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其ノ壹 侍で御座る、の巻

どもハチと言います。

久しぶりに書くもので上手く書けないことばかりです。

それでも、頑張って行きたいと思いますのでどうか生暖かい目で見守ってやってください。


『ロストエデン』というオンラインゲームがある。VRMMOという仮想現実の世界でプレイするこのゲームは発売されてから数ヶ月の間はあまり利用者が多くなかったのだが、口コミで噂が広がり一年たった今では100万人を超える人達がこのゲームをしているといわれ、現段階では最高といわれているVRMMOである。

このゲームの最大の売りは、五感を完全にリンクさせたフルドライブモードで、ゲームの中だというのに匂いや味、触ったときの感触を再現しているということだろう。

ゲーム発売当初は、そのことに対し人体に何らかの影響があるといわれていたが、一年を過ぎた現在そのような事故は一軒も無いといわれている。

ただし、あまりにもゲームの中の世界がリアルなため、ゲームの中に引きこもる人が増えたのは間違いなかった。このゲームは一度ログアウトすると、1時間は再ログイン出来ない様になっている。だが10時間を越えるプレイをした後は、ペナルティとして6時間ゲームにINできなくなり、12時間を超えた場合は強制的にゲームが終了させられ、強制終了の後は丸一日INできないようになっている。




ロストエデンをプレイするには専用の筐体が必要で、今現在手に入れるためには予約して一年待ちの状態だ。俺も一応予約しているのだが、手に入るのは早くても半年後の予定だった。

そう、だったのだ。運よくだめもとで送った懸賞が当たり、筐体一式が手に入ることになったのだ。このゲームの筐体はチェアー型で、ゲームの中にINするとあらかじめ設定しておいた一番楽な体勢でゲームを遊ぶことができるようになっている。


と、そんなことを考えている間に筐体の基本設定が完了した。


「おし、やってみるか」


俺はなんとなく緊張しながら、筐体に座り頭がすっぽり入るようなバイザーを取付けゲームをスタートさせる。


『脳波リンク・・・OK 起動を確認します』


俺は何処からか聞こえてくる女性の声を最後に俺の意識は落ちてゲームの中へと入っていった。




『ロストエデン』




「ん…」


俺は軽い虚脱感を覚えながら目を覚ました。だが、目を覚まして最初に見た光景は何もない白い部屋だった。


『ようこそロストエデンの世界へ』


「!?」


周囲をきょろきょろと見回していた俺は不意に真後ろから声をかけられ、驚きながらそちらを振り返った。振り返った先には白い球体が浮かんでおり、声はこの球体から聞こえてきたもののようだ。


『汝の全てをわれに示せ』


其の声と同時に、自分の目の前になにやら数字が書かれたウィンドウが表示されたので内容を確認すると、多分だがステータスウィンドウのようだ。

どうやらここはキャラクターを決める場所のようで、STR・VIT・AGI・DEX・INTという項目の下に、残りポイント20と表示されている。

初期ステータスは

STR 20

VIT  5

AGI 20

DEX 15

INT  5


といった感じになっている。説明書によればこの数値はランダムで、やり直しても変わることはないのだという。俺としては、他の人の最初がどんなかんじなのかわからないので特に問題ない。それに、上げようと考えていた項目の数値が他よりも高いので問題ない。俺はとりあえず振り分けられる20ポイントを振り分けていくことにした。


その結果

STR 30

VIT  5

AGI 25

DEX 20

INT  5


という感じになった。攻撃は受けるものではなく避けるもの、紙装甲万歳だ。

というのも、俺が目指すのは一撃必殺、殺られる前に殺れ、だ。なので重要になるのはSTRとAGIが一番で、その次にDEXになる。仮に、攻撃を避けられてもこちらのAGIが高ければ相手の攻撃をかわすことができるので、AGIをあげるのはいいことだと考えている。


「決定と」


俺はもう一度自分のステータスを見直して間違いが無いことを確認し、決定ボタンを押した。


『汝、何を成すものか?』


球体がそう言うと、ウィンドウに『剣士・侍・忍者・盗賊』という文字が表示された。これはなれる職業が表示されているのだろう。


「侍、と」


そう、俺がなりたかったのは侍だ。攻略サイトによれば侍はSTRとDEXが上がりやすくINTが上がりにくいといわれている。さらに攻撃のモーションに癖がありなれない内はやりにくいそうだ。

だがまぁ、日本男児の自分にとって侍はやはり憧れるものである。


職業を決定すると、次に表示されたのはスキルだった。

スキルは、職業専用のものとどの職業でも選ぶことのできる汎用のものに分けられる。専用のものは強力なものが増えていくが使いにくく、汎用のものは使いやすい代わりに強力なものは無いらしい。

