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妖精公爵と冷遇夫婦生活かと思ったら溺愛体質だった!?  作者: 夕凪 瓊紗.com


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【7】海辺の街ラクリメ



――――潮風が心地よい、まさに海辺の街ね。


「すごい!町中に水路があって、広場には噴水もある!」

「ああ、だからここでの移動は馬車を宿場に置いて徒歩か馬、もしくはゴンドラとなる」

リュヌさまの示した方向には細長い船に乗って観光や移動を楽しむ姿が見える。


「俺はその、あっちは無理なんだが。乗りたいか?」

「いや、その、リュヌさまが苦手なら。私はリュヌさまと回りたいので」

「すまないな」

「謝らないでください!その……リュヌさまと一緒なのが好きなんですから」

「ツェリ……ありがとうな」

リュヌさまがふわりと微笑む。


「旦那さま、これから宿に向かいますが経路の確認を」

「分かった」

リュヌさまはお付きの騎士たちと暫し打ち合わせだ。

私は広場の噴水でも眺めようかしら。


「そこのお嬢さん」

「……はい?」

私だろうか。

そこには青い髪に瞳の美青年が立っている。彼は何の妖精なのだろう。人間……にしては何だか違和感がある。


「道を聞きたいんだが」

さらりと自然な手付きで私の手を取るが……。


「私も観光客なので!」

「まぁまぁいいから」

「へぁ!?」


「奥さま!」

急いでエリンが割り込むが……あれ?手が外れない!


「邪魔しないでくれるかい?バンシー」

「邪魔はそちらです!邪悪なケルピーめ!」

え……ケルピー!?


「処女好きの変態?」

人間の国ではその印象である。


「あ、ごめんなさい。これもきっと人間の国の脚色だわ!」

「いいえ奥さま、この男に関しては真実ですわ」

「ええ、この男って……知り合い!?」


「さぁ、おいで」

ぐいと手を引かれ噴水に導かれる。


「あ、ちょ……本当に私、観光客で……」

「分からない?これはナンパだよ」

ナンパぁっ!?


「奥さまは人妻です!何をっ」

「人妻……最高じゃないか」

やっぱりこの男、頭おかしいんじゃないかしら。


「いいからおいで」

男が噴水の中に脚を踏み入れればその姿が馬の下半身のように揺らぐ。そう言えばケルピーって……馬!


「おい、ツェリに何をしている!」

「リュヌさま!」

「悪いね、リュヌ。奥方はぼくに夢中さ!」

「何言ってんのよあなたは!怒るわよ!」

「その顔もいいね、ツェリちゃん」

名前を呼ばれゾクリとくる。この男、趣味と言うにはとんでもない思考だわ。


「さぁデュラハン。君はこちらに近付けない」

「く……っ」

頭上からは噴水の水しぶきが滴る。


「ここは私が!」

「よせ、エリン!お前も引きずり込まれる!」

「ま、バンシーの人妻もなかなかいいかも」

コイツ……エリンの夫のロバートに言ったら土の中に埋められるわよ。


「兄貴ー!ここは俺らにまっかせなぁっ!」

え……?何?しかしその瞬間、バシャンとケルピーが真っ赤に染まる。そして噴水まで真っ赤っか。


「ひぃーっ!かっらっ!肌がヒリヒリしてくる!」

その瞬間手が解放されリュヌさまの元に走れば優しく抱き止められる。


「良かった!」

「リュヌさま!でもちょっと水に濡れて……」

「かからなければ平気だ」

「それなら……。ところで」

先程の赤い激辛ソースはデュラハンよね?


「カッカッカーっ!してやったりー!」

バケツを掲げ首を上下させながら大笑いしているのは……明らかにデュラハンである。


「よっしゃぁっ!噴水を激辛ソースに染め上げる時が来たぁっ!」

「激辛ソースなら水でも恐くないもんねー」

「ウヒャーッヒャッヒャッ!」

ギャーッ!?デュラハン軍団がそこら中の噴水に激辛ソース投げ込んでるぅっ!


「ちょ……リュヌさま!止めなくていいのですか!?」

「んー?噴水の水が激辛ソースになるなら俺も本望かなー」

止める気、まるでゼロ!


