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第1章 信頼と駆け引き④

「・・・--------------------」



少年は何かを言った。次の瞬間、



「撃て!」



砲弾を発射する音がいくつも響いて私は思わず目をつぶった。人間相手に撃つなんてむごいことをする。



そしてその事態に、状況に、気圧されるようにたたらを踏んで尻餅をついた。



自身の両目に、土煙に囲まれた前方のようすが映る。



あの距離で撃たれたら確実に死んでしまう。それを彼らは確信して撃ったのだろう。




・・・私は目をつむって歯を食いしばった。



「くそ・・・」




目の前で人をみすみす殺してしまったこと、高校の戦いとは無関係の見ず知らずの人間を巻き込んでしまったことが生徒会長として・・・私個人の人間として、歯がゆかった。





「お、おい、なんだ?」



頭を上げたのは、軍のほうから再びざわめきが生まれたからだった。



少年のいた方向は砲弾の影響で煙が靄と化していた。



その煙に何か影が見えた気がして私はハッとして目を凝らす。



そして、視界に”ありえないもの”がうつった。











少年、だった。









私はそのようすに唖然とし、懸命に思考を巡らせた。



先ほど兵士が撃った砲弾は殺傷能力抜群のものだ。当たって無事であることはない。そう考え、また少年の方角に目を凝らし・・・口が開くのを抑えられなかった。





「撃った弾ってこれだけなの?」



少年は手に砲弾を抱えていた。そこらに落ちていた残骸ではない。たった今、兵士が放った砲弾をいくつも持っていた。




ありえない、と脳が告げる。



軍の砲弾は、命中時に爆発することで被害をもたらす化学エネルギー弾だと聞いている。



まさか、命中していないのだろうか。命中する前にエネルギーを物理的に加えて命中する前に止めたのだろうか。








そんなの人間業ではない。



「何者だ貴様!?」



軍の司令官の声が響く。



常識外すぎることが起きているせいか、それとも脳が現実を捉えることを拒否しているせいか、その声に動揺はあまり生まれていない。



先ほどとは風の向きが違い、その声がはっきりと聞こえてきた。



少年はその問いに体を揺らした。



そのまま軍の方に向かって歩き出す。



大量の砲弾を抱えているその様子からようやく恐怖が出てきたのか、ざわめきだす軍に少年はその両手を振りかぶった。



「・・・俺のこと言ってるの~」



「そうだ貴様のことだ!」



威嚇するような司令官の物言いに、少年は黙った。





・・・次の瞬間だった。



何のモーションもなく少年は砲弾を放った。・・・いや、モーションがなかったわけではない。早すぎていったい何をしたのか誰にも分からなかったのだ。



先ほど少年に向けて撃たれた不発弾は、少年が野球の要領で手のひらで勢いをつけて軍の集団の中に投げ込んだのだ。



すさまじい爆発音が響く。煙が舞い上がり、風の流れによってこちらまで届く。先ほどの味方側のにおいと同じにおいであることに気がつく。



・・・誰かの、死のにおい。



煙が晴れるとたくさんの軍の連中の死体が転がっていた。その中には先ほど発砲許可をした司令官も転がっていた。



「うそ・・・だろ」



先ほどとは状況が真逆であった。戦局は明らかになっていた。



少年はその様子を見てから体の力を抜き、余った砲弾を地面にゆっくりと置くと手についた汚れを払った。



そして何もなかったように振り返る。





それからゆっくりと傍へと歩み寄ってくる。





・・・その時間がひどく長く感じた。



尻餅をついている私に手を差し出しながら、曖昧な笑みを浮かべてすまなさそうに呟いた。





「俺は、・・・化け物だ」





アクセスがじわじわのびてていてうれしいです・・・。


がんばって冬休み中は1日1ページ更新したいです。

ちなみに今日は、書きためておいたので、20時にもう1ページ更新します!

ちなみに主人公やっとしゃべっていますが、最初はキャラがブレブレしてます。その理由も後程分かりますので、長い目で見ていただけると助かります・・・。

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