感情
みなさんおはこんばんにちは。
本作を読んでいただきありがとうございます。
少しでも楽しんでいただければと思います!
何卒よろしくお願いします!
ーーねぇ健太郎。なんで私を選んでくれたの?
ーーなんでって…そりゃ加奈子だからじゃないのかな
ーーちゃんとした回答になってないわよ
ーーごめん。でもさ、はっきりとした理由がわからないんだ。加奈子だから、が今表現できる最高かな…
ーーやだ、嬉しいこと言ってくれるじゃない。
彼女の笑顔が二人並ぶ夕日道に映える。そうだ。俺は加奈子のこの笑顔も好きだった。
ーー送ってくれてありがとう。もう家そこだから。
ーーうん。わかった。じゃあね。
ーーええ、さようなら…
俺が立ち去ろうとした時、不意に背中に声がかかる。
ーー健太郎。本当に、ありがとうね。
ーああ、どういたしまして。
それでこの話は終わり。俺も彼女も別々の帰路につく。まさにこの現場で起こってていること以外のことも。
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1
高校2年生にもなってくると高校生活にも慣れてきたり、人間関係が深くなったりしてかなり砕けた雰囲気ではある。
そんな中、数少ない友人である啓太が口を開く。
「なあ健太郎ー。今年のうちのクラスさ、顔面偏差値高くねーか?」
「お前はそんなとこしか見てないのかよ…」
「花の高校生だぜ?やっぱ恋愛とかしてーよなー」
「そもそも女子とうまく話せない俺に春なんてやってこないですよ」
「何言ってんの健太郎。もう季節は春だよ?」
「〜〜つ。お前なぁ…」
「わかってるわかってる。じょーだんだってば♪」
「お前はたまにすごくアホだからよくわからんぞ?」
「またまたー…えっ、ホント?」
なんてバカな会話もやってのけるなら簡単じゃないかなんて思う人もいるだろう。しかし啓太とこんな風に会話するのでさえ3〜4ヶ月かかったのだから気長に付き合ってくれてた啓太には感謝しかない。
「しかもさ、今年うちのクラスにあの藤沢加奈子がいるらしいぞー」
「ふじさわ…かなこ?誰それ」
「ええっ、お前知らないの!?あっちゃー…」
「そーいうのはいいから言えっ」
の言葉とともに啓太の頭を軽くはたく。
「いいか健太郎。藤沢加奈子言うのはな、学園1、2を争うと言われてる美貌の持ち主だぞ!男なら全員知ってるぞ?たぶん」
「しかし俺は知らないんだな…」
「えっ、うそまじか?」
「おおマジだよっ」
また啓太のでこを小突く。
「まあ、俺には関係のないことだし」
「コミュ障爆発してるねー」
「うっせばか」
やっぱり俺の日常は男ばかりでまわっている。
2
ああまったく。ホント嫌になっちゃう。事あるごとに男子には呼び出され告られ、周りの女子からは妬みというかの嫌悪感丸出しの視線を向けられるし。
ー私はどちらかといえばモテる。そして自分がかわいい部類に入ることも知っている。だからこそ、それにあった振る舞い方というのも知っている。まあ、周りの女子からしたら男の視線を総なめしてるようなものだからいい気がしないのもうなずける。そんな私でも、やっぱり友達と呼べる人はいるわけで、朝1人教室に入ってきて起こるざわめきも日常の一端となりながらその友達の近くへ行く。
「おはよー。加奈子は今日もモテモテだねぇ」
「客観的に言ってるけどさー、これって当事者からするとあんま気持ちのいいものじゃないよ?」
「贅沢な悩みだよねぇ…」
と私の友達ーー柳梨香が言う。
「梨香だって案外モテるでしょ」
「またまたそんなお世辞を〜」
とおばさんがするように手を区ネットさせ私の肩を軽く叩く。
「ほら、くだらないこと言ってないで授業の準備とかするよ」
「はーい」
私の日常は男の視線と女の妬みで回っている。
3
とある女子トイレにて。
「つーかさー、あの、なんだっけ、男にモテまくりの子、」
「ああ、藤沢加奈子ね」
「そうそう、そのフジサワさん、最近男にモテるからって調子に乗ってない?」
