だからこうやって頼んでいる」
そのかたくなな声に、俺はにっこりと笑う。
「・・・別にいいよ」
「本当か!?」
「・・・だけど交換条件は飲んでもらうよ~」
俺のその言葉に、夏野は思い切り顔をしかめる。上代は、促すようにこちらを見ている。
「・・・俺の目的を探らないことと、戦うとき以外の行動を制限しないこと・・・この2つが守れない限り、俺は協力することができないよ」
「・・・」
「・・・別に俺がどんなやつか、探るのはいいけど・・・邪魔だけはしないちょ~だい」
夏野の方を向いていうと、彼女はハッとしたように自身の操作しているパソコンを閉じた。
・・・やっぱり、探っていたんだろう。
いくら探っても俺のことなんて出てこないはずだ。それもそのはず、俺は“名前がない”のだから。
「・・・大丈夫。俺は君たちの味方だし・・・君たちに協力するからね」
理由は言えないが、目的の方向性は一緒だ。
俺の足りないものを補うことができる。
「・・・承諾するよ。君の交換条件をのむ」
上代がそう言った。
主人公の名前はいつでるのかな???
次は1月6日の15時ごろです!!