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3.友達を利用してでもフラグは入念に折ります。


森の傍で立っているとヘリオドールまで怒られるので、とりあえずはアタシら教会学校の子供が作った秘密基地に連れてきた。


「ルーって…お前森の妖精とでも仲良くなったの?」

「どこをどう見たらルーが妖精だ馬鹿ヘリオ」

「いてっ!」


ボケたことを抜かすヘリオドールにツッコミを入れて、改めてルーベライトに向き直る。


「ねぇ、どうしてルーがここに来ちゃったの?」

「だって…もっと、シエルと一緒にいたかったから…」

「確かに今日はいつもより早く帰ったけど…」

「なぁ、そのルーってあだ名なんだろ?いつの間に俺らの知らない友達なんて作ったんだよー」


…あ。そうだ。

ちょうどいいしコイツも作戦に参加させよう。


「ルー、この馬鹿そうなのはアタシの友達でヘリオドール。アタシはヘリオって呼んでるけど。で、ヘリオ、この子はルーベライトね」

「よろしくなっ…ってシエル、俺だけ扱い雑じゃね?」

「アンタよく雑なんて言葉知ってたね」

「お前がよく言うんじゃん」

「だってアンタら女の子の中でアタシの扱いだけ微妙に違くない?」

「…お前は、その…女だけど、仲間だからいいんだっ!」

「…嬉しいけど素直に喜べないのはアンタが言ってるからか」

「……」

ヘリオドールと軽口を叩き合ってるとルーベライトがアタシの服の裾を掴む。

多分、今になって不安になってきたのかな。


「どうしよう、送るにしても、もう暗いよね…森を抜けて…」

「お、お前、夜の森に行くつもりか?!」

「ああ、そうだけど。アタシのせいでルーが家の人に怒られるの嫌だしね」

「…そこは心配じゃねぇのかよ。お前がいなくなった時、みんな心配してたんだぞ」

「そうだけど…」


「……ボクの家族が、ボクを心配するわけないよ…心配してくれるのは、シエルだけだもん…」

「ふぅん…?」


分かってない。

いや、ヘリオドールの家族も優しい人たちだからこそ分からないのは当たり前か。


「でも、やっぱり帰らなくちゃ」

「……」

「そうだぞー。心配してくれないって、そんなわけねーじゃん?」

「けど…」

「恐いなら、ついていってあげるから」

「本当…?」

「うん。というわけで…ヘリオ、誤魔化しよろしく…」

「嫌だね」

「はぁ?!」

「お前が行くなら俺も行く!」

「…いや、アンタがついてきても…」

「とにかく行くからな!」

「……はいはい…もう勝手にして…」


こうなったヘリオドールは言うこと聞かないからな…。


夜の森は、昼間の暗さなんか目じゃないくらいで、月明かりがなければほとんど何も見えない。


「……ねぇ、手握ってるルーはともかくさ、ヘリオ、もうちょっと離れてくんない?背中掴まれると歩きにくいんだけど」

「森に入るのなんて初めてなんだよ…慣れてんだろシエルは…」

「…ほら、じゃあこれでいい?」

もう片方の手を差し出すことにした。

背中掴まれて歩みが遅くなるよりマシだ。


「うー…」

「手が嫌ならもう知らないよ?」

「つ、掴む!手掴むから!」


三人で手を繋いで、ルーベライトの家…クォーツ家の屋敷を目指す。

屋敷の庭に出た時、大人が近づいて来るのが見えた。

さすがに逃げられないと思って、覚悟を決めることにした。


「ルーベライト坊っちゃん、何をしていたのですか。この汚い子供は?」

「っ…」

「汚いって…モガッ」

「アンタらが喋ると物事がこじれるから黙ってて」


肉体年齢的には下だけど、精神年齢的には何とか渡り合える。


「勝手に立ち入ってしまい申し訳ありません。彼が森を抜けてきてしまったそうなので、送り届けに来ました」

「……」

「ほ、本当だよ…二人は何も悪くない…」


「…そうですか。しかし、それでは坊っちゃんは言いつけを破ったということですか」

「……っ」

「これは、お仕置きが…」


穏やかじゃない単語が告げられようとした時。


「だ、誰か!奥様が!!誰か来て!!」

「…っこんなときに…!」

悲鳴のような女性の声に、冷たい声の男は走っていった。


「……」

「ルー?」

「シエル…一緒にいてくれるんでしょ…?」

「…分かった」

痛いくらいに手を握られちゃ、振り払えないよね。


「お、おい?!」

「もう少しくらい付き合ってよ、ヘリオ」

「仕方ねぇなぁ、もう…」


ルーベライトに手を引かれて行くと、そこには彼の母親であろう人が横たえられていた。

よく見ると周りが尋常じゃないくらい濡れている。


…そうか、破水!


あの話を聞いてから、半年は経ってる。

意外と噂の遅いこの世界のことだ。

話を聞いた時にはもう、少しくらいはお腹が膨れてたんだろう。


だったら、もう十ヶ月は経ってそうだ。


「痛い…痛いぃい!!」

叫ぶ声。


「っ…」

「ど、どうなってんだよぉ…」


「お、奥様~…」

ルーベライトの母親についているのは、若いメイド。

見たところ十代前半。つまり、出産経験はないだろう。


「…パニクってないでお湯沸かして、タオルも用意!」

「え、え?!」

「早く!この人と子供が助かるのと、黙って見殺しにするの、どっちを選ぶの?!」

「い、今持ってきますぅ~!!」


涙目で走っていくメイドさん。


あまり痛みを取っても、ルーベライトに対する態度の例もある。

痛みがなかったせいで愛情が湧かなかったりしたら困るから…軽めのでいいか。


軽い鎮静魔法をかけて、痛みを和らげる。

それでも充分痛いだろうけど。



「それとっ、男だからって黙ってつっ立ってないでよ!ってか医者とか産婆とか呼んでくるとかないの?!」

「言われなくても…!」


あの冷たい声の男に怒鳴りつけるように言うと、走っていく。

言われないとしてなかっただろオイ。


夢中になって、出産を手伝う。

ここが森に隔離された場所というだけあって、呼ばれた産婆が到着した時にはもう、赤ん坊は生まれていた。


と、同時に、アタシは年齢に見合わない量の魔力を使いすぎてぶっ倒れていた。


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