「確かにそう思う」
と派手な少女2人を取り囲むように数人のグループができている。
所謂反藤沢加奈子といったところだろうか。
「ちょっとさー、アタシたちでちょっとシメてやんない?」
「あ、それいいー」
「賛成賛成ー」
なんて軽い調子で賛同者が集まる。
結局、仲良くなったり、一致団結するには共通の敵を作ることが1番手っ取り早いということである。
4
今日も男たちだけの日常を過ごした俺は、啓太の授業中のちょっかいでなぜか俺だけが放課後呼び出しなんてことになってしまった。
しかもわりかし長引く先生のありがたーい(棒)お説教は約11時間30分ほどかかった。
もちろんそんなにかかるなんて思ってもないわけだから、カバンは教室に置きっぱだ。ちなみに啓太は、
「ふーん!健太郎説教どんまいだねー、ま、俺は先に帰るよーっ!」
なんて勢いで先に帰りやがった。
それから俺は廊下を気だるげに歩き、何事もなくカバンを取り教室を後にする。さ、早く帰って課題でもしますか。
案外俺は真面目系人間なのである。
それから、何事もなく一週間ほどが過ぎ、また啓太のとばっちりで呼び出された俺は、同じように説教をくらい、カバンを取ろうと教室に戻る。くそっ、学習しろよ俺。なんて思うほどにこの間と展開が同じである。
ただ、少し違ったのは教室から話し声が聞こえたことだろうか。
「やっぱさー藤沢さんってさ、ーーーなんだって!」
「ええっ、うそ!ーーーなの!?」
「しかも……と○○○したりしたらしいよー!」
ドア越しにはあまりよくは聞こえない。でも、何故かニュアンス的に悪口に聞こえた。
ガラガラガラッと教室の戸を思い切り開く。見渡せばびくっとした女子が数人いる。
緊張で心臓をばくばくさせながら、
「ちょっと先生に説教されてさ、おそくなっちゃった…ハハ…」
くそうなんで笑ってるんだ俺。
「あ、そうなんだ…」
対する女子たちは生返事である。
これは言うべきか迷っていたが、教室から立ち去る際、
「こういうの、やめたほうがいいよ」
とおもいっきり冷ややかな声で言い放ち、俺は教室を後にした。
5
次の日、教室に来てみるといつもより騒がしい。つい一週間ほど前から始まった私への陰口が急に盛り上がりをみせたのだろうか、なんて楽観的に思っていたらそうでもないようだった。なぜなら否が応でも聞こえてくるその陰口の中に「高城健太郎」なんて名前が入っていたからだ。
そのタカギケンタロウとやらが何か言ったのだろうかと聞き耳を立ててみると、どうやらそいつは私への陰口を注意したとの内容を聞くことができた。
これには、さすがの私もイライラしてしまい、高城の机の前に行き、
「ちょっと。用事があるの。ついてきて」
「ええっ、俺になんかようですか…?」
とあまり口を開けず言うもんだから、聞き取りづらい。
「いいから。」
イライラもマックスだったので、とりあえず威圧的に、端的に伝え高城を呼び出すことに成功した。
教室を出る時など、女子からはきゃーだのと言った黄色い声や、チッと舌打ちする声まで聞こえた。対する男子は、なんだか絶望しているようだった。
「で、なんなの、要件って…」
こいつ、相当私をびびってるようだ。
「あんたがしたこと、覚えてるわよね」
「俺、あなたに何かしましたっけ…」
「私じゃなくて周りの女子によ」
「あっ、注意ならしましたよ。ホントだめですよねぇ人の陰口なんて」
ブチッ。
私の堪忍袋の尾が切れる音がしたーー気がした。
ダァン!と近くの壁を殴りつけながら
「まったく、無駄なことをしないでくれる?あんたがしたのは火に油を注ぐような行いなの。この際だから覚えておいて。『小さな親切大きなお世話』ってね!!」
「ふぁ、ふぁいっ」
恐れおののきガクガクしている高城を置いて私はその場の去ったのだった。
6
俺は震えが止まらなかった。
学校1の美女と呼ばれる人に呼び出され淡い期待をしながら要件を聞くと、「無駄なことすんなと叱られて終わりだったし、そんなことよりも、その時の藤沢の顔とか雰囲気が怖かったのだ。
