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第1章 信頼と駆け引き②



冷静に状況を分析していると、突然軍の戦車につけてある砲弾の向きが重々しい音を上げながら、こちらを向いた。



戦車に乗っている軍の兵士は私を指さして何か叫んでいる。



戦車は大きな砲弾を乗せていた。大きさは十二分で、グランドの大半を巻き込む被害をもたらすだろう。どうやらそれを撃つつもりのようだ。



今までこんな武器は使用されてこなかったが、とうとう決着をつけようということなのだろうか。



・・・なるほど、とふらつきながらも立ち上がる。



この高校の指揮官、つまり生徒会長は私だ。



・・・どこからか、こちらの指揮官が“誰か”という情報を仕入れたのだろう。その迷いのない行動に舌を巻く。



名前ではなくその容貌を知っているということは、かなりこちらも研究されていたのだろう。



小規模な反乱において、指揮官は重要な、欠かせない存在だ。指揮官をつぶせばあとは楽だ。指揮官を潰そうという考えは確かに効果的だろう。



・・・それでも、軍の武器を一般市民に交渉の余地なしに、使おうとしていることに唇をかみしめた。



すでに、軍の側の目標は達成されているに等しい。軍の側にもその空気は伝わっているはずだ。



それでもなお反乱分子は排除されなければならないのか。この“力”という圧倒的な恐怖で、反乱しようする異分子をひねりつぶそうというやり方。




・・・これが軍のやり方か。



私は、ゆっくりと前に出た。



相手の砲弾の目標である自分が少しでも軍側に近ければ軍の方にも被害が出るだろう。



少しでも近くに行き、敵もろともー



「会長、何してるんですか!?」



近くで他に倒れていた生徒会書記の言葉に私は動きを止めた。



高校での指揮官は生徒会長である私だった。



これまでは、軍のやり方に対して反撃する方法を考え、緻密な計算をしていくことで負けることはなかったのに、今回は最悪の形で“敗北”してしまいそうだ。



ぎりぎりでやってきた戦いの結末が・・・これか。



『あんた、バカ!?何してんの、死ぬ気??』



耳に取り付けた無線からも、私の行動をとがめる高い声が響いてくる。



『ねえ聞いて!今か』



無線を耳から外して投げ捨てる。軽い音を立てて転がる。




・・・あきらめだった。



もう私にできることはない。唯一できることは・・・。



生徒会書記には軽い笑みで答える。



「早く校舎の方に行ってくれ・・・巻き込まれる」



近くの生徒は唇を噛みながらも、校舎の方へと向かった。



今まで一緒に行動していた書記も悔しそうな顔をしながら、怪我をした生徒に手を貸して校舎の方へ足を向けた。



無線の相手を、ほんのわずかに思いやる。



今回の戦いで情報戦を行ってくれた、参謀であり、相方である、生徒会副会長のことを。



私がこの行動を選んでしまったら、彼女は優しいから、たぶん憤慨しながら涙を流すだろう。




そして私について、戦ってくれた生徒たちを思いやる。



最初からこの高校に在籍しているものは少ない。軍のやり方に納得できない学生たちの集まりで、みんな優秀だったからこそ、これまで負けることはなかったのだ。



突然に戦力を増強させられ、驚いたには驚いたが強さの想定はできていたのだ。



私の状況判断が間違っていたのだろうか。今となってはよくわからない。



それに、計画を立てて実行したのは私なのだ。これは自分の責任だ。



この状況で何もできない自身が情けない。



・・・私にせめて“力”があれば良かった。



みんなを守れるような、絶大な力を扱えるような手段と方法を。



しかし、無力を嘆いている暇はない。



もう砲弾の装填はなされているし、発射までは秒読みに近いだろう。



少しでも前に出れば被害を減らすことができ、兵士の側にも被害をもたらすことができる。



揺れる視界に、ふらつきながらも懸命に前に進む私を、あざ笑う声が聞こえる。



・・・軍の連中が笑っているのだ。



確かに“勝ちがどちらか”なんて明白だ。



絶望的な状況、圧倒的な力の差に、皆が顔を俯かせ、



・・・指揮官である私の精神も屈しようとしたその時だった。














「あんた、死ぬ気なのか」










視界に、銀に赤メッシュの混じった髪がたなびいた。








次の投稿は、新年です。

今日は紅白見ながらぼんやりと過ごしたいと思います。

皆さんもゆっくり過ごしてくださいね~

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