十八作
内山兄妹の裁定の数日後、直孝は二人も伴って築城中の現場を視察していた。
もともとは石田三成の佐和山城がこの周辺を治める拠点となっていた。実際は三成の父・正継が城代として治めていたらしい。その佐和山城も関ヶ原の合戦に向かう東軍や関ヶ原に駆けつけようとする西軍が入り交じって大きな戦いになったのだろうか見る陰もない。
佐和山から西に移動した彦根山に城を移しているとは聞いたいたが外堀・内堀が見事に作られ、内堀にかかった三ヶ所の橋からしか城に続く門にすら辿り着けない。
その様子を見ていると家老の内山政武が来て、
「直孝様、いかがですか?」
「高虎様が兄上を褒めておられた理由がわかるな。
見事なものだ。」
「この地が要所であるからこそですな。
近くにあった城の一部を移築する事で短期間にこれほどまでの城を築けたのでしょう。」
「なるほど、すごいな。
だが、移築された城が失くなってしまうと守りに不安がでないか?」
「いえ、逆に守る場所を限定できるため兵力の分散などを防げます。
従来であれば、領内にいくつも城があり戦の度に兵力を割り振ったり、城代をおいてもしもに備えていました。
しかし、下剋上の世の中では城代が力を得て反旗を翻したり、その城を守るために兵を向かわせたら本拠地が奇襲を受けたりなど防衛の面で問題が多発していました。
その点、この城は山の上にあり二重の堀があり、それぞれの堀を渡る手段も少ないため攻めにくく守りやすい。
実に見事ですな。」
城の天守に進みながら色んな場所を視察していく。
もともとあった寺にあった鐘をそのまま時報鐘として一刻ごとに鳴らす計画らしい。
天守に続く太鼓門等を抜けて山を登っていく。
そして天守に続く廊下橋の前で直孝は立ち止まった。
「直孝様、どうかされましたか?」
内山太左衛門が聞く。直孝は何かを考えてから
「築城の責任者を呼んでくれるか?」
「はい、すぐに呼んで参ります。」
家臣の一人が駆け去っていき、責任者を連れて戻ってきた。
「な、何か不備がございましたでしょうか?」
責任者は怯えながら聞いてきた。直孝は笑顔で
「立派な仕事をしているのに責める事などあろうはずがない。実は少し仕様の変更を頼みたい。」
「ありがとうございます。
どちらを変更しますか?」
「この廊下橋を…………」
「本当によろしいのですか?」
直孝の説明を聞いて責任者は目を丸くして聞き返した。
「無理そうか?」
「いえ、防衛面では強化されますので問題はありませんが通常の移動時に雨風が防げなくなりますが?」
「それはよい。変更を頼む。」
「承知いたしました。」
責任者が戻っていくと、太左衛門が
「あれはどういう意図があったのですか?」
「これから戦がなくなり平和な世が続く…そうなるかまた戦乱の世に戻っていくのかはわからないが、この橋がその試金石になれば良いなと思っただけだ。
大阪がまた戦を起こし、秀忠様や家康様がそれをおさめてもまだ戦が続くのか。戦が続くなら近江が戦場にならない事もないと思う。
まぁ、気まぐれだと思ってくれ。」
「そうですか……」
太左衛門が納得しきらないのをわかっていながらそれ以上の説明をせずに直孝は壁と天井がある廊下橋を眺めた