俺はたっぷり2分は立ち上がることもできずその場でわなないていた。
それでもそのままいるわけにもいかず、重い腰を持ち上げ教室に帰る。するとまあ、クラスの男たちは「どうだった、どうだった!」と聞くもんだが、さすがに真実を全て言うわけにもいかず、「なんでもない」と言うしかなかった。
7
こんなことがあった1ヶ月後、藤沢さんは学校を休むようになった。さすがに俺にも罪悪感があったのか、見舞いに行くことにした。
担任に藤沢の住所を聞き、放課後向かう。
ピンポーンと家のベルを鳴らす。
「はい」
「あ、俺、加奈子さんと同じクラスの高城健太郎と言います。加奈子さんのお見舞いにきたんですが…」
「あら、あの子の…わかったわ、ちょっと待ってて」
すぐに藤沢の家のドアが開いた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
と言って家に上がることとなった。
藤沢の部屋まで案内してもらい、俺はノックする。
「…………」
「あの、藤沢さん、俺、高城なんだけど…」
「……入って」
「それじゃあ、失礼…」
と言いながらドアを開ける。俺の視界に入ったのは痩せている、というより窶れている藤沢の姿なのだった。
「藤沢っ!」
急いで駆け寄る。とにかく、線も、体も、薄くてすぐに壊れてしまいそうな印象を俺は受けた。
「なんで、どうしてこんなに痩せてるんだよっ」
「いや、ね…なんかさ、ストレスかなんかで食欲無くなっちゃってさ…」
ストレス。俺はこれに思い当たりがある。
「あいつら…」
「いいの高城。そこは気にしないで」
「でも…っ!」
「いいの」
藤沢の弱り切った声に俺は言うことを聞かざるを得なかった…と思う。
「藤沢…やっぱりこうなってしまったのは、俺にも責任が「あんたに責任なんてないわよ」
「えっ…」
「こうなってしまったのは私の心が弱かったから。それ以外にないわ」
「それでも…」
「いいの。私のことなんか気にしなくて。これからも友達と仲良く過ごし「違うんだよっ!」
ちょっとした知り合いのこんな弱っている姿を見てなのか、それとも俺の心の底にあった本心なのかーたぶん後者だろうがでてきて叫ぶ。
「俺は、お前のそのいつも凛としてるのが好きなんだよっ!」
8
唐突に告白された。
急に見舞いに来たかと思うと1人で盛り上がり、勝手に告白してきた。
確かに私はモテたし、こんなことはよくあったーでも、高城の告白はどの告白よりも響くものがあった。自分の心が弱っていたからか、それとももしかすれば高城のことがすきだったのかもしれなかったのか。
室内に妙な空気が流れる。高城自身は顔を真っ赤にし、私の返事を待っているように思えた。なら、誠意を込めて返事をしないとね。
「こんな窶れた私でいいなら、よろしくお願いします」
9
こうして俺たちは付き合うことになった。
かなりここら辺の部分はとんとん拍子な感じが否めないが、仕方ないとしてくれ。
俺と加奈子は普通にデートもしたし、楽しい日常を過ごしてはきた。
ところが、俺と加奈子が付き合い始めて1ヶ月が経つ頃ー一ヶ月記念日の日だった。
俺は加奈子にメールもしたし、これで大丈夫かと思っていた次の日の朝。
加奈子の母親から
「健太郎くん!!加奈子が…加奈子が…首を吊って自殺したの!!」
と最愛の人との強制的な別れを告げられたのだった。
2度と会うこともできない、本当の別れだ。
end
どうだったでしょうか。
今回、あえてここで終わらせた、という作者なりの意図があるのですが、中途半端、と言われてしまうと返す言葉もございません。
でも、ここで終わらすことに意味があると作者は思ってますのでご了承ください。
次回もまたちまちまと活動していく予定ですので、これも何かの縁、評価していただければと思います。次のに活かすためにも。
ではでは、ありがとうございました