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妖精公爵と冷遇夫婦生活かと思ったら溺愛体質だった!?  作者: 夕凪 瓊紗.com


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【3】夫婦の試練



――――枕元に生首が、転がっている。

いや、デュラハンなのだから普通よね。これは普通。


「でもどっちを起こしたらいいのかしら?」

頭の方?それとも身体の方?


試しに身体に触れてみる。腕……なら。


「その……リュヌさま」

「何をしているんだ?」

すぐ横から声がして飛び上がるほどビックリする。


「きゃっ!?起きてたの!?」

「そりゃぁ身体に触れられればな。これでも騎士だ」

そ……それはその、そうなのか。


「それで何を……?」

「その、起こそうと思って。でも頭と身体どっちを起こすか迷ったのよ」

「どっちでもいいが……感覚は連動しているからな。口付けでもいいんだぞ」

「へぁっ!?」

く、く、口付けって。


「ふふっ、ツェリはかわいいな」

ニカリと笑いながらリュヌさまが首を胴体にくっ付ける。


「さて、朝食にしようか」

「え、ええ……っ!」

こうして朝食を共にするのも初めてのことだ。


「ツェリ」

「なぁに?」

「今夜の……夜会だが」

「う……うん」

夜会……その言葉にドキリとする。


「素顔で行こうと思う」

「……!」

「もちろんアメリアの誘いは断固断る。俺はツェリの側を離れない」

「う……うんっ」

その真剣な眼差しが何より嬉しい。


「だけどその、ちょっとした拍子に頭が落ちるかもしれない」

「大丈夫よ。その時は脇に抱えてもくっ付けても。あ……妖精族の社交界的にはどうなのかしら?」

「妖精族の社交界は最大限妖精の特色は配慮される。母上はセイレーンだから定期的に乾燥を防ぐためにお色直しをする」

そっか……セイレーンは人間の脚にもなれるけど本性は魚の尾なのだ。つまりは人魚ってことね。


「デュラハンの騎士も頭を脇に抱えることは普通だ」

「それなら安心ね」

「でもいいのか?エスコートする傍ら、首を脇に抱えても」

「郷に入っては郷に従えよ。構わないわ」

「そう言ってくれるとありがたい。もっと早く話しておけば良かったな」

「その……言いづらいことだってあるわよ。それに今は教えてくれてるじゃない!」

「ツェリ……ツェリは優しいな」

リュヌさまがにこりと微笑まれる。それはあなたも同じなのに。


※※※


午後は夜会の準備に向けてドレスアップだ。


「今回は旦那さまもあの武骨な鎧を脱がれるとのこと」

「旦那さまの装いに合わせて奥さまの装いも気合いを入れなくては」

ぱふぱふと化粧を施されながらエリンや他のメイドたちも気合いが入っていることが分かる。

そして本日はリュヌさまの瞳のようなアメジストのジュエリーを身に付ける。


「完璧ですわ!」

「旦那さまも惚れ惚れしてしまうやもしれませんわね」

「お美しいですわ!」

「そ……そうだと嬉しいわね」

う……。美女揃いの妖精族に言われるとちょっと引ける気持ちを抑える。


「私が保証いたしますわ」

「エリンが言うなら……」

バンシーって飛びっきりの美女が多いのよね。そんなバンシーのエリンにお墨付きをもらえたのなら。


――――喜んでもらえるかしら。


邸の前で待っていた馬車は相変わらず黒塗りである。


「本当は愛馬たちも連れていきたいのだが、さすがにそれで乗り付けるのは戦場だけだな」

「愛馬……?」

そう言えばまだ会ったことがないわね。


「でもどうして?」

「コシュタ・バワーを知っているか?デュラハンの愛馬首なし馬だ」

「ああ……タペストリーか何かで見たことがあるわ」

なるほど。デュラハンであることを隠している以上は愛馬たちも連れてこられなかったわけね。


「でもどうして戦場だけなの?」

人類同士は争っていないから、戦場とは魔物との戦闘である。


「デュラハンがコシュタ・バワーを連れて乗り込む戦場や御者を務める馬車は別名『死の馬車』だの『死の使者』だの呼ばれるからな。不吉なんだ」

「不吉……」

「そ。戦場では魔物を絶対討伐してやるっていう願掛けになるから味方からは歓迎される。でも社交界で倒す敵はいないからな」

「貴族同士の探りあいなんかはあるけどね」

そう言うことだったか。