「だけどこのままじゃ……っ」

「そうだ!やめろデュラハンども!この噴水は水路の水とも通じてるんだから水路まで激辛ソースに染まってしまう!」


『イヨッシャアァァァッ!デュラハン天国うううぅっ!』

ダメだ、もう止まらない。デュラハンたちは止まらない。


「止めて欲しければ、分かるよなぁ……カルム」

「調子に乗ってすみませんでした、リュヌ」

カルムと呼ばれたケルピーがリュヌさまに完全平伏していた。

「あと、水の浄化は全部お前がやれ」

「ええっ、ものっそい魔力使うんですけどぉっ!」

「だから?ここは母上の愛した街。責任持って浄化しろ」

「さっきまで自分もデュラハンどもの凶行に乗り気だったくせにぃっ!」

「おめーが悪い。はい、終わり」

「くそおおおぉっ!覚えてろおおぉっ!」

ええっと……その、一応何とかなったのだろうか。


「おーい、お前らー。その辺にしとけー」

「へい、アニキ」

「リュヌさまが言うなら、仕方ないなぁ」

「ま、これに懲りたらデュラハンをナメるんじゃねぇぞ」

ふぅ……どうやら何とかなったみたいね。


「それにしても……どういう知り合いなの?」

「ああ、デュラハンたちはここで街歩きしてる時に出会ってな。街のことを色々と教えてもらったんだ」

「そうなのね」

そして随分と慕われている様子である。


「じゃぁカルムさまとは……」

「さまなんて付けなくていいぞ」

眩しいまでの笑みである。


「アイツはこのラクリメの領主の息子だ」

「ラクリメの!?」

「そ。王族時代からここは訪れてて領主夫妻とも懇意にしている。俺とカルムは歳が近いってのもあって昔からよく遊んだんだ」

「じゃぁ友だちってこと?」

「そうなるな。ま、腐れ縁でもあるが」


「ハァハァ……ひどいじゃないか、リュヌ」

「自業自得だろ」

本当にその通り。ゼェゼェと息を切らしてきたカルムだが噴水の水はきれいさっぱり元に戻っている。腐っても領主の息子のようね。


「さぁーて、宿には先に荷物を運んでもらうとして。俺らは酒場にでも寄ってくか。俺の奢りな」

『オッシャアァァッ!!』

デュラハンたち大歓喜。


「その、ぼくは?」

カルムが自身を指差す。


「お前も来んの?」

「デュラハンたちに聞きたいことがあってね。むしろ本来の目的はそっち」

「じゃぁなんでツェリをナンパしたんだよ」

「そこにかわいい女の子がいたから」

「クズめ」

「それはぼくにとっては褒め言葉だ」

……マジかよ。


「ま、付いてくるなら勝手だが」

「ああ」

「金は自分で出せよ」

「ええ~~、ぼくだけ自腹かい?」

「ったりめぇだ。俺の妻をナンパしやがって」

「だってぇ~~人妻っていい響きじゃ~~ん?」

「母ちゃんに言い付けんぞ」

「ギクッ」


「その……カルムのお母さまって……」

「ああ。セイレーンで母上の遠縁だ」

そう言う意味でも懇意にしていたのかも。


「怒ると恐いから、コイツには一番効く」

「ひいぃっ」

どうやらその通りのようだ。


※※※


軽快な音楽に独特の賑わいは貴族生活をしていた時には触れたことのない不思議な雰囲気だ。


『カーンパーイ!』

私もデュラハンたちに混ざりグラスをもらう。とは言え私は炭酸だが。


「大衆料理と言うのかしら。美味しそうだわ」

大皿に盛られた幾つもの料理はどれも見たことがないものばかりだ。


「だろう?これなんかはここいらの海で取れた海鮮を使っている。パエリアと言うんだ」

「パエリア!美味しそう!」

早速リュヌさまが小皿に取り分けてくれる。周りのデュラハンたちも楽しそうだ。


「それにしてもリュヌアニキのお嫁ちゃんかぁ」

「デュラハンのお嫁になるなんて、お嫁ちゃんもマブイぜ」

「俺たち超歓迎するー!」


「あ……ありがとう」

パエリアも美味しいしこちらのデュラハンたちにも歓迎してもらえるなんて嬉しい限りね。


「あーそれとカルム、お前コイツらに話があるんじゃなかったのか?」

「ああそうだった。実は最近デュラハンと思われるものによる襲撃が相次いでる」


「えー、俺たち知らないけど」

「デュラハンって珍しいしここいらじゃもっと珍しい」

「全員顔見知りみたいなもんだしなぁ。もちょっと詳しくプリーズ」


「ああ。夜道を歩いていたら文字通り首なし騎士に遭遇し鞭で目を狙って攻撃されたらしい。そう言う通報が相次いでいる」


「何それ恐い」

「仲間にそんな野蛮なやつはいねーよ!」

「目潰し?それなら指でやった方が早いべ」

いやデュラハンにも恐れられてるの!?しかも最後の、そっちも充分恐いわよ。


「ふぅん。でも何か情報があればよろしくね」


「しっかたねぇなぁ」

「お前の母ちゃんの顔に免じて」

「次は母ちゃんにチクるぞ」


「ぐっほぁっ」

そして見事に言葉の鞭でカルムを制圧したのだった。



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