このゲームの中では使い込んでいくほどにレベルが上がるので、レベルが上がればある程度は解消されるらしいのだが。

そして、侍の俺に表示されている専用スキルは『一撃必殺』『抜刀術』『二段突き』『三段突き』で後は一通りの汎用スキルだ。

一度に装備できるスキルは八個となっているので、スキル構成はよく選んでする必要がある。ちなみに、抜刀術も三段突きもスキルを取らなくても使うことはできるのだが、スキルに組み込むことによって威力と発動速度が上がることになる。

俺が選んだスキルは『一撃必殺Lv1』『抜刀術Lv1』『三段突きLv1』『集中Lv1』『加速Lv1』『見切りLv1』『鑑定Lv1』『調合Lv1』

の八個だ。

集中は回避と命中に+補正、加速は移動速度に+補正、見切りは回避に+補正がつき、鑑定と調合は呼んで字の如しのスキルだ。


『汝の名を告げよ』


「そういえば名前決めてなかったな。えっと…」


ゲームをするにあたって名前を決めるのが一番悩んでしまう。あんまりへんな名前にするのもあれだし…、ありきたりな名前もあれだし…、まぁいつも使ってる名前が一番かな。


「猫熊、と」


どうやらこの名前は他に使われていないらしい。ちなみにこのゲームでは自分の姿を大きくいじることはできず、性別を変えることもできなくなっている。

ただ、ゲーム内の光景は外部に流すことが基本できないので、悪質な嫌がらせとかはいまだ起きていなかった。


『汝の進む道に幸多からんことを』


最後に球体がそう告げると世界がブラックアウトし、次に視界に映ったのは中世ヨーロッパを思わせ街並みだった。その独特の美しさに一瞬見入ってしまうが、周囲にたくさんの人が行き来しているのを見てわれに返った。


「とりあえずステータスの確認だな」


名前 猫熊

性別 男

職業 侍 LV1

HP 110

MP  10

STR 30

VIT  5

AGI 25

DEX 20

INT  5

LUK 60


ステータスの欄にHP、MP、LUKが追加されている。HPはVITに、MPはINTの数値によって変化する。LUKに関しては完全にランダムなのでゲームを始めてみなければ解らないのだ。

LUKは敵のドロップ率に影響を与えるらしいのだが、よくわかっていないらしい。


装備

右手 数打

左手  無

胴体 着流し

腕   無

足  草鞋


装備品は侍の基本装備を身に着けていた。自分の体を見ると浪人が着ているような着流しに変わっており、腰には刀を帯びていた。


「なんとなく侍というよりも浪人だな」


一通りステータスを確認した俺は、町の外に出てレベル上げを行うことにした。事前に集めていた情報を基にして、どこでレベルを上げるかを考える。

始まりの町からいける場所は4つあり、町の北側の平原、南側の山岳地帯、西側の湿地地帯、東側の森林地帯の四つだ。


「湿地地帯だろやっぱ」


思い出されるのは昔見た時代劇で、二人の侍が川の中を走り水しぶきを上げながら戦っているシーンだ。本来なら平原でレベル上げをするのがいいのだろうが、ここはまずロマンだろう。

幸いなことにレベル10までは死んでも何もペナルティがつくことはないので、レベルの低い内にいろいろと試したほうが良いとも考える。

と、自分自身に言い聞かせながら俺は西門を出て湿地地帯へと向かう。湿地地帯はエリア全体に大小さまざまな川が流れており、中には沼のような場所も存在しているらしい。

すばやい動きで敵の攻撃をかわそうと考えている俺にとっては最も相性の悪いエリアだといって間違いないだろう。だが、それがいい。

などとあほなことを頭の中で考えながら、俺は目的の場所に辿り着いた。


「確かここで出てくる敵は、リザードファイター、ブルースライム、コボルト、がメインでたまにアリゲーターが現れると。よし、はじめるか!」


俺は数打を抜刀し、少し離れたところにいるリザードファイターにゆっくりと近づいていき…。


「せいっ!」


袈裟斬りでもと一刀で両断する。確かな手ごたえを感じるとともにリザードファイターが断末魔の悲鳴を上げて光となって砕け散った。だが、その声に引き寄せられて周囲のリザードファイターが集まってくる。

俺は目の前に迫ってくるリザードファイターを一体目と同じように両断し、返す刀でもう一体を倒す。だが、刀を振り下ろした状態の俺に、三匹残っている内の二匹が切りかかってきた。


