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曖昧な夢

 視界はすでに眩んでいた。

 両目を焼くものはこうこうと輝く太陽でも焚きつけられたカメラのフラッシュでもなく、ただ私をその向こう側へと進ませないための光の形をした障害であるらしかった。途方もなく広がる空間で、曖昧、かつ、不確かな、手触りのない壁が邪魔をする。遠くに隠されたなにかから、私を頑なに拒絶する。

 実体を持たないはずの体は、その光を前に立ちすくんでいた。向こう側に隠されているのは人か、ものか。それは私がめぐり合いたいと思うものなのか。なにひとつとして分からないまま、漂うように虚ろな意識だけがそこにある。そのくせ自分の行く末だけは、やけにはっきりと理解していた。

 ぐらりと傾いだ平衡感覚は落下へのシグナルだ。驚くこともないままに落ちてゆく。――どこへ? 底のない層の下へ。地面のない穴の奥へ。そうして私は、いつから続くとも知れない、夢の先を見ることはかなわないままに目を覚ますのだ。


 ――寝ているのか?


 誰かの声が届いた。どことなく懐かしい気持ちでそれを聞いたけれど、別段その声に聞き覚えがあるというわけではなかった。ここでは時間の感覚が消え失せているのか、久しく他人の声そのものを聞いていないような気がしていたのだ。

 あえて返事をする必要はない。このまま落ち続けていけば、いずれ彼のもとへも辿り着くだろう。あとは目を閉じて、意識が醒めるときを待てばいい。

 揺らめく視界に浮かぶ影はひとつ。

 夢が、途切れた。


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