ヒーローごっこ
勢いで書いた。後悔はしていない。
「ヒーローごっこをやろう」
唐突に言い出したのは、幼馴染の健太。いつも考えなしに話し始めては、周囲(主に俺)を巻き込むトラブルメーカーだ。
「はぁ?なに急に。そもそも高校二年にもなってやることじゃないだろ」
「まぁまぁいいから。俺ヒーローな。あ、それともお前ヒーローやりたい?」
「どっちでもいいよ。つーか、やるなんて一言も言ってないし」
さすがにこの歳でその遊びは勘弁したい。周りからの白い目に耐えられないチキンハートの持ち主なのだ。
「ほぉん。ならお前のコレはどうなってもいいんだな?」
「な、まさかお前それ・・・!」
その手に握られていたのは一つの鍵。それは俺の一番上の引き出しのじゃねぇか・・・!
「おい待て、お前なぜそれ持ってる」
「なんでカタコトなんだよ。ミスター・ポ○かお前は」
「うるさい。答えろ、はやく。じゃないと、俺 お前 許さない」
「こえーよ・・・。まぁ、本に挟むなんてことするからだ。おかげで見つけやすかったけどな」
「まぁまぁ待て待て。お前の望みはなんだ」
「無論、ヒーローごっこをすること」
「よかろう、その望み、叶えてやる。いや叶えさせてくださいお願いします」
「おし、じゃあお前悪役な。俺ヒーロー」
クソ、まさか見つけ出されるとは・・・。あいつダウジング機能搭載してんのか?
「待てい、魔界将軍オートよ!今度こそ貴様の好きにはさせない!」
「急、急すぎるよ。まだ何も考えてないのに・・・。フアハッハハハ!誰かと思えば貴様か。今日こそ貴様に参ったと言わせてやる!!」
「あ、俺はもう何度も負けて日本の領土八割を悪の組織に持ってかれてるんだ。毎回参ったって言わされてるって設定で」
「毎回言わされてんの!?しかも八割って、もうヒーロー側勝ち目ないじゃん」
「まぁまぁ。今日こそ俺は勝つ!うおおおおぉぉ、I love you!」
「急に横文字だし何の脈絡もなく愛の告白するし!何がしたいんだよテメーは!」
「これは技名だ」
「あってたまるか、そんな技!あぁもう、ぐ、ぐあああああああ、やられた・・・」
なんかもうグダグダだ・・・。ここは一つ、やられたってことにしてさっさと終わらせようと試みた。
「フハハハハ、正義は勝つ!I love you、I love you!」
「痛っ、いった!おいちょっと待て、最近のヒーローって死体蹴りも厭わないのか」
「悪は倒された!残る幹部はあと6人!日本解放の日は近い」
「え、終わらないの、これ」
「・・・・・・もう日本沈んだってことにしようか。ヒーローと悪者が巨大化したせいで」
「面倒くさくなってんじゃねーか。しかも理由酷いな・・・。とりあえずホラ、終わったなら鍵返せ」
「あぁ、これお前のじゃないよ?よく見ろよ、形まるで違うだろ。隠し場所は前から知ってたから簡単に騙せたわ」
「(絶句)」
「まぁ楽しかったわ。次はなにしよ・・・いって、蹴んなよ!」
「お前は死ねば言いと私は思う。I love you」
「それ俺のだし・・・あぐっ、悪かったって!」
そんなことをして俺たち二人は帰路につく。しかし一連の遊びを見ていた二人の女子によって、俺達の奇行が言いふらされるのを、この時はまだ知る由もなかった。