「秘剣ツバメ返し!」


そんなスキルはないが、これから俺がしようとしていることは正にこれだった。俺は刀を振り下ろしている状態からもう一歩相手のほうに踏み込みながら、逆袈裟に相手を斬りあげて倒す。袈裟からの逆袈裟、これぞツバメ返しだな。もう一体のすぐそばに迫っているリザードファイターにはスキルを発動させる。


「ふっ!」


スキルにアシストされ俺の体が力強く動いたかと思うと、リザードファイターの喉、心臓の辺り、鳩尾の三箇所に穴が開き、リザードファイターは消えていった。


俺は周囲を見回し敵がいないことを確認してから、残心をといた。時代劇好きが好じて剣道部に入り、近所の居合い道場に通った甲斐がたったというものだ。

俺は敵を倒したあとに残されたクリスタルを拾う。このゲームの中では敵はお金自体を落とさないが、倒した後にはこのクリスタルと、運がよければ素材が残されるのだ。

プレイヤーはそのクリスタルを使い武器を強化したり、お金を稼ぐ仕組みになっている。素材は生産職の人に渡せば新しい武具や防具を作ってもらうことができる。


「さぁ、いくか」


俺は、お金を稼ぐために次なる獲物めがけてエリアを走り回る。レベル10までは死んでもペナルティはつかず、手に入れたアイテムもなくなることはない。

これがレベル10を超えるとペナルティがつく。三時間の間経験値75パーセント減、死んだときにもっている消耗品のうち、ランダムで2つがなくなり、それまでの戦闘で手に入れたクリスタルも全てなくなってしまうというものだ。


その後俺は三時間ほど敵を狩り続けた後、町へと戻るのだった。それにしても自分の思うように体が動くというのは実に気持ちがいいものだ。

現実世界の俺はお世辞にも運動神経が良いとはいえなかったので、剣道にしろ居合いにしろイメージはあるのだが体が自分のイメージどおりには動かないのはつらいものだった。

唯一自信があるのは動体視力だけなのだが、これはまぁ運動神経とはいわないだろう。


街に戻った俺は手に入れたクリスタルと少量の素材を売り、今は生産職の人自分で造ったものを売っているフリーマーケットのようなところに来ている。

いろいろと見て周ると様々な物が売られていて見ているだけでもなかなかに楽しいものだ。


「ん? これは…」


数ある露天の中に一店だけあまり品揃えの良くない店があった。だが、置いてあるのは日本刀で一目見ただけだがなかなかに良さそうなものだった。


「い、いっらっしゃいませ!」


俺が立ち止まっているのに気がついたのか、店番をしていた女性は少し声を上擦らせながらも元気に挨拶をしてきた。


「すまないけど、これ見せてもらって良いかな?」


「ど、どじょ!」


女性は噛んでしまったことに顔を赤くしながらも、俺が武器を手に取ってみているのを、真剣な顔つきで見ていた。俺は、その日本刀を手に取りながら、武器のステータスを確認してみる。


分類 日本刀

銘  ベルサイユの赤いバラ

攻撃力 30

付与属性 無し

となっている。ちなみに初期装備の数打は


分類 日本刀

銘 数打

攻撃力 15

付与属性 無し

なので、ほぼ倍の性能ということになる。これで値段は2000Eなので、今の俺でも十分に買える金額である。あるのだが…、銘が、この銘だけは何とかならないのだろうか?


「一つ聞いても良いかな?」


「な、なんでしょうか!?」


「いや、この日本刀の銘についてなんだけど…、これは君が決めたの?」


「はい! とってもかわいらしい銘だと思いませんか!?」


同意を求められても困る…。俺には理解しがたいセンスだ。


「まぁ、個性的で良いんじゃないかな?」


「ありがとうございます!」


うんごめん、決して褒めたわけじゃないんだよ。そんなまぶしい笑顔で言われたら良心が痛んでしまう。そんなことよりも問題はこの刀だ。

欲しいのだが、名前が…。でも、それを差し引いても欲しいような…。


そして、悩むこと三十分…。


「ありがとうございます! これからもご贔屓に!」


買ってしまった…。どうやら彼女も最近このゲームを始めたらしく、生産職一筋でがんばるらしい。そして、今日はじめて納得できる刀が完成したので、緊張しながらあそこで売っていたという。

そして、俺がお客第一号のようでその喜びようはすごかった。その後俺は回復用のアイテムを購入してまた湿地地帯へと敵を倒しに行くことにした。

こうして、十時間ぎりぎりまで延々と敵を切り倒して俺のロストエデン一日目は幕を下ろした。


追記

ベルサイユの赤いバラはとても使いやすかったです。これで名前がまともなら…。

読んでいただきありがとうございます。

ではまた。

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