「因みに今日の御者は俺です!馬は普通の馬ですけど!」

名乗り出た御者は……デュラハンだった。


「あの、ひょっとして私が会ったことがないだけでデュラハンって結構いるの?」

「ああ。今まではツェリを恐がらせないようにと遠ざけていたんだが……もういいかなと」

「そうね。私も邸のみんなのことが知れて嬉しいわ」

「ツェリ……!」


『嬉しいです!奥さまーっ!』

だだだっと現れた騎士の軍団たちは全員頭を脇に抱えていた。


「こらっ!タイミングを見計らったように出てくるな!持ち場に戻れ!」


「だって旦那さまが初めての素顔で……」

「しかもデュラハン御者でっ!」

「俺だって御者したいの我慢してたんだよぉっ!」

「デュラハンとしては奥さまがデュラハン推しで嬉しいっす」


「いや、推しだとはひと言も……ツェリ、すまんな、コイツらやかましくて」

「う、ううん!賑やかでいいじゃない!それに私……妖精族の中ではデュラハン推しよ」

「そ……そうなのかっ」

ぽっと顔を赤らめるリュヌさまがかわいらしい。


「うう……デュラハンと言えば不吉だとか不気味だとか言われるのに」

「奥さま、俺たち感動した!」

「誰かに虐められたら言ってくれ!」

「みんなで盥を持って赤い液体……」

『かけにいくから!!』

そう言えばデュラハンってそう言う言い伝えもあったわね。


「因みにその中身って……」

言い伝え通りなら『血』を連想させるのだが。


「トウガラシハバネロたっぷりドロドロソース!」

血よりもえげつないものじゃないかしら、それ。


「ほら、雑談はそこまでにして」


「旦那さま嬉しそう」

「溺愛爆発?」

「それ前からじゃん」

「このムッツリ照れ屋」

え……?そう言えば旅行にもくっついてきたわよね。もしかして……。


「い……いいから乗るぞ」

顔が一層赤かったのはその証拠だろうか?


※※※


ガタガタと揺れる馬車の中では首は膝の上の方が落ち着くらしい。


「やっぱり頭の方を見てしゃべった方がいいのよね」

嫌でも目が合う。いや、嫌ではないけれど。


「どちらでもいいが、その方が落ち着くかな」

「じゃぁそうするわね。だけど……ずっと気になっていたのだけど」

「どうした?」

「旅行の時、頭と胴体が別々に行動していたけど、胴体だけでも目は見えるってこと?」

「うーん、そうだな。視覚を使おうとすれば何故か見える。デュラハンミステリーだな」

「まさにそうね……!それにそれならコシュタ・バワーも……」

「あいつらも目がないのに普通に走れるからな」

妖精族の不思議である。


※※※


――――城のパーティーホールは既に盛り上りを見せている。


「うわぁっ、首なし騎士!」

「不吉だ!」

周りの妖精族までビビっているのだけど。


「何いってんの、馬はコシュタ・バワーじゃないよ」

「何だ、びっくりしたぁ」

首を脇に抱えた御者の言葉にホッと胸を撫で下ろす妖精族たち。やっぱり判断基準はそこなの?


そしてパーティーホールに私たちの入場が告げられれば、ドキドキしながらも足を踏み出す。大丈夫よ、今回はリュヌさまがずっと一緒だって言ってくれたんだから。


「ツェリ、大丈夫だ」

「う、うん」

私の緊張を感じ取ってかリュヌさまが優しく声をかけてくれた。


しかしその時だった。


「リュヌさまぁっ」

き……来た!

「やだっ、今日は素顔なのね!すてきだわぁ」

いつものように空気などお構いなしにアメリアがやって来てリュヌさまの腕を掴もうとする。


パシンッ。


「え……?」

手を弾かれたことでアメリアは放心状態のようである。


「ど、どうしてよ!リュヌさま、私と……っ」

「いい加減にしてくれ」

「え……っ」

「俺は結婚している身。妻のいる男に無理矢理言い寄るだなんて恥ずかしいと思わないのか!」

「そ……そんな……今までは」

「俺なりに事情があっただけだ。だがもう臆する必要はない」

「そんなの嘘よ!」

アメリアが強引にリュヌさまの腕を引っ張る。


「おい、やめ……」

その手を咄嗟に振り払う。

想定以上の衝撃にボロンと落ちた首をリュヌさまが慌てて掴む。


――――その時だった。


「イヤァァァァ――――ッ!!首が外れた!気持ち悪い今すぐ戻して!!」

……はい?デュラハンを真っ向から否定する言葉に思わず目が点になった。




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