表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイツがある日、突然嫁を連れて帰ってきた  作者: 川平直
親友と酒を飲む▢

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/14

第7話

 その日を切っ掛けに、俊介とよく話すようになった。


 と言うより、厳密に言えば俊介の方が一方的に健一へ絡んでくることが増えた。


 何かと声を掛けてくる俊介を健一が素っ気ない態度で受け流す、そういった日々がそれからしばらく続く事になる。


 話の内容は宿題の話だとか、学校での噂話だとか、昨日観たテレビの話だとか、そんなどこにでも転がっているような平凡なもの。


 しかしどれだけ素っ気なく健一があしらっても、俊介はめげず毎日のよう声を掛けてきた。


 そうしていると、きがつけば健一ではなく春の方が俊介と仲良くなっていた。


 健一という接点を得て、一気に親睦が深まったと言うことらしい。


 こうなってくると一人で意地を張っているわけにもいかず、健一の方から俊介に関わりを持つ機会が徐々に増えていった。


 どうして俊介と仲良くなったのか。そう聞かれても正直に言って、成り行きでそうなった、としか言いようがない。


 別に夕日の中、殴り合ったりみたいな決定的で、分かりやすい出来事があった訳じゃない。


 鬱陶しいだとか面倒くさいだとかそんなことを何度、思ったかわからない。


 ただ、気が付いたら初めて会ったときに感じていた、異物感や嫌悪感は気が付けば薄れてなくなっていた。


 だから俊介と仲良くなったのは成り行きだ。


 もし何か理由があるとすれば、菅山健一は宮原俊介という人間のことを、初めから言うほど嫌いだった訳じゃなかったのだろう。多分そういうことなのだ。


 健一と親しくなっていくにつれて俊介は少しづつ他のクラスメイト達と関わりを持つようになっていった。


 健一や春の友人から徐々に輪を広げ、一年の二学期が始まる頃には東京のよそ者からすっかり学校の一員として、認められるようにまでなっていた。


 それを象徴するような、分かりやすい変化が一つある。


 面白くないことに、その辺りから俊介はあからさまに女子にモテだしたのだ。


 元々顔は悪くなかったし、都会的で大人っぽいところがステキ、という隠れファンは多かったらしい。俊介が周りと関わりを持つようになり、近寄りがたさが薄まった結果それが表面化してきた形だ。


 もちろん、そんな中でも俊介に対する陰口が完全になくなったわけじゃない。


 しかしそれは、異物に対する嫌悪と言うより、どちらかというと女子にモテ始めてきていた俊介に対する、非モテ男子の僻みと怨嗟の声と言った方が近い。


 東京もんだからって調子乗りやがって。


 あんな奴、調子いいこと言ってあっちこっちに女作ってるに決まってる。


 田舎の嫁不足舐めんな、チキショウ!


 とかそう言った具合である。


 そんなこんなで俊介が周りになじみ始めてきていた頃、ふと健一の中にある疑問が生まれた。


 俊介はどうしてああも俺にしつこく声を掛けてきたんだろうか?


 一ヶ月近くもろくに周りと喋らなかった奴が、急にしつこく話しかけてくるようになった。


 それも直前にお世辞にも好意的とはいいがたい事を言い放った健一に対してである。


 最初、俊介が周りに関わりを持とうとしないのは、単純に人付き合いが苦手なんだろうと思っていた、それこそ田舎者を見下しているんだろうとも。


 ただこうして、周囲の人間に認められつつある手腕を見た後となっては、その予想は外れていたと言わざる負えない。


 しかしそうするといったい何を思って俊介は健一をはじめとした周りの人間とかかわりを持とうと思ったのか。


 自分の事を嫌いだと言い放った相手に、声を掛けようだなんて思うのは、一体どういう心境から来るものだったのか。


 実は何度か俊介自身にそのことを聞いたことがある。


 しかし聞く度に、俊介は意味深にニヤリと笑って。


「ヒミツ」


 としか答えてはくれなかった。


「いいじゃない別に。男は秘密の一つや二つあった方がミステリアスでかっこいいんだよ」


 などとスカしたことを言うばかりで俊介はまともに答えるつもりが無いようだった。


 その後も折りを見て度々同じことを聞いてみたがその度にのらりくらりと躱され結局、現在に至るまで本当の理由は聞けないでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